【大阪】決勝 履正社 vs 大阪桐蔭
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福田幸之介投手(3年)
決勝戦敗退の大阪桐蔭に起きた3つの誤算
<第105回全国高校野球選手権大阪大会:履正社3-0大阪桐蔭>◇30日◇決勝◇大阪シティ信用金庫スタジアム
大阪桐蔭が決勝戦で敗れ、3年連続の夏の甲子園出場と、21年春から続く、6季連続の甲子園出場が絶たれた。
全国トップクラスの強豪である履正社に敗れることは覚悟していたとは思うが、誤算はいくつかあった。
1.絶対的なエース・前田 悠伍の不調
決勝戦まで大阪桐蔭の投手運用は完璧といっていいものだった。準決勝では前田抜きで接戦で勝利。満を持して前田が決勝先発となったが、直球が走らなかった。1回こそ145キロをマークしたものの、ほとんどが130キロ中盤〜後半だった。球速表示以上に魅力のある直球を投げるのが前田だが、この日は抜け気味な直球が多かった。その代わり、スライダー、チェンジアップ、カーブを駆使して打者に立ち向かっていった。
後半は、130キロ台ながらも執念で空振りを奪う投球を見せたが、平均球速137.79キロと、センバツから劇的に直球が伸びた感じではなかった。チェンジアップの精度や、不調ながら立て直す投球はさすが全国トップクラスの投手だと感じさせたが、厳しいマークをされながら勝つには、もっとパワフルで圧倒した内容を見せる必要があった。
しかし、それだけで3失点する内容であったかというとそうでもない。今年の大阪桐蔭の課題が露呈した試合でもあった。
2.守備に不安があった今年のチームが最後に露呈
今年の大阪桐蔭は例年と比べると守備陣に不安があった。これで常に7、8点取れるような強力打線ならば問題ないが、例年より打てないため、チーム設計としては打力は計算できないことから、対等な実力を持つチームと対戦すると、課題が浮き彫りとなってしまう。
この夏の4番はラマル ギービン ラタナヤケ内野手(2年)。今年の3年生にはいないスラッガータイプで、ロマンあふれる逸材である。守備面に課題はあるが、今年の課題だった強打を補う選手として、期待されて起用された。しかし、準決勝、決勝でノーヒットに終わり、決勝では途中で代打を出されてしまった。
全体的にミスが多く、捕球、送球技術に課題を抱えている選手も多い。
大阪桐蔭は徹底した練習量をこなしているが、それでもミスが起きるのは、練習内容に改善の余地があるといえる。ただ、一向に改善しない選手はコンバート、もしくは登用する選手を切り替える選択肢もある。全国制覇するために時間も、人材も投資をしているチームには避けて通れない問題だ。
次のチームで改善しないと、また同じ負けを繰り返す可能性がある。
3.履正社の福田 幸之介が一世一代の投球
大阪桐蔭が先発として警戒していたであろう履正社の福田 幸之介投手(3年)が想像以上の出来だったことも誤算の1つだった。球威はあるものの、制球力、テンポに課題があり、直球の速さの割には抑えられない、評価が得られない投手だった。大阪桐蔭相手にはそういう課題が浮き彫りになって、致命的な失点をしてしまうのではないかと思っていたが、試合が始まってみると、立ち上がりから最速151キロをマークし、最後まで140キロ後半の速球と130キロ前半の縦スライダーで大阪桐蔭を圧倒した。
福田の直球はかなり威力があり、金属バットでも前に飛ばせないほどの威力がある。さらにテンポのいい投球とあいまって、大阪桐蔭の打者は自分の間合いで打撃ができず、結果的に凡打の山を築くことになった。
負けには色々な誤算が生じる。決勝戦では大阪桐蔭にとって不安要素が色々出た形になった。来年も経験者も多く、タレントも多いが、今年のチームで出た根本的な守備力、打撃力、試合運びを改善しないと、全国制覇は遠い。
記事:河嶋 宗一