延長11回、東邦が4度目のリードを守って至学館下して優勝



苦しい試合を凌いで勝利の瞬間の東邦選手たち

<第75回愛知県高校野球選手権大会:東邦5-4至学館(延長11回)>◇2日◇決勝◇岡崎レッドダイヤモンドスタジアム

 前日の準決勝のカードは至学館中京大中京愛工大名電東邦。いずれも名古屋市内の強豪が順当に勝ち上がってきた。くしくも名古屋地区2次予選の1位校決勝トーナメント準決勝とまったく同じ顔合わせとなった。再戦となる試合はどんな戦いとなるのだろうかという興味もあった。

 結果としては至学館中京大中京に延長12回、2点を奪われながら3点を取り返してのサヨナラ勝ち。まさに、“ミラクル至学館“らしい戦いで勝ち上がってきた。一方、東邦愛工大名電と0対0のまま、延長突入かというところでサヨナラ勝ちを決めている。図らずも、名古屋市大会で負けたチームの方が、県大会では準決勝で勝利したという形になった。そんな両校の対戦となった決勝である。つまり、先の名古屋市大会の3位決定戦が県大会の決勝カードになったということである。

 東邦は、夏の愛知大会は決勝で愛工大名電に敗れて甲子園を逃した。そんなこともあって、何とかして県1位で東海大会進出を果たしてセンバツ切符をつかみたいというところであろう。また、至学館の、麻王 義之監督も、「今年のチームは2017年にセンバツに行った時のチームと、雰囲気がとても似ている」と、手ごたえを感じている。実際、この大会も前日の準決勝をはじめとして、ミラクルな勝ち方をしてきており、まさに“ミラクル至学館“の健在ぶりを十分に示してきている。

 どちらも連投となるが、両エースが先発した。

 至学館は初回に先頭の佐野 瑛哉外野手(2年)が四球を選ぶと、一塁けん制悪送球で一気に三塁まで進む。この貰った好機に2番竹村悠汰内野手(2年)が中犠飛を放って先制。

 追いかける東邦は4回、失策で出た石川 瑛貴内野手(2年)を一塁に置いて、南出 玲丘人捕手(2年)の二塁打で二、三塁として2死から、岡本 昇磨外野手(2年)の打球が内野の送球ミスとなり、東邦は2者がかえって逆転。もっとも、リードされても、僅差でついて行って食い下がっていくのがむしろ至学館のスタイルでもある。

 案の定5回に、至学館は振り逃げ、内野ゴロ、暴投で1死三塁として、8番・伊藤 幹太投手(2年)がたたきつけるような打撃でしぶとく一、二塁間を破って、これで同点とする。

 ただ、東邦も負けてはいない。6回に石川が中前打すると、しっかりとバントで進める。ここで至学館は継投に出て、伊藤が一塁に入り、右翼手の左腕山本 航外野手(2年)がマウンドへ。これも、至学館の今大会のスタイルの1つでもある。この代わり端を東邦の6番伊藤 秀樹外野手(2年)がたたいて右前打で二塁走者をかえして再び東邦がリードする。

 終盤に、何かを起こす至学館だが、7回の攻撃は3人で終わる。8回も簡単に2者が三振で2死。さすがの至学館も、ここまでかと思われたが、1番佐野が三塁へたたきつける安打で出ると、すかさず盗塁。そして、2番竹村はしっかり中前へはじき返す同点打。至学館らしい土壇場の粘りを8回2死走者なしから見せつけた。

 こうして同点で迎えた9回の攻防。もうひとヤマが訪れることになった。東邦は代打三浦 天和(1年)と2番・大島 善也内野手(1年)の安打と四球で1死満塁とする。しかし、ここは山本が踏ん張って、4-2-3の併殺で切り抜ける。その裏の至学館は、3人で攻撃を終え、試合は延長戦にもつれ込んでいった。至学館は前日に続く延長戦である。
 延長に入って10回、東邦は南出、途中出場の藤江 壮太外野手(1年)の連打で一、二塁とし、内野ゴロで一、三塁。ここで8番・上田 耕晟外野手(2年)が一、二塁間を破って東邦が3度目のリード。しかし、至学館の山本投手はその後を抑えて1点差で、その裏の攻撃を待つ。その10回裏、至学館は四球で出ると、代走・細川 大志(2年)。バントで送り、9番・磯村 新捕手(2年)の安打で一、三塁となる。そして、佐野がセーフティースクイズを決めて、3度目の同点とする。なおも、2死二塁で、竹村が左前打してサヨナラかと思われたが、ここは東邦外野手も本塁好送球で刺して、延長はさらに続くこととなった。

 こうして迎えた11回、東邦は1死から4番石川が右前打すると、代走に三家 拓翔(2年)を起用。この場面で南出が左中間を破る二塁打で、一塁走者の三家は一気に本塁を駆け抜けた。東邦としてはこの試合4度目のリードである。

 それでも、その裏の至学館はしぶとさを示す。1死から4番高橋 翼内野手(2年)と山田 悠貴(2年)のバント安打で一、二塁。こうなると、守る方としても、「何をしてくるかわからんぞ」というプレッシャーもかかる。そうした中で、至学館も、重盗エンドランを仕掛けてくる。選手交代でいろいろ替わっており、ここで勝負しかないという麻王監督の考えもあった。結局、その作戦は裏目となり、三振併殺で試合終了。東邦が、4度目のリードをキープして辛くも逃げきったという形になった。

 それでも、敗れた麻王監督は、満足そうな表情を浮かべていた。「今年のチームは、ボクの目指す野球に、非常に近い形になってきた。個々の力はなくても、技術力で劣るチームであったとしても、工夫していけば、何とかやれる。そういうことを示していかれるチームにはなってきている。そういう意味では、2017年にセンバツ甲子園に行ったチームにも非常に似ている。ウチのチームの子たちは、それこそ他の私学4強のセレクションでリストアップされたような子は誰もいません。それでもこういう試合ができるんです。まだまだ、選手たちは伸びていきますよ」と、手ごたえを感じつつ、大いなる希望を抱いている様子だった。

 春季県大会に続いて優勝を決めた東邦の山田祐輔監督は、「疲れましたね(苦笑)。選手たちは、プレッシャーもあったでしょうけれども、最後まで冷静にプレーしてくれました。そこが勝因だと思います。10回の守りなんかも、1点リードしていて厳しい場面でした。同点に追いつかれて、その後の外野の送球もぶれないでしっかりと投げていた。そういうところがよかったんだと思います」と、薄氷の勝利に安堵していた。

 そして、夏は決勝で愛工大名電に屈しているだけに、「何とか優勝して、1位で東海大会へ進みたかった。それができたのはよかった。選手たちは、大会を通じて確実に成長していっていると思う」と、東海大会を制してのセンバツ出場へしっかりと照準を定めている。

(取材=手束 仁

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