2010年07月21日 青森市営球場

青森山田vs青森東

2010年夏の大会 第92回青森大会 準々決勝
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青森東 三塁手の位置(変更後)


全国レベルとの差

打球が、抜けていく。
それが、二度。
しかも、2本とも決していい当たりではなかった。

青森山田の3回の攻撃。
先頭打者は9番の投手・藤田公輔。青森東の三塁手・阿部康平は、いつものように守備位置についていた。
エースの沼田英樹は右のオーバーハンドながら、プレートの一塁側を踏み、角度をつけて内角にストレートを投げ込む。このため、並みの高校生は詰まる打者がほとんどだ。今までの経験から、阿部は、いい当たりというよりもボテボテの打球に備えるのが常になっていた。
ところが、同じ詰まったはずの打球でも、相手が青森山田になると追いつけない。内角ストレートを“打たせた”はずが、打球はあけていた三塁線を抜けていった。

この後、四球、犠打で一、三塁となり、打席には3番の湯元恵太。
沼田はカウント1ボールからもうひとつの得意球であるスライダーを投じた。もちろん、ひっかけさせての併殺が狙い。注文通りに湯元は手を出してくれたが、ひっかけるのではなく、強引に引っ張られた。芯でとらえた打球ではなかったが、ここでも打球は三塁線を抜けていった。あっという間の同点劇。あっさりと追いつかれ、「あわや」を期待したスタンドも一気にトーンダウンしてしまった。

三塁線を抜かれた理由は明確だ。
それは、これまで沼田がそういう打球を打たれたことがほとんどないということ。右打者相手には三塁線よりも三遊間や前という意識があったから、阿部は自然と三塁線をあけるようになっていた。

だがこれは、裏を返せば強打者と対戦した経験がほとんどないということ。
阿部に今まで対戦した中で強打と思ったチームを聞いたところ、返ってきた答えは秋田鷹巣岩手大野だった。阿部は1年生。いわゆる甲子園常連の強豪私学とは、練習試合を含めても対戦経験がない。
だから、引っ張られることも、三塁線を抜かれることもほとんどなかった。青森山田が相手とはいえ、そういう打球のイメージができないのは当然だったのだ。そういう意味でも、強豪と練習試合をやる意味は大きい。

全国レベルのバットスイングは? 全国レベルの守備位置は? 実際に目の当たりにすることによって自分たちの足りない部分、知らない部分を実感し、気づくことができる。この試合でも、阿部は試合途中から「自分の判断で」三塁線寄りに守備位置を変えた。指導者も、わからないのだ。
三塁線を抜かれれば長打になることはほぼ確実。だが、三遊間ならシングルにとどめられる。走者が二塁にいる場合でも、三塁線を抜かれれば1点は確実だが、三遊間なら走者はスタートが遅れ、三塁で止まる可能性が高くなる。長打は流れが変わりやすく、大量点にもつながりやすい。バックホームなどで勝負をかけるとき以外は、三塁線を締める、または三塁線寄りに一歩目を切りやすい構えをとることなどが必要だろう。

素材、カバーリング、走者のリード幅……。すべてにおいて青森山田青森東を上回っていた。全校応援のスタンドも、慣れている青森山田は外野に特設のブラスバンド席を設けての大声援。全校生徒は外野席に集めていた。一方の青森東はブラスバンドは内野席。生徒は内野席と外野席に分かれており、応援の声にずれがあった。こんなところからも、青森山田が6連覇している理由がうかがえる。

青森山田光星学院という甲子園常連校2校を抱える青森県。公立高校がこの2つに勝つためには、いろいろなことに気がつかなければいけない。青森県の公立校と対戦する延長で2校と戦うようでは、勝てるはずがないのだ。
強豪と練習試合をして、強豪の試合を観戦して、差を見つけてほしい。打った、投げたという能力や技術以外の部分にも、強豪との差は大いにある。
1996年の弘前実以来、13年連続私立の天下になっている青森県。ちなみに、春は94年以降17年間、秋も93年以降17年間私立勢の優勝が続いている。全国レベルを想定して戦うよう意識が変わらない限り、青森から公立校が甲子園に出る日は永遠に来ないかもしれない。

(文=田尻 賢誉




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