成章vs時習館
東三河の伝統校対決は、成章が時習館を振り切る
7回に二塁打を放った成章・山本君
<春季愛知県大会東三河地区2次トーナメント:成章6-3時習館>◇29日◇準決勝◇豊橋市営
東三河地区予選リーグで4つのブロックのリーグで1位になった4校の決勝トーナメント。東三河を代表する伝統校同士で非常に興味深い対戦となった。いずれも、かつての藩校を母体としている名門校でもあり、地元の人気校対決でもある。
初回、時習館は四球と3番片桐の右前打と暴投で1死二、三塁として、4番和田がスクイズでかえして先制した。しかし、成章もその裏、すぐに四球と盗塁と内野ゴロで1死三塁として3番山本の一、二塁間をしぶとく抜く安打で同点とした。
1対1で仕切り直しとなったような感じで迎えた2回。成章の背番号14をつけた先発三原は上手に打たせて3者凡退で終える。そしてその裏、成章は2死走者なしから三原と河合の連打で失策もあって成章がリードする。さらに1番の河合 邦宗監督が最も信頼している白井が左中間に二塁打して二塁走者をかえして3点目。勢いづいた成章は続く尾﨑と山本の安打でこの回4点が入った。
これで、試合の主導権は成章が握っていく形となった。
追いかけたい時習館だが、なかなか三原を攻略しきれない。1番木戸脇と片桐、森田、持田のクリーンアップは体幹もしっかりしているという印象だった。強い打球を打てる選手たちだが、それを三原は巧みにかわしているような投球で7回に木戸脇の安打と送球ミスで失った2点だけで、三原は完投で勝利を導いた。
元々は、内野手の控えだったという三原。河合監督は、「(投げられる投手が)おらんもんで、しょうがなく投手にした」という。実は、この東三河1次予選リーグの2戦目が初登板だった。それが、そこそこよかったので、一か八かも含めて起用していくことにしたという。コロナ禍ということもあって、2月はチームとしてはほとんど練習もできない状態だったが、そんな中ででも各自がやれることをやって来て、この大会に挑んできたという状況だった。
「とにかく、大会を通じて一番の収穫は、三原が試合で使える投手になったということ」と、河合監督も選手の成長に驚きながらも喜んでいる。成長の要素としては、思い切って腕を振れるようになり、そのことでカットボールの切れがよくなり、直球のような感じで球がきていながら、手元でちょっと動いていくので、それが打者のタイミングを外せているのではないかという分析だった。
成章は、4月からは10人強くらいの新入部員を迎えられそうだというが、渥美半島の3校はいずれも定員割れだという。そういう中で、部活動を維持していくことも、もう一つの難題でもある。まして、成章のように過去に甲子園出場も果たしている実績のある伝統校である。今の時代の流れの中で、それでも「強い野球部」を継承していかなくてはならない責任もあるようだ。
時習館も、今春は東三河のリーグ戦まで対外試合なしで挑むことになったという。だから、彦坂 祐志監督も、「リーグ戦を戦いながら経験を積んで行くということになったのだけれども、選手たちは、個々で何をどうしていくのがいいのかということも考えながら練習できない期間も過ごしてきていた。また、それができる子たちだとは思っていましたけれども、その対応はできた」というところで1次予選を戦ってきた。特に、今年の時習館は安田と持田のバッテリーとセンター木戸脇のセンターラインはしっかりしており、チーム力としてもかなり高い。それだけに、周囲の期待も高くなっている。
夏の選手権には第1回大会から参加し続けている伝統校でもあり、県内にも多くの指導者たちも輩出している。県東部の進学校としては絶大の人気を得ている学校でもある。文武両道校ということでも、県内の高校野球ファンからも熱い視線が送られている。今季のチームは、そんな周囲の期待に応えられるチーム力は十分にあるという感じはしているだけに、より期待は高い。県大会へ向けて、彦坂監督がどう修正して作ってくるのか楽しみでもある。
(記事:手束 仁)