Column

2014.10.21 ドラフトを前に何を想うのか?

2014.10.22

「プロ野球ドラフト会議supported byリポビタンD」が開会されるグランドプリンスホテル新高輪国際館パミール。2014年10月23日(木)17時から約4時間足らずの間に行われる様々な動きは、同時に全国各地で吉報を待つ多くのドラフト候補選手にとって、自分の人生を決める「運命のひと時」でもある。

 もちろん想いは「ドラフトの目玉」と評価される、この投手も同じである。夏を終えた後は9月2日の上甲正典監督の死去、野球部の1年間対外試合停止など厳しく辛い日々を過ごした安樂智大済美3年)。
今回は10月11日(土)に済美球技場で行われた合同取材対応で発した言葉を余すことなく紹介していく。7月27日(日)以来、激動の78日間の間に彼が何を感じ、どのようにプロへの準備を整えているのかを知って頂ければ幸いだ。

ドラフト1位で選ばれることを願っています

ドラフトへの抱負を語る安樂 智大投手(済美)

――いよいよ10月23日のドラフト会議が目前に迫ってきました。今の気持ちはいかがですか?

安樂 すごくワクワクする気持ちと同時に不安な気持ちもあります。やはり10月23日は特別な日になると思いますが、自分が夢見てきたプロ野球選手になれるように、今は願っているだけです。

――今、頭の中に描いている「10月23日」はどんな日ですか?

安樂 そうですね。近づくにつれての不安が大きいんですが、そこはプラス思考でいいように考えて。一巡目で名前を呼んで頂けることを想像するようにはしています。

――今、自分が立っている済美球技場には、いろいろな思い出があります。今年は恩師である上甲さん(正典・前野球部監督)を亡くして、想いもひとしおだと思います。ここで、改めて上甲監督と交わした「3つの約束」を教えて頂けますか?

安樂 はい。1つは「全国制覇」。2つ目は「160キロへの挑戦」。3つ目は「高卒ドラフト1位でプロへ行くこと」です。それは高校に入学して監督さんと交わした約束だったので、160キロは追い求めていますし、3つ目の約束であるドラフト1位を監督さんが一番願われていたので、監督さんの夢も背負って自分もドラフト1位で選ばれることを願っています。

――高校1年にこの約束を交わした時には。自分自身もこのような投手になるとは思っていなかったと思います。この3年間で(上甲)監督さんから教わったことや、思い出を教えて頂けますか?

安樂 技術面もたくさん教えて頂きましたし、精神面についてもおっしゃっていただきました。監督さんにはいつも「練習しろ、練習しろ」と言われていましたし、「人の2倍とは言わないが、人の1.5倍はやれ」ということも教えて頂きました。

 だから、人がダッシュ10本走るのであれば、自分は15本走るようにしましたし、そういって教えて頂いたことの積み重ねが今につながっていると思います。

――これからプロに進んだとしても、上甲監督の教えは頭の中に残していきますか?

安樂 そうですね。監督さんやコーチの皆さんに教えて頂いたことを、プロ野球という舞台に挑戦できるのであれば活かしていきたいです。これからはもっと厳しい世界が待っていると思いますが、初心を忘れず練習して上の世界に行きたいと思います。

プロ野球ドラフト会議2014特設サイト

 

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[page_break:「即戦力」の気持ちで「20年できる」選手に]

「即戦力」の気持ちで「20年できる」選手に

立ち投げながら本番さながらのピッチングを行う安樂 智大投手(済美)

――済美高校野球部で印象に残っていることは?

安樂 (2年春の)センバツ準優勝が一番の思い出です。甲子園に出たいために、この済美高校に入って、プロ野球選手になりたいために、上甲監督さんの下で野球を学ばせて頂いた。その想いがある中ではじめて甲子園のマウンドに立ったセンバツが一番印象に残っています。

――センバツ以降は我々マスコミも煽ってしまった部分はあったと思いますが・・・。157キロが2年の夏(愛媛大会準決勝川之江戦)に出ました。そこについてはどう感じていますか?

安樂 スピードボールは自分にとって一番の長所ですし、球速は追い求めていた部分ではあるので。怪我も重なって、最後はそういうわけにはいきませんでしたが、これから先も球速は追い求めていっていいことだと思っているので、そこは挑戦したい部分であります。

 ただ、自分の掲げた目標は「160キロ」ですけど、160キロを花巻東高時代に出された大谷翔平さん(北海道日本ハム)が、高校当時に目標にされていたのが「163キロ」と聞きました。3キロの差はそこで出たのではないかと今は思っています。

――今は「プロとして」どんな投手になりたいと思って練習しているのですか?

安樂 まずは怪我をしない身体づくりを一番に考えています。ただ今、プロ野球で活躍されている選手の皆さんの中でも、1年目から活躍されている方々がいっぱいいらっしゃるので。

 自分の肘の怪我を心配して、皆さんから「将来性」と言って頂いていますが、自分としては1年目から即戦力でバンバンやってやるつもりでいます。

 プロ野球は難しい世界ですが、1年でも長く、20年を目標に自分はやっていきたいと思います。

――高校野球を終え、自主トレーニングをする中での右ひじへの不安や、プロへ進む上での改善点はありますか?

安樂 もちろん、右肘のリハビリもしていますが、そこに加えて今はこれまでしていなかった上半身のトレーニングもしています。(吉見一弘)トレーナーと相談しながら、下半身の部分ももう一度見直しつつ、やっていますし、短距離走も今まで採り入れていなかったジャンプ系の要素や、坂道ダッシュも入れています。その結果、徐々に身体つきも変わってきました。

 自分としては「どんな投手になれるのか」という不安な気持ちと「いい投手になってほしい」という願いの間で、練習を続けています。

――見た目にも胸筋が盛り上がってきたのが判ります。(10月11日時点で)残り1週間あまり、何をしていきたいですか?

安樂 自分としてはやれることはやったので(注釈:10月9・10日にはスカウト陣の見守る中、立ち投げを披露している)、スカウトさんや球団の皆さんを信じて待つだけです。いつも通り変わらず練習して、10月23日を待ちたいと思います。

――プロ志望届を出した(9月22日)ということは、12球団すべての指名に応じるという風に理解してよろしいですか?

安樂 はい。12球団のどこが指名してくださっても、自分は行きたいと思います。プロという舞台に挑戦したいと思います。

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「夢」を叶えるための「ドラフト1位」のこだわり

「夢」のTシャツを背負ってキャッチボールを始める安樂 智大投手(済美)

――プロ志望届を出す前には大学、社会人、いろいろな選択肢があったと思いますが、その中でプロ志望届を出すに至った最大の要因はなんですか?

安樂 「プロ野球」という世界を見ることが引退してから増える中で、自分が挑戦したい気持ちが高まったからです。自分が凄いと思っている松坂大輔さん(MLBニューヨーク・メッツ)、田中将大さん(MLBニューヨーク・ヤンキース)(インタビュー)、ダルビッシュ有さん(MLBテキサス・レンジャーズ)、大谷翔平さんもすべて高卒からプロに入っていますし、自分もプロという難しい世界に少しでも早くチャレンジしたい思いが強くなって、(上甲)監督さんにお話をしました。

 監督さんからも「お前には高卒で行ってもらいたい」という話をして頂いたので、そこで最終的に決めました。

――監督さんと「ドラフト1位」の約束を交わされたそうですが、「1位」にこだわる理由は?

安樂 同じプロ野球選手になるうえでは「1位」も、「5位」も関係ないとは思いますが、監督さんに「ドラフト1位で行ってほしい」と言われた以上は、自分がその夢を叶えたいと思っています。

 そして「ドラフト1位」の夢は自分が小学校時代から抱いていたことなので、その夢を叶えるためにずっとやってきました。そこだけは曲げずにやっていきたいと思っています。

――「12球団OK」ということですが、子どものころに好きな球団はありましたか?

安樂 自分は好きな投手を見るタイプですね。幼い頃は松坂さん。そして田中さんやダルビッシュさんに憧れてやってきました。「チーム」を見るより「選手」を見てやってきたので、さほどファンという球団はありません。

――プロ野球に入ってからの最大の目標は?

安樂 先ほど言ったように20年という目標を掲げながら、MLBに挑戦したい気持ちも持ってはいます。まずはNPBで野球を学ばせて頂き、自分の力がどこまで通用するのか、自分の課題が何なのかをしっかり教えて頂ければ。皆さんは「新人王」と言われるかもしれませんが、自分にはそんな力はありませんし、ましてや新人王も獲れると思っていないので。まずは一年目から一軍に上がれるように、残り少ない時間を済美高校で身体を作っていきたいと思っています。

――もし、監督さんがいらっしゃったら、いまの自分にどんな声をかけてくれると思いますか?

安樂 これは夏の後にも言われたのですが「人事を尽くし天命を待て」と言われると思います。「お前がやってきたことを信じて、あとはみんなに任せて、ドラフトの指名を待つだけだ」と言われると思うので。自分がそう信じてやっていますし、今できることをドラフトのあるなし関係なく、しっかりしていきたいと思います。

――安樂投手の答えは?

安樂 「自分のできることはやってきたので、監督さんの言われる通り、自分もドラフトの指名を待ちます」と答えると思います。



この後すぐ、ペン記者を囲んでの取材対応が行われた。そこではさらに具体的な練習内容や、決意のほどを安樂は明かしている。後編ではそのあたりも記してきたい。

(文・寺下 友徳)

【連載コラム 安樂智大(済美)】

第6回 2014.08.07 突然、終わりを告げた「SAIBI」のユニフォーム姿


第5回 2014.07.08 盟友から力を得て、晴れ舞台での公式戦初対戦へ


第4回 2014.03.12 夏を見据えた充実の「冬トレーニング」


第3回 2014.1.4 安樂智大(2年)2014年始動!


第2回 2013.11.14 秋を終えて気付いたこと


第1回 2013.8.14 夏の聖地でみせた155キロ

プロ野球ドラフト会議2014特設サイト

 

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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