【愛知】3回戦 中京大中京 vs 愛知産大工

20人が出場した愛知産大工、総力戦で中京大中京をタイブレークで下す
<第76回愛知県高校野球選手権大会:愛知産大工5-4中京大中京>◇17日◇3回戦◇刈谷市営
春季大会の大敗から立て直して、夏には準優勝校となった中京大中京。そのメンバーが何人かは残っており、この秋も有力校の1つに挙げられている。初戦では日本福祉大付、2回戦では知多地区1位でシード校となっていた大府を下しての3回戦。愛知産大工の鈴木 将吾監督は中京大中京の高橋 源一郎監督の先輩にもあたり、先輩後輩対決でもある。
愛知産大工は夏のチームは好投手を擁して期待が高かったが、4回戦で享栄との注目のエース対決に敗れた。そして、挑んだこの秋だが、名古屋地区予選は順調に勝ち上がり県大会進出を決め、県大会では2回戦で桜丘に5回コールド勝ちと快勝しての3回戦。勢いには乗っている。
中京大中京は初回、1死から四球と3番注目の山田 頼旺外野手(2年)と杉浦 正悦帆捕手(2年)の連打であっさりと先制点を挙げる。これは、ある程度、点が入っていく展開になっていくのかなとも思われたが、そこから愛知産大工の先発・川崎 智哉投手(2年)が踏ん張った。そして、2回には2死二塁に四球の走者を置いて、8番・吉川 拓杜捕手(2年)が、中井 遥次郎投手(2年)の高めに入ってきた球を捉えて左越え二塁打でかえして同点とした。
ただ、試合は、ここからはお互いの守り合いという展開になり、次の1点がなかなか入らないぞという状況になってきた。中京大中京は、エース左腕の中井投手が自分のリズムで投げ込んでいく。一方の愛知産大工は、鈴木監督が「当初から、細かい継投で行くということは決めていた」というように、先発川崎投手は2回、2人目の左腕・織田 優太投手(1年)は3回。そして、左サイドの前田 大空投手(2年)が1回。さらに7回からは石川 萬才投手(1年)が2イニングを投げて、ここまで初回の失点のみで抑えていく。
中京大中京打線も、これだけ投手の目先が替わってくると、的の絞りようがないというか、どう攻略していっていいのか、ちょっと迷うところでもあったであろうか。そんな戸惑いもあったかのようにも感じられた。
こうして、序盤にお互いに1点ずつを奪ったのみで、3回以降はゼロ行進のままで、9回まで行ってしまった。中京大中京としては8回に、2死から神谷 倖士朗内野手(2年)が二塁打。さらに、途中出場となっていた北 陸翔外野手(2年)の初打席で、思い切りよくスイングした打球は左翼頭上を完全に破った長打かと思われたが、後ろ向きになって走った山田 朔也外野手(2年)が差し出したグラブに打球はスポッと収まった。そんな超ファインプレーも愛知産大工に流れをもたらしていったといってもいいであろうか。山田を迎える愛知産大工ベンチは、まるで優勝でも決まったかのように全員が拳を挙げての大歓喜だった。
愛知産大工は9回からは5人目の三浦 大輝投手(2年)がマウンドに立つ。そして9回を0に抑えて、試合はタイブレークへ突入していった。
10回、中京大中京は2番からという絶好の打順となって、バントできっちり進め1死二、三塁。山田は浅い中飛で2死となったが、杉浦は申告敬遠。満塁となって、神谷が中前打して2点。この2点を守り切りたいところだったが、その裏、5番からの愛知産大工は水野 迅内野手(2年)がたたきつけた高いバウンドの捕ゴロでバントと同じことになって二、三塁。そこでボークで愛知産大工は労せずして1点差となる。さらに、7番・竹内 球人内野手(2年)が左前適時打で三塁走者をかえして同点。タイブレークは、さらに続いていくこととなった。
11回の愛知産大工のマウンドは20人目の選手として丹下 翔真投手(2年)。もう、1人も交代できない状況の背水の陣での守りとなった。代打・西崎 柊哉内野手(2年)の二塁打で1点を奪われるが、その後は踏ん張り切った。
そしてその裏、1番からの好打順の愛知産大工だったが、先頭の田ノ上 海空外野手(2年)が前の守りから足が攣っており最大の危機。それでも、体調回復を待ってそのまま試合続行で、走れない中で確実に送りバントを決めて二、三塁とした。その直後の1球が、あろうことか暴投となって同点。ここで中京大中京ベンチは連続申告敬遠で満塁策。途中から4番に入っていた鈴木 涼太内野手(2年)との勝負になったが、投手返しの打球は大きく跳ねてサヨナラ打となった。
3時間超のすさまじい試合になってしまったが、愛知産大工の鈴木監督は、「気がついたら、登録選手を全部使ってしまっていましたね。まあ、勝つとしたらこういう戦い方しかないかなとは思っていましたけれども、まさか、こんな結果になるとは。捕手の吉川が、相手の打者をよく見ていいリードをしていた」と評価していた。そして、「とにかく8回の山田の好捕と11回の田ノ上のバントが大きかった」と、随所に選手たちが期待以上に応えた活躍をしたことを喜んでいた。
中京大中京の高橋監督は、「途中何度か、勝機はあったと思うんですが、そこで取り切れなかったということは、まだまだ本当の力はないということです。中井は結果として11回投げ切ったことになったけれども、こういう展開では、継投のタイミングも難しかった。いろいろ課題も見えた試合だったですけれども、やはり、勝たないといかんかった」と、残念がっていた。