試合レポート

千葉明徳vs横芝敬愛

2016.07.17

143キロ右腕・伊藤翔(横芝敬愛)、9回裏に力尽きる…

 間違いなく死闘だった。Bシードの千葉明徳横芝敬愛の一戦は手に汗握る一戦となった。これほどの死闘を呼び込んだのは横芝敬愛の先発・横芝敬愛伊藤翔(3年)の投球にあるといっても過言ではない。

 2年の時から130キロ後半を計測していたが、なにか詰めの甘さがあった伊藤。しかしこの試合は違った。1回裏、三者凡退に切り抜ける上々の立ち上がりを見せた伊藤。この回に本日最速143キロを計測と力のある投球を見せた。伊藤は右スリークォーターと低い腕の角度から投げる投手で、力みがなく、ピュッと鋭く腕が振れる投手。課題は打者から平行するのが早くなってしまうのが課題。そのため130キロ後半が出ていても合わせられやすい欠点はある。

 だが伊藤と古谷和己(3年)のバッテリーは千葉明徳相手に強気のピッチングだった。140キロ前後のストレートをインコースへビシバシと投げ込む。さらに115キロ前後のスライダー、縦の変化球の精度も非常に高い。また終盤に備えて、130キロ前半の速球を投げて、力をセーブするなど、メリハリが付いたピッチングができていた。

 好打者が揃う千葉明徳相手にしっかりと渡り合うピッチング。そこには今までなかった粘り強さ、我慢強さを感じさせた。要所では140キロ前後のストレートで空振りが奪える。打線も援護し、3回表に2番宮﨑汰空(3年)の適時打、そして6回表二は押し出し四球を2点を援護。この2点をしっかりと守っていた。そして守備陣もしっかりと応える。8回裏、いきなり6番小林龍也(3年)が安打で出塁。無死一、二塁となって、8番篠田健太(2年)の中前適時打で2対1の1点差に迫られ、二死二、三塁の場面で2番星野恭平(3年)は外角ストレートを捉え、痛烈な右前安打と思いきや、前進守備を敷いていたライトの田中涼太(3年)がドンピシャの送球。何とライトゴロでピンチを切り抜けたのだ。

 これ以上ないビッグプレーでピンチを切り抜けたかと思われたが、9回裏、千葉明徳の3番平井 樹(3年)に四球を許す。4番中台陸斗(3年)を三振に取ったが、一死二塁となって、5番菅井紀美晴(2年)は初球、あわやホームランと思わせる大ファールを打った後、その後、中前安打で一死一、三塁のチャンス。6番小林に140キロのストレートを投げ込んだが、右中間を破る長打となり、一塁走者も生還し、千葉明徳が逆転サヨナラ勝ちを収め、Bシードとしての意地を見せた試合となった。


 伊藤翔は責められないだろう。立ち上がりから終盤まで140キロ台を維持。ミットに突き刺さるような迫力あるストレートは見ごたえ十分で、コントロールも格段に良くなり、去年とは違い、投球に意図が見えた。今年の千葉県の高校生右腕で、コンスタントに140キロを出したのは、島孝明東海大市原望洋)と、そして伊藤の2人だけなのである。

 もっと胸を張っていい内容である。これからも野球を続けるという伊藤。どの舞台でもいい。この悔しさをバネに、次のステージに進んで、プロを狙える実力を身に付けてほしい。

 やはり先攻めのチームが2対0のスコアを守り抜くのは難しいと感じさせる試合。横芝敬愛千葉明徳の先発・鈴木翔を打ち崩すチャンスはあった。しかしなかなかとらえきれずに試合が進んだ。なかなか打ち崩せない。思うようばスイングができない、打撃ができない。その原因は何なのか。横芝敬愛の1、2年生たちはその答えをぜひ見つけてほしい。

 勝利した千葉明徳。サヨナラ打を放った小林はもともと軽快な守備がウリだったショート。コンパクトなスイングにだいぶ力強さが出てきた選手。上位打線に好打者が揃うが、こういう下位を打つ打者が試合を決める一打を打ったことはチームにとって大きな結果だっただろう。このサヨナラ劇から千葉明徳がどう変わっていくのか、注目をしていきたい。

(文=河嶋 宗一

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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