3時間30分の激闘!
2010年に春夏連覇を達成した興南の我喜屋優監督がよく言う言葉がある。
「勝負を決めるのは、意外と打ったとか、抑えたとかそういうことではない。小さなことなの」
その小さなことが“ここ一番”で出た。
1点をリードされた光星学院の8回表の攻撃。
一死から武田 聖貴(3年)が左中間へフライを打ち上げた。青森山田のセンター・成田 塁(2年)が落下点に入り、二死――と思った瞬間、ボールはグラブからポロリと落ちた。これを見た武田は三塁を狙う。返球を中継したショートの京田 陽太(3年)が三塁へ送球するが、これが悪送球となりボールはベンチ前に転々。この間に武田が一気にホームインして同点に追いついた。
エラーは成田と京田に記録される。
だが、見逃してはいけないのは、このミスをカバーできなかったかということだ。
成田の落球はどうすることもできないが、その後の京田の悪送球は、投手がしっかりと三塁ファウルグラウンドにバックアップに走っていれば、カバーすることができた。失点せず、一死三塁で止めることができたのだ。
先発の三木彰雅(3年)を早々とノックアウトした光星学院だったが、3回一死から救援した高田海(3年)にタイミングが合わず4回以降は1安打のみ。打てる気配がなかっただけに、青森山田にとっては悔やまれる失点だった。高田は言う。
「センターが落としたときは、(抑えて、味方のミスを)カバーしてやろうと思いました。(京田が三塁送球するのは)投げると思いませんでした。そこまで気が回らなかった。普段の練習からのカバーリング不足です」
実は、7回の青森山田の勝ち越し点もカバーリングのミスが絡んでいる。
無死二塁から送りバントを処理した城間 竜兵(3年)が三塁へ悪送球。この間に二塁走者の南成美(3年)がホームインしたものだ。この悪送球は、右投げの城間が開いて投げて抜けたもの。
ファウルグラウンドではなく、レフトの守備位置に近いフェアグラウンドにボールは転がった。レフトの関口隆祥(3年)が全力でカバーリングに走っていれば、二塁走者を三塁で止めることができた。
「早く追いついてたら(ホームを狙った走者を)刺せたと思います。城間を信用しすぎました」と関口この場面を悔やんだ。
背番号4と本来はセカンドの城間。フィールディングには定評があるだけに、「悪送球はないだろう」という思い込みがあった。その分だけ、カバーリングも遅れたのだ。100回カバーリングに走っても、一度も来ないかもしれない。だが、文字通り、“万が一”に備えるのがカバーリングなのだ。
「エラーしないだろう」
「あいつなら大丈夫」
守っている間は、そんな気持ちは捨てなければいけない。プロの選手でも必ずエラーはあるし、悪送球もするのだ。サボったときに限って、野球の神様からの天罰のように悪送球が起きる。