Interview

わずか2年ほどで球速20キロアップ プロ入りも期待される滝川第二の逸材・坂井陽翔が急成長できた理由は

2022.12.28

 2023年はセンバツは記念大会になる。いまだ新型コロナウイルスの脅威と付き合いながらだが、少しずつこれまでの当たり前だった高校野球に戻り始めている。

 1人でも多くの球児が、甲子園で活躍してほしいと願うばかりだが、その中の1人が滝川第二(兵庫)にいた。

投手として何かが欠けていた

わずか2年ほどで球速20キロアップ プロ入りも期待される滝川第二の逸材・坂井陽翔が急成長できた理由は | 高校野球ドットコム
坂井 陽翔(滝川第二)

 入学時は最速129キロ。ずば抜けた数字ではないが、現在は最速149キロを計測している。わずか2年足らずで20キロもスピードアップしている逸材が滝川二にいるのだ。

 坂井 陽翔投手(2年)。186センチ、83キロとすらりとした体型から、角度を付けた直球で打者を圧倒する。まだ甲子園には手が届いていないが、その素質の高さに既にスカウトのチェックも入っている。

「小学生の時から投げる力はありました。ただ受けていて『何かがかみ合っていない。投手として何かが欠けている』と感じていました。ここまで成長するとは思いませんでした」

 小学生の時からチームメートだった田村 武琉捕手(2年)は相棒の急成長ぶりに驚きを隠せない。もちろん、球速が大幅に変わったこともあるが、投手を本格的に始めたのが、滝川第二に入学してからだということもあるだろう。

 播磨ボーイズ時代は登板希望はあったというが、「当時は絶対的なエースがいましたし、自分の能力も足りていなかった」と実力が伴わず、強肩外野手として活躍していた。そのときのフラストレーションを爆発させるためにも、「入学時には投手を志願しました」と迷わず投手の道を選んだ。

 ただ、田村が指摘したように、「投手として何かが欠けている」の「何か」を見つけて、自分のモノにしなければ、坂井の現在はない。その答えを、坂井は少しずつ出してきたという。

「自分の体に合った投球フォームを見つけて、再現性を高めることができたこと。あとは入学時は72、73キロくらいだった体重が、83キロまで増量したことが球速20キロアップに繋がっていると思います」

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あいつで負けたら仕方ない投手に

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坂井 陽翔(滝川第二)

 自分に合ったフォームというのは、どの投手も探し続けるものだが、坂井はその観点で上半身、下半身ともにチェックポイントを見出してもらい、合理的に快速球を投げるためのフォームを確立しようとしていた。

 「入学時からフォームの大まかな部分は変えていませんがステップ幅が7歩で力を上手く使うことができず、軸足に重心を残したままになっていました。それを6歩に変えただけで左足の股関節に重心を乗せられるようになって、リリースの時は切るようにして投げられるようになりました。

 あとは両ひざもポイントですね。左ひざが一塁側に倒れる癖があって、力が逃げてしまっているので、どれだけ我慢ができるか。あとは右ひざについては投げ終えてから遠回りしていて、キャッチャーへ真っすぐ向かっていないので、力が逃げています」

 体重移動がきちんとできない使い方になっており、指先に力が伝わらない。さらに捕手方向へ真っすぐ移動できないことで、制球力が安定しないという課題があったのだ。こればかりは「すぐに直せるものではない」と入学直後に指摘されたそうで、今も根気強く向き合っているという。

 しかしデビューは早い。1年生の夏には背番号をもらってベンチ入り。試合にも出場を果たした。2学年上の先輩たちと戦う中で「内気なのが一番アカンから、思い切りプレーしていいぞ」という一言ももらい、伸び伸びとプレーした坂井は、ベスト8進出に貢献した。

 秋からはエースナンバーを背負った。本人は「緊張しましたし、驚きました」と1年生の秋だったが、報徳学園の前に敗れた。「パワー、レベルが全然違いました」と全国区の戦力を肌で感じ、1年目を終えた。

 オフシーズン、やることは変わらず、自分に合ったフォーム固め日々。そして体重増加の2つを取り組み続け、「体重が2、3キロ増えましたし、ちょっとわかってきた」と手ごたえをつかみ、球速が144キロまで伸びてきた。

 この手ごたえは、2年生の春に確信へ変わった。3月に東洋大姫路(兵庫)を相手に完封勝利を手にした。これには「自分も『9回まで投げきれるんだ』と自信を深めることができました」とさらに成長を促すような勝利だった。

 しかし、2度目の夏もベスト8止まり。「自分が打たれて先輩たちの夏を終わらせてしまい、悔しいですし、物足りないです」とエースとして自覚を持って挑んだが、結果を残せないことに反省していた。

 相棒の田村も「新チームからは1球の執念といいますか、納得いかない時に悔しがる表情を出すことが増えた」とエースの自覚を一身に背負って練習を続けていき、この秋ももちろんエースとして大会に入った。

 順調に勝ち上がり、準々決勝で再び報徳学園が立ちふさがった。試合は7回まで0対0の投手戦を演じた。しかし8回に一挙4点を失い、主導権を明け渡してしまい、白星を逃した。

「自分が打たれて、カバーができませんでした。精神力のなさが出たと思います」

 悔しい敗戦を通じて、自分の力不足を痛感した坂井。甲子園に行く最後のチャンスをつかむために「体の線が細いので90キロまで増やして、160キロは目標です。それくらいのレベルアップが必要ですし、メンタルも強くしないといけないと思います」と明確に目標を語った。

 最後に「『あいつで負けたら仕方ない』と思われる投手にならないといけない」と断言した。その言葉の重みと眼差しに、坂井の覚悟を感じた。急成長を続ける逸材は、2023年の顔となったとき、プロ入りへの道も開けてくるはずだ。

(取材:田中 裕毅

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