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佼成学園はなぜ国士舘、日大三といった強豪たちを破って決勝戦まで勝ち上がれたのか

2020.08.07

 国士舘との死闘を制して決勝戦へと駒を進めた佼成学園。毎年、西東京の実力校の1つとして注目を浴び続けているが、今年は違う。初戦で昨夏の西東京王者・国学院久我山を下し、準々決勝では日大三、そして準決勝の国士舘と厳しい戦いを制しての決勝進出。

 ここまでの道のりには何があったのか。国士舘戦後の取材で話を聞いて紐解いていきたい。

大会を通じて成長を重ねてきた

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佼成学園2番手・前野唯斗

 「国士舘戦のような展開は我慢することが出来ないチームでしたが、国学院久我山戦から大会が始まって、1点差の試合を我慢して勝ったり、日大三で一番厳しい試合をやって我慢が出来るようになったと思います」

 新チームスタート時と今回の大会を通じての成長点を佼成学園の藤田直毅監督はこのように分析した。国学院久我山、日大三、そして国士舘を倒して破竹の勢いで決勝戦まで勝ち上がった佼成学園だが、大会を通じて多くの接戦を勝利に結びつけてきたことでチームそのものに粘り強さが出てきた。そこの成長が今大会の躍進の大きなポイントとなっていたのだ。

 また投手陣の台頭、そして日大三戦が佼成学園の躍進を支えていることを藤田監督は感じている。
 「自粛期間はオンラインでの日誌のやり取りなどをしていましたが、追い込むことは難しいと考えていました。しかし選手それぞれが自立してしっかり練習をしてくれていました。特に投手陣の台頭が大きいですね。国士舘戦のように前野唯斗を途中で挟むなんて前はできませんでした。それまでであれば、森志恩のあとはすぐに平澤燎でした。そこに前野が入ったおかげで投手陣は余裕をもって回せるようになりました」

 森、平澤の2本柱に前野が加わったことで、今大会は投手層に厚みが生まれ、試合の中でも守備からリズムを作り、余裕をもって戦える状態になった。主将である小柴滉樹も「森、平澤は体が大きくなっただけではなく、低めへの制球力に関する意識が高くなりました」と成長を感じ取りつつ、その投手陣を中心とした守備から流れを作り、攻撃でチャンスをモノにできていることが決勝進出に繋がっていると考えている。

 そして日大三との戦いもチームに良い影響を与えていた。
 「日大三との戦いの中で、大事な課題をもらったと思うんです。あの試合ではエースの児玉悠紀のスライダーを空振りすることが多かったのですし、彼以上に良い左投手はいないと思うんです。そういったところでの経験と日大三に勝てたことは選手たちも自信をことができました」

 大会を通じて得た反省、経験をチーム内で還元して成長に繋げたことが、決勝進出までの道を切り開いた。


ゆとりを持って戦えた国士舘戦

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佼成学園は頂点に立てるのか

 こうして迎えた国士舘戦、終盤の逆転劇で決勝へ駒を進めたが、佼成学園はどんな準備をしてきたのか。
 「日大三の児玉君の時と同じく、中西君のシンカー対策でかなり準備してきました。早稲田実との試合を見て、『これだけの打線でも全部追いかけたらダメなのか』と思いました。ですので、ホームベースの右半分、真ん中から外くらいに狙いを絞っていかないと9回で2、3点を取るのは難しいと思ったんです」

 そんな中で先発は別の投手が来たことで、気持ち的に余裕を持って打席に入れた。結果、初回の先制点に繋がった。国士舘の永田昌弘監督も佼成学園打線について「打撃では大振りをしませんし、変化球にも食らいついてくる。バッティングの良いチームでした」とコメントしている。

 その後も着実に点数を重ねて3対0までリードを広げたが、「中盤までリードで来たから気持ちの整理もできましたし、2、3点取られるのは想定内でしたので追いつかれても、『ここからやり直そう』と切り替えることが出来ました」と落ち着いて終盤勝負に入れた。

 こうしてゆとりをもって終盤に入った佼成学園は、8回に3番・佐藤凛の一本で勝利した。次の相手は東海大菅生となるが勝てば西東京王者となる。小柴主将は「ここまで来たら勝つだけです」と意気込みを語る。

 勢いそのままに佼成学園が頂点まで駆け上がるのか。東海大菅生との決勝戦は7日だ。

(取材=田中 裕毅)

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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