時習館が序盤の失点を跳ね返して、中盤の集中打で逆転


 昨年の夏の選手権大会は新型コロナウイルスによって中止になってしまったが、今年は何とか大会を開催することが出来ている。いろんな制限はあるけれども、大会の出来る喜びはやはり大きい。そんな思いがグラウンドにはじけ散った。

 大会参加校も多い愛知大会は、東海4県では一番早く先週に幕を開けた。雨の心配もある中で先週末から、3週間は毎週末の土日を中心に大会が進んでいく。そして夏休みに突入すると、大会も3回戦まで進んでシード校も登場して佳境に入っていくことになる。

 東三河の公立勢としては伝統校の時習館と練習量では定評のある渥美農。注目の対決でもあったが、序盤は点の取り合いで始まった。

 初回、渥美農は先頭の河合君が左前打で出るとバントで進め、死球もあって二死一二塁という場面で5番岩瀬君が右中間を破る二塁打で二者を帰す。さらに、続く渥美君も中前打で二塁から岩瀬君を迎え入れて3点を先取。しかし、時習館も一死から片桐君が内野安打で出ると、鈴木 堅哉君が左越二塁打して二三塁。4番木戸脇君も一二塁間をしぶとく破って1点を返した。

 2回は、渥美農が1番河合君の左翼スタンドへ運ぶソロで突き放す。

 しかし、その裏にも時習館は二塁打の森田君をバントで進め、スクイズで点差を詰めた。結果としては、こうしたコツコツと返していった戦いが功を奏することになる。

 河合君に本塁打された以降、時習館の安田君は本来のリズムを取り戻してきた。130キロ前後の伸びのあるストレートが低めに集められていくようになってきた。4、5回は3人ずつで抑えていた。彦坂 祐志監督も、「練習試合もやっていて、相手は強く振ってくるということはわかっていたし、4点までは想定内だった」ということで、この失点にもベンチは落ち着いていた。

 そして5回、時習館は内野安打と四球、犠打失策で無死満塁として6番中根君は中前へ2点タイムリーを放って、ついに同点とした。こうなると試合の流れは時習館に傾いていく。

 「6回からは、別の試合が始まる意識で挑んだ」という時習館。6回に一気に勝負を決めていった。

 この回、時習館は一死から片岡君と鈴木 堅哉君の連続長打で逆転。さらに一死三塁という場面で期待の4番木戸脇君はカウント2対2から思い切りのいいスイングで左翼スタンドへ運んでいく2ラン。これで、ここまで健闘してきた渥美農の中神君を降ろした。

 時習館は、リリーフした背番号3の川合君に対してもさらに1点を追加した。

 こうして、4点リードとなって、すっかり立ち直った安田君は7~9回を1安打無失点で抑えてそのまま逃げ切っていった。2年生の多い時習館は、こうして逆転で勝利をものにして、それらが自信となって大会を通じてチームとしての力もさらに伸びていきそうだ。

 彦坂監督は、「今は、コロナで効果もなかなかみんなで歌うという機会がありません。だから、勝って校歌を流して歌えなくてもスタンドに響かせて聞いてほしいという思いもありました」と、今春に就任して、初めて母校を率いての夏で勝利できたことも素直に喜んでいた。

(文=手束 仁