目次

[1]自分の限界を超えられた瞬間
[2]814日ぶりの一軍登板


館山 昌平(東京ヤクルトスワローズ)

 前向きな言葉でこの一年を振り返る館山だが、一軍のマウンドから遠ざかったプロ野球選手としての空白の2年間。辛くないはずはない。
館山が少しだけ本音を語ってくれた。 

「正直しんどいですよ。だけど、やるしかない。手術をしてしまったら、ケガをする前よりも、一歩ずつ前に進まなきゃいけない。もし、自分一人なら、無理だったなと思います。これが、個人競技なら、2年連続で同じ手術をするのは嫌ですし、タイミングも去年と同じ時期に手術を行っているので、去年よりもちょっとペースが遅いなとか、早いなとか比較できてしまう分、個人競技だったら心が折れるときもあったと思います。それを理由にもう辞めたいと思うこともあるかもしれない。

 ただ、野球はチームプレーなので、一緒にトレーニングする選手もいますし、僕と同じようにリハビリに苦しんでいる選手もいる。もし、手術を何度も経験している年上の僕がそこで諦めてしまえば、同じように諦めてしまう選手も出てくるかもしれないですし、そこは意地でも戻ってやろうと思いましたね」

 館山は復帰に向けた日々のトレーニングの中で、自分のことだけでなく、周囲のチームメイトたちのこともしっかりと考えていたのだ。

「ほんの少しずつでも、日々よくなりたいという思いが僕を支えていました。まだリハビリをしている選手たちが、僕が復帰することによって、『よし!自分も頑張ってやろう!僕も館山さんに続くんだ』と思ってもらえれば、その選手たちの頑張りがもしかしたら2軍選手たちを後押しするかもしれない。リハビリ選手というのは試合にも出られない、いわば3軍みたいなものなので、その3軍の頑張りが2軍選手を押し上げて、2軍選手が1軍選手を押し上げていくという、つながりになっていけばいいなと思っていました」

 今シーズン、リーグ優勝を果たしたヤクルト。復帰後の館山の活躍は大きな注目を集めたが、実はこのリハビリ期間中も、チームにとって館山の存在はとても大きなものだったことがうかがえる。

814日ぶりの一軍登板

 その館山が、1年のリハビリ期間を経て、ついに一軍復帰を果たしたのは、2015年6月28日の巨人戦。実に814日ぶりの一軍での登板となった。

「それほど緊張感はなかったのですが、球場に入るときは、なんだか異様な雰囲気でした。ファンの方たちがたくさん出迎えてくださっていて、なんだか引退試合のような雰囲気でしたね」
このとき、5回途中4失点の内容で復帰登板を果たした。マウンドを降り、ベンチに戻って、ゲーム展開を見つめる館山。しばらくすると、館山の目から涙がこぼれ落ちた。

「あぁ、俺、野球をやってるんだ」

 長く苦しかったリハビリの日々を乗り越えて、ようやく、チームメイトと一緒に勝利を目指せる日がやってきた。
館山の涙は、これまで抱いてきたチームの主力投手としての募る思いを物語っていた。

(文=安田 未由


シーズンを終えた今、館山選手が感じていることや、オフシーズンに取り組んでいるトレーニングについてなど、このストーリーの続きは、12月15日(火)に公開します!

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