【大阪】準決勝 大阪桐蔭 vs 箕面学園

長澤 元
大阪桐蔭、120キロ前半の右サイドに苦しむも、センバツではレギュラーの外野手が執念の同点打!箕面学園との激戦を制する
<第105回全国高校野球選手権大阪大会:大阪桐蔭3-2箕面学園(延長10回タイブレーク)>◇29日◇準決勝◇大阪シティ信用金庫スタジアム
ここまで全試合コールド勝ちの大阪桐蔭が昨秋近畿大会出場の箕面学園に苦戦を強いられた。右サイドの島津 汰均投手(3年)の120キロ前半の速球とスライダー、チェンジアップのコンビネーションに苦しんだ。高めに浮いた球が少なく、外に逃げる球に腰が引ける形で打ってしまう。これでは強い打球を打ち返すことができず、1対2のまま試合は終盤を迎えた。
8回2死三塁のチャンスで4番・ラマル・ギービン・ラタナヤケ内野手(2年)に代打・長澤 元外野手(3年)を送り出す。
西谷監督は「ラマルでも良かったのですが、ここは3年生の長澤にかけました」と起用の意図を明かす。長澤はケガの影響で調整が遅れていたが、代打としてずっと準備をしていた。
島津に対してはこのように準備していた。
「開いてしまうと、相手投手の思うツボなので、体を開かずに準備を行いました」
右サイドに対して、右打者が迎えに行くように打ってしまうと、腰が開いて、スライダーが打てない。そこで引き付ける形で球を待った。長澤の冷静な読みはズバリと当たり、スライダーを振り抜いた結果、同点二塁打となり、大阪桐蔭ベンチ、大阪桐蔭を応援する人たちも興奮させた。
延長タイブレークとなった10回裏、1死二、三塁のチャンスでは、快打、爆走を見せてファイトあふれるプレーを見せている2番・山田 太成外野手(3年)に打席が回った。西谷監督は「当てにいくことなく、しっかりと振り切っていきなさい。できれば、スクイズはしたくないが何かあればスクイズを出す」と送り出した。すると山田は初球からしっかりと振り切ってサヨナラ打。山田らしいシャープなスイングで決勝進出を決めた。
センバツでは正センターとして活躍し、守りの要でもあった長澤が代打として大仕事。この春は苦しい試合が多かったが、こういうところで力を発揮できる3年生たちの底力が垣間見え
た試合だった。
大エース・前田悠伍が投げなくても、2人の2年生投手の快投で箕面学園を破る!

平嶋 桂知・境 亮陽
大阪桐蔭が大苦戦した箕面学園戦。こういう試合になるとエースの前田 悠伍投手(3年)に頼りたくなるところだが、それでも今年の大阪桐蔭の投手陣はしっかりと試合を作れる。それを経験豊富な3年生ではなく、2年生投手コンビが成し遂げた。
先発は前田に次ぐ投手として評価が高い南 恒誠投手(3年)がマウンドに登った。南は5回まで2失点。常時130キロ後半(最速141キロ)の速球とスライダー、チェンジアップ、カーブを適度に投げ分け、安定した投球を見せた。大きくリードした展開ならば、終盤まで投げてもおかしくないぐらいの内容だったが、接戦ということもあり、5回で降板した。
6回からマウンドに登ったのは、2年生右腕の境 亮陽投手だった。春では接戦なら、松井 弘樹投手(3年)が投げることが多かった。西谷監督は「ブルペンで球を受けていた捕手から、『境のストレートがかなりいいです』という報告が有り、境にしました」と起用理由を明かす。
西谷監督はブルペンで受けている捕手の意見を尊重するという。
「ブルペンで見られる範囲であれば、私が判断しますが、舞洲は室内にあり、私が見られる範囲ではありません。なので、捕手の意見を大事にします。普段から良ければ良い、悪ければ悪いとはっきりいうので、信頼して境にしました」
主体的に監督に意見をいえる控え捕手の存在とそれを尊重する西谷監督。その思いに境が応える。昨秋の投球から比べると、逞しさが感じられた。常時135キロ〜141キロの速球は数字以上に勢いがあり、分かっていても力で押せるほどの球威があった。境自身も「今日はしっかりとストレートを投げることができました」と語る。西谷監督は「今まではスッと入って打たれることが多かったのですが、今日は良かったです」と高く評価する投球を見せた境は4回を投げ、5奪三振無失点の投球を見せた。
タイブレークとなって、マウンドに登ったのは、平嶋 桂知投手(2年)。西谷監督からは「タイブレークになったらいく」と告げられていた。気持ちが入っていた平嶋は140キロの直球で圧倒。無死一、二塁からの相手攻撃を3人で仕留め、無失点に抑えてサヨナラ勝ちを呼び込んだ。
140キロ後半の速球を投げ、来年のドラフト候補として注目されている平嶋だが、以前より
もピンチに強くなった。
春では打たれる経験も多かった。セルフコントロールの重要さに気づき、なるべく笑顔で、良い表情を投げることを心がけているという。
「西谷先生からも言われて心がけています。春に打たれたことは悔しかったですが、それが今は力になっているといえます」と語る。
前田抜きでも、タイブレークまで及んだ接戦を制する。間違いなくこの2年生投手2人を大きく成長させた。
次は履正社。西谷監督は「大阪を制するには、避けて通れない相手です」と警戒するように、勢いに乗っている。
2年連続の決勝戦。やはり総力戦になることは間違いない。