元球児の父の指導で劇的サヨナラ弾 岩倉が主将の1発で八王子を下す
満面の笑みでホームに向かう岩倉・堀田 秀哉
<秋季高校野球東京都大会:岩倉3-2八王子(9回サヨナラ)>◇15日◇2回戦◇江戸川区
岩倉が劇的なサヨナラ勝ちで西東京の強豪・八王子を破って16強入りを果たした。
終盤まで1点差で競り合う熱戦は1対2の9回裏、岩倉が1死一塁としたところで、主将で主砲の4番・堀田 秀哉内野手(2年)が左翼席まで運ぶサヨナラホームラン。自身初となる公式戦でのホームランは「どこまで飛んだかわかりませんでしたが、走っている間は気持ち良かったです」と球場の歓声に気持ちを高ぶらせてダイヤモンドを回り、ホームベースで待つ仲間たちと喜びを爆発させた。
178センチ、80キロとがっちりとした体格の持ち主で、初戦の日大鶴ヶ丘戦でも三塁打を打っており、パンチ力は十分。とはいえ通算本塁打はまだ1ケタということで、ベンチにいた豊田監督も「堀田らしく外野の間を速い打球で抜いてくれればと考えていましたが、ホームランを打つまでは想像していなかった」と指揮官の予想以上の結果を残した。
高い位置でバットを構えたから、一気に振り下ろして強いインパクトで快音を響かす。独特な構えから鋭い打球をはじき返すが、これだけの打者になれたのは、新チームからの取り組みが大きい。
新チーム発足前は、バットの位置は下げて、ヘッドを利用したバッティングをしていた。しかしそれでは球に対してドライブ回転をかけてしまい、思うように飛距離を伸ばすことができていなかった。
そこで新チームに切り替わったタイミングで、世田谷学園時代は球児だったという父の指導で、現在のバットの位置を高くして、振り下ろしていくフォームに変えた。
「以前までのバットの位置が低いフォームだと、球に対して下半分を捉えることが多かったので、バットの位置を高くしつつ、球の上半分を捉えるように意識で打つように心がけていました」
練習試合を重ねていく中で、徐々に感覚をつかみ、強いゴロ、ライナー性の当たりで外野の間を抜いていくような打球が出始めていた。さらにホームランも1本出るなど、改善したフォームで飛距離も出てきて、手ごたえをつかんでこの秋の大会に臨んでいた。
この試合も、9回の打席では「ライナーで繋ぐ意識で、球の上半分をたたくつもりで振りました」と、夏休みから一貫して取り組んできたことを徹底してバットを振り抜き、試合をひっくり返した。スタンドにはアドバイスをくれた父も駆けつけていたそうで、目の前で成果を見せることができた。
次はシード校・国士舘が相手。初戦、2回戦に続いて三度、西東京の強豪と対戦する。春のシードを獲得し、目標である甲子園出場へまた1歩前進なるか。大黒柱・堀田の活躍に今後も注目だ。
(記事=田中 裕毅)
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181センチの大型左腕に今後期待 八王子、サヨナラ負け喫するもエースが好投
八王子先発・鈴木 裕晴
<秋季高校野球東京都大会:岩倉3-2八王子(9回サヨナラ)>◇15日◇2回戦◇江戸川区
サヨナラ負けで3回戦進出を逃した八王子。指揮官の安藤監督は「1つのプレー、1球で流れや試合が決まることを知ったと思います」と悔しさを押し殺して、痛い敗戦を前向きにとらえようとしていた。
最後マウンドに立っていたエース・鈴木 裕晴投手(2年)も、「相手の勢いを逆に利用して、自分も勢いに乗りたかったですが、投げ切れなかった」と最後の1球が抜けてしまったことを悔やんでいた。
8回までは見事な投球だった。99球で被安打5、四死球2、失点1とエースにふさわしい投球内容だった。安藤監督も「コントロール良く丁寧に投げて打たせて取る投球しかできないですが、よく投げました」と奪三振1つながらも凡打の山を築いた巧みな投球を称賛し、「この展開では代えずらかった」とエースを信じて最後まで託したが、勝利まではついてこなかった。
鈴木は「あまり意識はしていない」というが、楽天・早川隆久投手(木更津総合出身)を彷彿させるようなフォーム。セットポジションから右腕を一塁側ベンチに伸ばして開きを抑えつつ、コンパクトなテークバックでトップを作り、スリークォーター気味の高さから左腕を振り抜いた。
181センチの長身から投げているので角度はもちろんあったが、体を上手く使って球の出どころが見えにくそうな投球フォームで、対戦した岩倉・豊田監督も「ウチがあまり対戦したことのない独特な軌道、タイミングでした」と攻略は一筋縄ではいかなかったようだ。
最後の1球に泣き、2022年の公式戦を終えたが、来年春に向けて、「長いイニングを投げ切れるだけの力やコントロールもありますが、現在の球速、球威では夏は戦えないので、とにかく体を作るところからやりたい」。そこは安藤監督も同意見だった。
「これまでの羽田(慎之介)や星野(翔太)と比較すると、三振を取れる球種がないので、打たせてアウトが取れている間はいいですが、無死や1死から長打でいきなり得点圏に背負うと、相手の凡打を待つしかできません。ですので、三振を取れるようにならないと、今後は追い込んでから苦しむと感じています」
現在の最速は128キロ。体重も70キロともう少し増量したいところ。スケールアップして、春は東京都を沸かすような大型左腕になることを期待したい。
(記事=田中 裕毅)