Column

濱野 雅慎投手 (JR九州) 「調子が悪い時のセルフコントロール」

2014.04.08

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 社会人野球を代表する右サイドハンド・濱野 雅慎投手。サイドハンドから投げる切れ味鋭いスライダーをコンビネーションに次々と強豪社会人を下し、2009年日本選手権優勝、2010年都市対抗準優勝を経験。今回は濱野投手から、調子が悪い時のセルフコントロール、テンポ、勝つ投手になるために身に付けなければならないものなどいろいろお話を伺いました。

コントロールすることから始まった

――入社した当時は、どんなことを目標に立てて練習に取り組んでいましたか?

濱野 雅慎投手(以下「濱野」) 1年目の時は、真っ直ぐとスライダーしかなかったので、まずはその2つを自分の投げたいところにコントロールすることを目標にしました。

――それが勝てる投手になるための第一歩だったのですね。

濱野 やっぱりしっかりとコントロールできないと捕手はリードがしにくいですし、最低限、ストライクが取れないと試合が作れないので、『自分が持っている球種をコントロールすること』が大事だと思っています。

――勝つ投手になるために、いろいろな身に付け方があると思いますが、例えば先輩投手から学んだことはありますか?

濱野 入社した時は入った米藤 太一さんという左の技巧派がいました。真っ直ぐが130キロ中盤ぐらいで、カーブ、スライダー、スクリューを持っていましたが、ボールの出し入れ、緩急がしっかりしていて、僕も真っ直ぐが速いほうではなかったので、米藤さんの投球術を参考にしていました。

――米藤さんからは何か教えてもらったのでしょうか?それとも見て学んだのでしょうか?

濱野 見て学ばせていただいたことが多いですね。たとえば、打者が打ってこないのを察知して、真ん中に投げてストライクをとっていたので、そういう投球を見ながら参考にしていました。

――自分が思い描いた投球が出来るようになったのは何年目ぐらいでしょうか?

濱野 やはり3年目(2009年)の日本選手権で優勝した時だと思います。まだその前は、厳しいコースを突こうと思っても、甘く入って打たれていました。日本選手権優勝の時はそれがなく、イメージ通りの投球が出来ました。

――なるほど。とはいえ、その前からスライダーを軸とした投球で、社会人の強打者を抑えているイメージが強かったですね。

濱野 スライダーしかなかった分、自信は持っていましたし、そのスライダーを生かす投球をしなければならないと思っていました。捕手の意図としたところに投げられないと、普通の投手になってしまうので、スライダーをしっかりとコントロールすることを意識しています。

――日本選手権でも、都市対抗でも準優勝。勝つために理想な投球が出来たと思いますが、当時、どういった試合の準備をしていたことを覚えていますか?

濱野 まず自分のボールをしっかりと投げることですね。相手どうこうというのは気にせずに、自分のフォームで、自分のボールを投げることを意識して、練習に取り組んでいます。

――事前に分析はするタイプでしょうか?

濱野 僕個人としてやっていなくて、チームとして分析をしています。大会前だと相手チームのビデオを何本か見るんですけど、その時、投手が何人か集まって、捕手と話し合ったり、その時にこうかなと話し合っています。

――分析は仲間でしたほうが良いのですね。

濱野 分析においては個人一人より、仲間と一緒にやることが大切だと思います。自分の考え、見方は周りと違います。色々な意見を聞いて、対策をするというのはとても大切なことだと思います。

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[page_break:調子が悪い時ほど冷静になれる。良い時ほど落とし穴がある]

調子が悪い時ほど冷静になれる。良い時ほど落とし穴がある

――濱野投手自身、敗戦から学んで、勝ちにつなげていった経験はありますでしょうか?

濱野 3年目の都市対抗の予選のHonda熊本戦(2009年6月23日)ですが、真っ直ぐも140キロそこそこ出ていて、その時は調子が良い分、力任せというか、勢いでいってしまって、甘いボールを2ランにされて負けてしまいました(2対3)。勢いよく投げるのも大切ですが、その試合でやっぱりコントロールが一番だと感じまして、それからは常に丁寧に投げるよう意識しますね。

――色々な投手から話を聞くと、調子が良いときほど落とし穴にはまるといいます。

JR九州 濱野 雅慎投手

濱野 逆に調子が悪いと認識すれば、結構冷静に投球ができるんです。でも調子が良いとどんどんいけるから、大胆にいってしまって、甘いところに投げて打たれることが多かったですね。

――逆に調子が悪いときは、慎重になるのでしょうか?

濱野 球威がない分、低め、低めに投げて、ここの場面ではストライクを投げずにボールにする、またフォームのタイミングを外したりしています。調子が悪いほどそれを自覚しているので、視野を広げて投げることが出来ていると思います。

――ありがとうございます。調子が悪いときに視野を広げるためにはどんなことを心掛けているのでしょうか?

濱野 調子の波は、普段の練習からあると思うんですよ。調子が悪い時ほどフォームがどうなっているとか、特に意識をしながらやっていくと、自分の修正点に気付いて、悪いなりに投げられるようになります。その作業を繰り返すことで、自分の中で、引き出しが増えてきます。
 これは高校時代まではできなくて、出来るようになったのは社会人から。いろいろな試合を投げさせてもらって、打者へ投げてみて、抑えるだけではなく、打たれたりしながら、調子が悪いなりに自分のチェックポイントを掴んでいきました。

――調子が悪いときほど結果云々ではなく、実際に投げてみて、相手がどう感じたか、自分がどう悪かったのかと感じることが大切なのですね。

濱野 そうですね。でも皆さん、悪いときほどどこが悪かったのかと考えると思うんです。でも、大切なのは調子が良い時ほど、どこが良いからボールがいくのかを考える方ことも大事だと思います。調子が良い時も意識をしながらプレーをしていくと、良いときのポイントを掴めるので、より好投が出来ると思います。自分もそういうことを感じながらプレーをしてきました。

――試合だけではなく、普段のブルペンの投球から心掛けていると思うのですが、どんなことを意識されていますか?

濱野 やはりコントロールですね。低めを意識すること。悪いボールを続けないこと。抜けるボールがいったら、次はそのボールを続けない。抜けたことはどこかフォームが悪いから抜けるのであって。次は修正して、自分のボールを投げています。

――次は精神面についてお話を伺いたいのですが、強打者と対戦したり、都市対抗予選や本戦でも厳しい場面で投げているときはどういう意識付けで、冷静に投球をしていますか?

濱野 いつも心掛けていることはとにかく攻める気持ちですね。攻める気持ちとなると、力勝負というイメージがあると思うんですけど、自分のフォームで、しっかりと腕を振って、自分の球を投げることが大切です。

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[page_break:リズム、ストライク先行、コントロールなど見えにくい部分を磨くことが大切]

リズム、ストライク先行、コントロールなど見えにくい部分を磨くことが大切

JR九州 濱野 雅慎投手

――良い投手を見ているとストライク先行することが多いのですが、そこは濱野投手も意識していますか?

濱野 ストライク先行は大事ですね。打者にとってリズムが良いと、考える時間がなくなり、簡単に打ってくれてアウトにすることがするので、リズムが良い投球をしようと考えています。

――良い投手ほどテンポが速くて、試合の進行時間が速いイメージがあります。テンポも大事になっていきますでしょうか?

濱野 僕も一球一球の投球間隔は短くするようにしています。すぐサインを見て、すぐ投げる。そういうテンポを常に心掛けています。
 守っている野手にとって一球ごとが長いと集中が切れやすいですよね。投げてボール、投げてまたボールだというよりも、短い感覚で、続けてストライクを取ってくれた方が野手の方も準備せざるを得ない雰囲気になって、しっかりと守れると思います。ボールばかりだと野手は疲れると思うんですよね。

――勝てる投手は速球、キレのある変化球を身に付けるだけではなく、テンポなど見えない部分を磨くことも大事なのですね。

濱野 速い球、キレのある変化球を身に付けるというのは表の部分です。分かりやすいと思うんですけど、コントロール、ボールの出し入れ、リズムなどは見えない部分ですよね。でもそれを身に付けることは勝てる投手になるためには重要だと思っています。

――ここまでお話を聞くと、勝てる投手になるための条件がいろいろあると思うんですけど、もし指導者になったときに優先順位をつけるとすれば、何が一番になりますか?

濱野 一番はコントロールですね。変化球でストライクが取れること。自分の思い通りに投げられるのはスライダーしかないんですけど、2、3種類あるならば、変化球で2ストライクを取れるようになってほしいですね。

――変化球でストライクが取れることは大きな強みになるのですね。

濱野 はじめから変化球を狙っている打者はそんなにいないので、ストライクが取れることは大事ですよね。社会人からドラフト候補に挙がる投手は、真っ直ぐは140キロ中盤を投げられて、変化球は2、3種類があって、ストライクが取れる投手だと思っています。

――変化球のコントロールを身に付けると、フォーム作りも大事になってくると思うんですが、やはりキャッチボールから意識されているのでしょうか?

濱野 投球は投げても100球ぐらいですから、それと同じくらいキャッチボール、ダウンのキャッチボールは、変なフォームで投げると変な癖ができてしまいますので、ダウンのキャッチボールからでもフォームを意識して投げることが大切です。とにかく軽くでもいいので、意識をします。

――遠投はどんなイメージをしながらやりますか?

濱野 フォーム固めという意味ではとても良いので、下半身をしっかりと使って投げるように意識をしています。

――変化球のコントロールの次に大事なことは何でしょうか?

濱野 僕の中では投手まわりの打球処理。つまり守備ですね。センター前を抜けそうな当たりをとれば、バント処理にしても、自分を助ける一つの技術だと思いますので。投手は9人目の野手と呼ばれるぐらいですから。打球処理、バント処理、カバーリング、ベースカバーも非常に大事だと思います。

――なるほど。また捕手とのコミュニケーションを取ることも大切にされていますか?

濱野 そうですね。とくに捕手と話すことは、お互いの考えを話すといった部分で、投手にとって「仕事」だと考えています。捕手の中野さんとはイニングが終わったときや、試合が終わったときに話をしていただいています。

――今後、濱野投手は社会人投手としてどんな活躍をしていきたいと考えていますか?

濱野 やっぱり都市対抗優勝の黒獅子旗をとったことがないので、それを目指していきたいですし、優勝が決まった瞬間、胴上げ投手としてマウンドに立ちたいなと思っています。
 また、応援してくださる方が、喜んでくれるとこちらも嬉しいんです。社会人に入ったときはプロに行きたいという気持ちはありました。でも今は応援してくれる方の喜ぶ顔が見たいという思いでやっています。

 濱野投手、勝てる投手になるための条件を一つずつ教えていただきましてありがとうございます。見えない部分にこだわっていくことが勝てる投手に近づいていくことなのですね。今後の活躍を期待しております!

(インタビュー・河嶋 宗一

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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