球数制限をはじめとした選手ファーストで大会を運営する日本ポニーベースボール協会は、各学年で日本代表を編成して国際大会を開催できるなど、世界と戦うことに魅力を感じたり、賛同したりする人が増えたことで、登録選手が年々増加している。
5月中旬に佐賀県内で開催された広澤克実杯全日本地域対抗選手権兼日本代表選手選考会は過去最多の出場数となり、協会全体の盛り上がりぶりが伺い知れる大会となった。
急遽開催の練習会でアピールした逸材たち
桑村 颯太
今大会はコルト(U-16)代表、ポニー(U-14)代表のメンバーを決めるべく、各地区から選抜チームを編成。チームとして優勝を目指すのはもちろん、各選手は試合を通じて日本代表入りへのアピールし続けた。
ただ、大会序盤は雨の影響で当初予定していたスケジュールで進めることを断念せざるを得なくなり、午前中は試合を実施することができなかったが、選手らは各会場に分かれての練習会を通じて持ち前のパフォーマンスを見せた。
[stadium]みゆき球場[/stadium]近くにある朝日I&Rドームでは、COLT日本代表を目指す北海道北東北選抜、関西連盟選抜、沖縄連盟選抜の3チームが練習会を実施。1チーム30分の限りあるなかでノックやロングティーなどでアピールした。
練習だからこそ、選手たちの純粋なポテンシャルを見ることができた。沖縄選抜では城間 世輝捕手(3年)、高良 優太内野手(3年)がキャッチボールから強肩ぶりを見せつけると、ノックでは外野の守備に入った新垣 光汰朗外野手(3年)がレーザービームのスローイングを見せつけるなど、能力の高さを見せた。
続いて登場した北海道北東北選抜では遊撃手に入った桑村 颯太内野手が、長身選手でありながら軽快な動きと柔らかいスローイングを見せた。バットを握ってもタテぶりの豪快なスイングで木製バットながらも快音を響かせた。まだ堅さが見られたものの、大型遊撃手として今後の飛躍に期待を寄せたくなった。
最後に登場した関西選抜は、二塁手に入った袴田 康光内野手(3年)を中心に活気があった。今大会のために何度か練習会をしてきただけあって、チームに一体感があり、いい雰囲気で練習を進めた。
そのなかで市田 樹外野手は、テークバックを取らず、ヒッチで上手くタイミングをとる力強いインパクトを見せるなど、木製バットながら痛烈な打球を飛ばしていた。ヤクルト・西村 瑠伊斗外野手(京都外大西出身)を輩出した京都ポニーだけあり、レベルの高い選手だった。
夏の選手権に向けて飛躍に結び付けられるか
話題となった東濱 成和
全チーム練習会を終えると、雨とグラウンド状況を考慮して5試合だけ試合を実施。ひぜしんスタジアムと長崎ビッグNスタジアムで開催された。
[stadium]長崎ビックNスタジアム[/stadium]では、ソフトバンク・東浜 巨投手(沖縄尚学出身)のはとことして話題となっている宜野湾ポニー・東濱 成和投手は141キロを計測。試合には敗れたものの、大きな話題となった。
[stadium]ひぜしんスタジアム[/stadium]では東濱のように140キロを超えるような投手はいなかったものの、ポニーの部の関東選抜に選出された甲斐 奏音投手、堀尾 旬投手はともに130キロに迫る速球を投げるなど、レベルの高さを見せた。
打者陣でも関東選抜・松本 怜青外野手が複数安打を記録するなど猛アピール。しっかり重心を落とし、反動をあまり使わずに最後までしっかりと振り抜く強烈なスイングを見せる。すり足からインステップでしっかりと踏み込んで振れる部分も魅力だった。
ただ、この日は雨の影響で足場の状況が悪く、ほとんどの選手が思うようなパフォーマンスを発揮できなかったが、最終日の14日は快晴のもと、各球場で試合が行われた。
ポニーの部では九州選抜と新規加盟連合が1点を争う好ゲームを展開。九州選抜は竹下 翔太投手が先発し、3回1失点の好投を見せる。3月に開催されたセンバツ大会では短いイニングの登板に終わったが、この試合では全国区の猛者を相手に実力を発揮した。
コルトの部でも南東北北関東選抜との一戦で、3番手で登板した九州選抜・高田 芯投手が活躍。投手経験は浅いが、質の高い球を投げるなど、素質の高さが垣間見えた。
打者陣でも南東北北関東選抜の稲泉 青内野手、青木 智潤外野手がタテぶりの強烈なスイングで快音を響かせた。今回は木製バットを手にしてプレーする打者はやや不利に思われるが、長打を放つなど、それを感じさせないバッティングを見せてくれた。
球数制限に加え、今大会は木製バット使用と、他のリーグには見られない取り組みを全国大会で実施するのはポニーならではだろう。
参加した選手からは「全国の相手に思った通りのプレーができるのは楽しい」と強豪相手の戦いを楽しんでいる選手もいれば、「木製バットでの試合は体験できないので、面白いです」と木製バットを使うことを楽しんでいる選手もいるなど、野球の面白さを再確認していた。
今大会は日本代表メンバーを決めるのが目的の大会だ。各地区の選りすぐりが集結して、ハイレベルな戦いを見せるのはもちろんだが、普段使うことが少ない木製バットや、めったに対戦できない相手と相まみえることで、野球の魅力を再発見できる一面も今大会の良さだろう。
最後に、広澤克実理事長は、「今度は選手権になると思うので、またみんなが上手くなった様子を見られることを楽しみにしています」という言葉で締めくくった。日本代表に選ばれた選手はもちろん、今回は外れたメンバーも、今大会の経験を糧にさらなる成長に結び付けて、集大成の夏に一回り逞しくなった姿を見せてほしい。
(取材=田中 裕毅)