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夏直前!戦力レポート 東邦高等学校(愛知)

2013.07.09

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 愛知県には、私立4強といわれる学校がある。愛工大名電中京大中京享栄東邦の4校だ。全国的に名が知られた名門校で、古くからこの4校で甲子園をめぐって熱い戦いを見せてきた。現在では愛知私立4強交流大会が行われており、愛知私立4強という名称は愛知県内ではポピュラーなものになっている。今年は4強の中で東邦が大きく注目されている。

大阪桐蔭、智辯和歌山に大勝した強力打線に迫る

▲東邦・関根大気

 東邦が全国的に注目されるきっかけとなったのは6月9日の大阪桐蔭との練習試合だ。なんと東邦は、大阪桐蔭に13対0で勝利した。森 友哉を筆頭に能力の高い選手が揃い全国制覇を狙う大阪桐蔭相手にこのスコアは衝撃的なスコアであった。

 その東邦を見ようと[stadium]熱田神宮公園野球場[/stadium]で行われた智弁和歌山との招待試合では約2000人が集まった。試合は東邦が17対2で圧勝を決めた。智辯和歌山には、和歌山を代表する本格派左腕・吉川 雄大(3年)がいる。その吉川から2回裏に攻撃は打者18人。つまり打者二巡の猛攻で一挙13点を奪い、6回まで吉川からさらに2点を追加し、15得点を奪ったのだ。手を緩めることなく、打ちまくった。公式戦ならば5回コールドである。

 東邦の打線の凄さは1番~9番まで常に本塁打か長打が打てる脅威の破壊力を秘めていることである。大阪桐蔭智辯和歌山に大勝した強力打線を1番から9番まで、1人ずつ迫っていこう。

 1番の関根 大気は174センチ72キロと決して大きくないが、6月の対外試合。智辯和歌山との招待試合まで10本塁打を放っているパンチ力が魅力。守備範囲も実に広く、肩も強い。俊足強肩強打の外野手としてプロから注目される。
 

 2番に長打力のあるファーストの小川 勇磨(3年)が積極的中な打撃スタイルで、上位打線につなぎ、3番には1年から出場するアベレージヒッター・松井 聖(3年)は厳しい球を難なく捌き、安打を連発する。

▲東邦・三倉進

 そして4番には投打で高い才能を発揮する三倉 進(3年)。左スリークォーターから140キロ近い威力ある速球を投げ分け、打者としては懐が深い構えから鋭い打球を連発する。招待試合二試合では本塁打こそなかったが、打球の速さは圧巻。

 5番には、勝負強い打撃を見せて、レフトの守備でも、堅実で余計な進塁を与えない守備ができる高木 祥宏(3年)、6番には軽快なフットワークを見せるショートストップ・原田 一輝(3年)。

 7番には170センチの小柄ながら智辯和歌山戦で2本塁打を放ち、パワフルな打撃を見せるライトの牧 皐介(3年)。8番には、広角に打ち分け、サード守備は反応の良い守備を見せる宝島 史貴(3年)。9番には変化球の対応力が高く、智辯和歌山との2試合目で本塁打を放ち、軽快な守備を見せた181センチの大型セカンド・大平 夏輝(3年)と、1番から9番まで個性的な選手が揃うのが東邦の魅力だ。だが、東邦は打撃だけのチームではないのだ。

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[page_break:見逃せない東邦守備陣のレベルの高さ]

見逃せない東邦守備陣のレベルの高さ

 東邦が圧倒するのは打撃だけではない。試合前からのシートノックから思わず相手チームが怖気づくような動きを見せる。正捕手の松井から始まり、キビキビとボール回しを見せる。内野手の投げるボールが実に速いのだ。そしてシートノックが始まって、各内野手がキビキビとした動きでボールを捌く。そして、オールファーストが終わって、ゲッツーではイージーに始まって、やや難しい位置に転がすのだが、それも難なく併殺にしてしまう完成度の高さ。

 外野手については、シートノックに入る選手の守備範囲が実に広い。外野手の動きに無駄が一切ない。智辯和歌山戦で先発した三倉がレフトでシートノックに入っていた。通常、先発投手はノックに入らずにブルペンで投げることが多い。その三倉は、俊足で、打球の追い方も速い。打撃が良いので、外野手を兼ねてやっているのではなく、スイッチを切り替え、しっかりと“外野手”の動きができていた。最後の締めであるバックホームでは全員が捕手へダイレクト一本送球。緩やかな軌道ではなく、ライナー性の軌道で、キャッチャーミットに収まっていた。全員が強肩。内外野ともに完成度の高い守備を見せているのだ。

▲東邦・高松大輝

 智辯和歌山との招待試合は、セカンド・大平、ショート・原田の守備範囲の広さ、無駄のない動きが光り、2併殺を記録。併殺を記録した内容を見ると並の高校生では併殺を完成するには難しいコースだった。まず6回表、二死一、二塁から三遊間へ抜けそうなゴロをショートの原田が逆シングルでキャッチ。そこから体を反転させ、二塁へ送球。二塁・大平も捕ってから投げるまでの動作が実に素早い。無駄がないプレーで併殺を演出。

 さらに8回表にも一死二塁から一、二塁間へ転がる。これもセカンドに投げるには体を反転してのスローになる。大平は無駄のない動作でセカンドへ送球。原田もすぐに持ち替え、一塁へ送球し、再び併殺を演出。際どい当たりに対しては球際の強さが要求されるが、彼らは日頃から徹底的に鍛えて、自然とその動きが出来ているのだろう。

 攻守両面で全国レベルに到達している東邦。激戦の愛知大会に勝ち進むには投手陣の働きが鍵となる。

 

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[page_break:競争を勝ち抜いた投手が夏のキーマンとなる]

競争を勝ち抜いた投手が夏のキーマンとなる

▲東邦・松井聖

 攻守ともに凄みのある野球を見せている東邦だが、秋、春とものあと一歩のところで負けている。東海大会では準々決勝敗退。春季大会では、3回戦で豊川と対戦し、9対10で敗れた。智辯和歌山との招待試合でも2試合に8失点を喫し、2008年以来の夏へ大きく前進するには投手陣の活躍が鍵となる。

 智辯和歌山の2試合で投げた投手は合計6人。第1試合はエースの三倉 進(3年)、東海大会の登板経験もあり、実戦経験豊富な左アンダースローの高松 大輝(3年)が登板。2試合目は右の本格派・東 龍人(3年)、昨秋では東海大会で登板した石田 健人 マルク(3年)、右サイドハンドの中村 公軌(3年)、期待の2年生右腕の大井 友登だ。

 6月30日が大会前の最後の日曜日となった。ここでベンチ入り選手が決まり、夏の愛知大会で戦う投手が決まる。選ばれた投手が激戦区の愛知を勝ち抜くキーマンとなるだろう。そして試合を作れる投手が一人でも多いほうが良い。その理由は愛知大会の過密な日程にある。

東邦はノーシードからスタートで、7月7日が初戦スタート。初戦の豊橋商戦は8対1でコールド発信したが、決勝は7月30まで初戦含めても8試合を勝ち抜かないと甲子園に出場することが出来ない。実に長い1ヶ月となる。さらに3回戦予定の21日から決勝の30日まで6試合。10日間で6試合と心身ともにタフさが求められる。それだけに一人の投手ではなく、多くの投手が必要だ。

ライバルは愛知県内ではベスト8の愛工大名電中京大中京、ノーシードの享栄豊川、春優勝の春日丘、準優勝の栄徳、ベスト4の愛産大三河、名南工、ベスト8の愛知啓成とライバル校が多い。

ただ東邦はその激しい戦いでさえも勢いが付けば、乗り越えていけそうな攻守の総合力がある。劣勢になってもそれを跳ね返せるパワーがあるチームなのだ。野球部は90周年を迎え、記念の年となり、それだけに選手だけではなく、学校全体が何としてでも90周年となる今年に甲子園出場と意気込んでいる。

何が何でも勝つ執念を見せて2008年以来の夏の甲子園を目指す。

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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