甲子園出場監督が率いる豊橋西は4人の3年生の集大成としての夏の代替大会を迎える
ノックする豊橋西・林盛泰監督(*写真は昨春愛知大会豊川工戦より)
今春から豊橋市では初めての総合学科有する学校という形で新入生を迎えた豊橋西。地域密着と進学強化という二本の柱を謳っている。しかし、新型コロナの感染拡大防止の影響で、学校としてはなかなか新学期をまともに始められないままになっていた。
5月の最終週から学校は再開する形となった。部活動としては、当初は1時間程度というもので活動を再開した豊橋西。6月に入って、学校が通常体制になったことで、部活動も通常の状況に戻ってきた。
林泰盛監督が21世紀枠代表校として甲子園に導いた豊橋工から異動してきて3年目。一緒に過ごしてきた3年生たちは4人である。その中には、難病を克服しながら野球を継続してきた谷町源君という選手もいた。谷町君は、野球に取り組む姿勢もひたむきで、その努力していく姿勢は高く評価されていた。だから、新チームになってからは主将としてチームを引っ張る存在にもなった。
久しく低迷していた豊橋西だったが、一昨年夏には9年ぶりの初戦突破を果たして、昨夏も初戦突破することが出来た。こうして、チームとしても着実に、「やれば出来るんだ」という自信を持ってきている。
「今年の夏の大会は中止になってしまいましたが、3年生のための大会という形で、夏の代替大会を作ってくださいました。だから、3年生たちの思いを大切にしていきながら、向かっていきたい」
林監督は、そんな思いを強く語っていた。
昨秋からチームとしては、今の2年生と3年生11人でやってきた。絶対人数があまりいない少人数世帯で、工夫しながら練習を重ねてきた。そこへ、今春から総合学科になったということもあり、さらには6つのコースの中に健康スポーツコースも出来たということも追い風となって、新入生は17人の新入部員となった。一気に部員数は膨れ上がった。
とはいえ、この夏の代替大会は上級生中心で戦っていくことになるという。
「やはり、1年間、2年間と高校野球をやってきたということは違います。それは、野球の上手下手とかではないんです。高校野球をやってきたという事実が大きいし、それを大事にしていってあげたい」
これが、この夏に向けての林監督としての偽らざる思いでもある。
手作りのブルペン(写真提供=豊橋西野球部)
休校期間には、手作りでグラウンドを整備していっていた。そして、その間の1週間に一度の登校日には、選手たちをグラウンドに集まるように指示。そして、一人ずつ面と面を向かいあわせて表情を確認していった。
選手たちは、登校するたびにみるみる整備されていく自分たちのグラウンドを見ることでも、来るべき練習再開へのモチベーションも上がっていった。
雑草などは丁寧に抜き取って整備され、ブルペンを新設されていることを確認する。また、ベンチも長椅子で9脚作られて、机も用意された。簾もかけて簡易ダッグアウトのようになったことで、熱中症の予防にもなる。さらには、買えば十数万するというグラウンド整備用のマシンも作ったり、バッティングゲージもタイヤがつぶれかかっていたのを修正した。ほとんどが手作りでグラウンドは、再整備されていた。
こうした手作りでやっていくという感覚は、実は林監督は、前任の豊橋工時代に身に付けたものでもある。
「ないものは作るということは工業校でしたから、普通にやっていました。今回も、工業の先生方にも協力をお願いしながらやってきました」
平日は、陸上競技部やサッカー部などの他の部もグラウンドを利用しているので、どうしても活用面積は狭くなってしまう。それでも、フルに使えれば両翼90mとることが出来て、試合も可能という広さはある。新しく整備されたグラウンドで、相手校を招いて試合をしたいという思いも高まっているようだ。
少人数の中で頑張って野球を続けてきた3年生たちのことも思って、林監督は言う。
「甲子園を目指す大会はなくなってしまったけれども、3年間やってきたことは出し切らせてあげたい。やり切ったという形で(高校野球を)締めさせてあげたい。そうしていくことが今、私たち(指導者)の一番大事な仕事です」
(記事=手束仁)
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