花巻東vs至学館
至学館、逆転負けも佐々木麟太郎から3打席連続三振を奪うなど、至学館野球を随所に発揮

至学館・伊藤 幹太
<第9回愛知県高校野球連盟招待試合:花巻東8-5至学館>◇4日◇小牧市民
花巻東(岩手)は前日の3日に東邦、愛工大名電(ともに愛知)の強豪2校と2試合を行った。佐々木 麟太郎内野手(3年)を中心とした攻撃力は強力だったが、基本的な守備力が低く、投手を苦しめる形となり、失点が多いチームだと感じていた。4日の第1試合で対戦した至学館(愛知)は、そういう守備の拙さを逃さない好チームである。
試合中盤までは、至学館が試合巧者ぶりを発揮した。3回、エガレバ・クリントン内野手(2年)の適時打で1点を先制。なおも、1死一、二塁とチャンスを広げ、2番・山田悠貴外野手(3年)の場面で、ダブルスチールを絡め、暴投を誘い2点目を奪った。さらに山田のスクイズで3点目を入れた。まさに至学館の強みを発揮したイニングだった。
4回にはエース・伊藤 幹太投手(3年)の適時二塁打と犠飛で5対0とした。ここまでの試合運びについて麻生監督も「至学館らしい野球ができたと思います。選手たちはよくやってくれました」と高く評価していた。
エースの伊藤は佐々木麟から2打席連続三振を奪った。前日の招待試合の映像、これまでの映像を見て、内角がポイントと見た上で、当日の佐々木麟の反応も見極めた。
「今日については、内角低め。変化球をうまく落とせば三振を狙えるのではと思いました」と第1打席はフォークで空振り三振。2打席目は「第1打席の結果を見て、スライダーで三振を奪うことを決めていたので、そこから逆算して配球を組み立てていきました」。ボール球で入り、徐々に追い込んで最後はスライダーで空振り三振。まさに緻密な攻めだった。
3打席目は左のアンダースローである松本 龍憲投手(2年)が登板。松本は「自分はアウトコースを攻めて、どう遠く感じさせるか。スライダーをうまく使って腰を引かせる配球ができればと思いました」と振り返るように、100キロ後半の直球とスライダーで丹念に攻めてフルカウントまで持っていく。そして最後は渾身の110キロの直球。松本が投げたいコースからは少し外れてしまったが、それでも空振りを奪い、大きくガッツポーズを見せた。

至学館・松本 龍憲
「自分の野球人生でこれほどの打者とは対戦したことはないので、大きな自信になります。夏は絶対にベンチ入りを勝ち取りたいです」
変則左腕を重宝する至学館の環境に惹かれて入学した。その持ち味を大きく発揮した瞬間だった。
その後、130キロ中盤の速球を投げる右投手として期待が高かった小鹿 隼翔投手(3年)が最速139キロをマークした。堀江 映太投手(2年)は130キロ前半の速球を投げ、無失点に抑えた。しかし、1年からマウンドを経験している技巧派左腕・山本 航投手(3年)が8回から登板すると佐々木に2ランを許し、伊藤が再びマウンドに上がるも、9回2死から逆転打を打たれ、5対8と逆転負けを喫した。
麻王監督は「9回2死、2ストライクまで追い込んで、逆転された。簡単には勝てない試合ができたのは夏へ向けて良かったと思います。伊藤は最後、バテ気味でした。そこを持ちこたえるスタミナが大事になるかと思います」と逆転負けを夏へ向けての収穫ととらえた。
伊藤も、延べ6.2回を投げ、計9奪三振と力投を見せたが、やはり5回まで87球を投げたあとの再リリーフでは、影響があってもおかしくない。
継投策中心としても、伊藤には1イニングに10球〜15球程度で抑え込めるほどの投球術と球威は身につけてほしいところだろう。まだ全体的な底上げは必要で、打線もいろんなバリエーションを持って、中盤から終盤で仕掛けられる戦術と打撃強化が課題となりそうだ。
佐々木麟を3打席連続三振に抑えた高度な配球は至学館投手陣だからこそできることだった。「思考力を極める至学館の野球を発揮できました。今回のうちの攻めは佐々木麟くんと対戦する各学校さんの参考になったかと思います」と至学館スタイルを貫き、花巻東と互角の勝負を演じた選手たちをたたえていた。
終盤逆転勝ちした花巻東としては、5回以降、投手陣が無失点に抑えた試合運びが光った試合となった。
(取材=河嶋 宗一)