帝京vs関東一
帝京10年ぶり14度目の春の東京制覇‼4番・稲垣3安打5打点の活躍

帝京・歓喜の輪
<春季高校野球東京都大会:帝京7-3関東一>◇30日◇決勝◇スリーボンドスタジアム八王子
雨の予報が出る中、決勝戦は試合開始時刻が午前10時から午後1時に変更になった。晴天だった準決勝と違い、決勝戦は時おり小雨の降る中で行われた。
関東一の先発は背番号11の栗原 黎門投手(3年)、帝京は背番号17の小野 寛人投手(2年)と、ともに継投を視野に入れての投手起用であった。
帝京は1回、1番の野村 亮太外野手(3年)が二塁打を放つ。2番・奥山 悠仁内野手(2年)が送り、3番・西崎 桔平内野手(2年)の中犠飛で1点を先制する。
関東一は2回、4番の高橋 徹平内野手(2年)が左翼席に飛び込む本塁打を放ち、同点に追いつく。「高めの真っ直ぐです。打った瞬間、入ると思いました」と高橋は言う。
その後、5番の佐々木 迅内野手(3年)、6番の坂本 慎太郎外野手(1年)と安打が続いたが、7番・大村 勝星内野手(3年)のバントは、帝京の先発・小野が素早く処理して三塁で刺す。続く打者も打ち取られ、この回は1点止まりだった。後になって振り返れば、関東一はここで一気に逆転できなかったことが響いた。
3回帝京は、四球の走者を2人置いて、前の打席で三塁打を打つなど打撃好調の稲垣 渉外野手(3年)が二塁打を放ち、2人が生還し、勝ち越す。
4回関東一は、4番・高橋が今度は三塁打を放ち、佐々木の中犠飛で生還して1点を返す。この試合、帝京の稲垣、関東一の高橋という両チームの4番打者の活躍が目立った。ただし、帝京は走者を置いて4番に回ってきたが、関東一は走者がいなかった。この違いも勝敗を分ける要因になった。関東一の場合、特に2番打者が大会を通じて定着しなかった。関東一の米澤 貴光監督は、「野球に詳しい子が、この代は少ない」と語る。関東一には3番・衛藤 冴仁捕手(3年)、4番・高橋という強打者がいる。その前で、どうお膳立てをするか。そのため関東一の2番打者は、野球センスが問われる立場でもある。
5回以降は、帝京・小野の投球が安定する。「落ちる球がいい球でした。フライアウトが多かった」と、関東一の米澤監督は語る。
一方小野はこの試合の投球を、「楽しかったです。ブルペンの時から、球が走っていました」と語る。
帝京は7回も稲垣の右前安打などで2点を追加する。この試合、帝京の稲垣は3安打3打点の大活躍。秋は本来の打撃ができなかったが、冬の間、「タイミングを合わせる練習をしてきました」という成果が出ている。
8回関東一は3番・衛藤の中犠飛などで1点を返したが、反撃もここまでだった。
9回帝京は、5番・奈良 飛雄馬内野手(2年)の二塁打などで2点を追加。9回の関東一の攻撃も、「9回を投げての完投は初めて」と言う小野がしっかり3人で抑えて、歓喜の時を迎えた。春季大会では、比較的淡々と優勝の瞬間を迎えるチームもあるが、帝京は選手たちが抱き合い、マウンド付近に歓喜の輪ができた。秋、春、夏を通じて大会で優勝するのは10年ぶりである。それだけに喜びも大きい。
試合を観戦していた前田 三夫名誉監督は、「若い指導者が一生懸命やっていましたから、こんなに早く結果が出てうれしく思います」と語る。また関東大会の出場については、「夏に向けての挑戦になる」と語った。今大会の帝京は、気迫や魂を感じるプレーが多かったが、「帝京魂」というには、「不動の強さを作ってもらいたい」と語った。
また金田 優哉監督は優勝できた要因について、「守備が良かった。球際に強くなりました」と語る。実際内外野、特に外野手が何度も失点のピンチを救う好プレーをみせていた。「帝京復活」という言葉は、甲子園に行ってからになるだろう。それでも前任者が偉大であるほど、その地位を引き継ぎ、強さを維持するのは難しい。その意味で今回の優勝は、「帝京復活」への大きな足掛かりになることは間違いない。
一方、敗れた関東一の米澤監督は、「うまくいかない時に、どうするかが大事です。夏にどうつなげるかですね」と米澤監督は語る。大会3連覇の偉業を達成することはできなかった。しかし秋の2回戦敗退からチームをしっかり立て直してきた。そして、春の経験を糧に、夏にどのようなチームを築いてくるか、楽しみである。
いずれにしてもまずは、東京代表として関東大会に出場する帝京と関東一の健闘を期待したい。
(取材=大島 裕史)