今年の高校生遊撃手を代表する1人として浦和学院(埼玉)の金田優太内野手(3年)の名前が挙がる。182センチ、82キロと恵まれた体格をした完成度の高い逸材だ。前編ではブレークするまでの土台を築いた2年冬までの歩みを振り返ったが、後編では全国的な活躍を見せたセンバツ、そして活躍につながった取り組みについて迫っていく。
高校生を代表する山田から3安打。高打率を残した打撃面の意識付け
浦和学院・金田優太
センバツでは、開幕戦となった大分舞鶴(大分)戦で4打数3安打の活躍。そして2回戦の和歌山東(和歌山)戦では、本塁打を放ち、その後も快打を連発し、17打数11安打(打率.647)を記録した。特に準決勝では140キロ台の速球、130キロ台のカットボール、ツーシームを投げ込む近江(滋賀)の山田陽翔投手(3年)から3安打を打ったことも大きく評価を上げる要因となった。
甲子園の記者席からその打撃を見ていたが、多くの高校生打者がミートすることに苦労していたなか、両腕をうまく使ってコンタクトしている姿が大きく印象に残った。金田はいかにして球を捉えていたのか。
「去年から試合に出させてもらって、前チームでは繋ぎ役として2番をやっていました。逆方向の意識があったおかげで、今年は3番を打つにあたって、強く振っていく中で追い込まれても粘れた。2年生の頃の経験が大きいかなと思います」
前年から出場していた経験が好結果に繋がった。打席内の準備も自分なりの分析がうまく生きている。
「試合前に相手のピッチャーを絶対見るので、自分なりに分析して狙い球を決めて、1打席目でみて2、3打席目で対応できるようにしています」
甲子園に限らず、どの試合でも高確率でコンタクトしていたが、こうした準備を打席内で実行できる選手なのだろう。山田に対してはどのように準備したのだろうか。
「山田投手は真っ直ぐが速いので、真っ直ぐを打つ前提で入りましたが、変化球も速かったので、そこは見て打ちに行くというよりは体の反応で対応していきました。
変化球に張る場面もありましたが、まずは一番速い真っ直ぐを打ちにいく準備をしていました」
センバツでは安打製造機としてアピールした金田。センバツ以降の公式戦でも豪快な打撃というよりは上手さが光る打撃を披露していたが、練習試合では強豪校相手にも本塁打を量産。そして夏の大会では、浦和実戦で本塁打を放ち、通算28本塁打に達した。
センス抜群で実戦にも強い巧打の遊撃手に強打が加わった金田。評価が上がるのも必然だ。
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インパクト集中からスイング軌道へ。守備の意識変化でさらにレベルアップ
浦和学院・金田優太
ラストイヤーにかけて一層磨きがかかった守備についてのコツもこう語る。
「レベルが上がると速い打球もくるので、どの打球に対しても、パッと反応して固まるのではなく、ゆっくり柔らかく入れるようにしています」
全国レベルを意識して速い打球に対して備えていることからも、意識の高さが分かる。金田の動きは非常に柔らかい。うまく反応できているのも守備時の意識の変化があった。
「これまではずっとインパクトだけに集中していましたが、今年からピッチャーがリリースしてから、バッターのスイングの軌道を見るようにしてから、少し打球に対して余裕ができました」
視野が広がったことで、よりレベルが高い守備を実現できた。
高次元のパフォーマンスができているのも、事前の分析や視野を広くした準備によって成り立っているのが分かる。
最後の夏は、決勝戦で敗退。2年夏から続く3季連続の甲子園出場はならなかった。
「やっぱり途中で負けたのが1番悔しいです」
夏の大会終了後、夏休みで体を休めた後、8月第2週から本格的にチームに合流。現役の選手に交じって練習する日々を送っている。浦和学院の練習は、ハードかつプレッシャーがかかるもの。金田は後輩たちと同じ緊張感のもと、練習に取り組み、磨きをかけてきた。そして、後輩の遊撃手に対しても丁寧に守備のアドバイスを送っていた。
ドラフトへ向けての現在の練習のテーマについては、こう語る。
「体作りをもう一度見直すことと、一つに絞らずに全ての面で底上げをして、チーム練習というよりは自分との戦いになるので、全てのレベルを上げることをテーマにやっています」
しっかりと自覚を持って取り組む金田。改めて意気込みを語ってもらった。
「プロの1軍の世界で活躍できることが一番ですが、誰を参考にするとかではなく、自分のスタイルでやっていきたいです」
冷静に自分の目標を語った金田。強みは過去のインタビューから分かるように、課題をしっかりと設定して、それをクリアし、パフォーマンスアップできる学習能力の高さがある。大型遊撃手として注目されているが、抜群のフィジカルがあるわけではない。それでも高次元のパフォーマンスができて、調子の波が少ないのはプロの世界では大きな強みとなるだろう。
気づいたら、同世代のライバルより1歩先を行く成績を残す。そんな選手になるのではないだろうか。
(取材=河嶋 宗一)