Interview

世代を牽引してきたドラフト候補左腕・森下瑠大 不調に泣いた1年 ドラフト前の心境を語る

2022.09.27

 高校生左腕として、早くから2022年のドラフト上位候補として名前が挙げられていた京都国際森下 瑠大投手(3年)。1年秋から投打の主力選手として活躍し、チームの甲子園初出場に大きく貢献した。

 今年は世代No.1左腕として活躍が期待されたが、春のセンバツは新型コロナウイルスの集団感染により出場辞退。その後は左肘の故障にも悩まされ、最後の夏も甲子園には出場したが、思うようなパフォーマンスは発揮できなかった。

 8月下旬、森下は学校のグラウンドで同級生と汗を流していた。同級生の有力選手は侍ジャパンU-18代表に合流している。本来なら森下も選出される実力があるはずだったが、夏のコンディションを見れば、落選も致し方なかったか。「選ばれることを期待していたので悔しいです」とは言うものの表情に悲壮感はなく、次のステージに向けて準備を進めている。

約30校の勧誘の中から京都国際へ進学決める

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京都国際・森下瑠大

 京都府福知山市で生まれ育った森下は、福知山成美でもプレーした兄・魁斗さんの影響で小学1年生の時に昭和GUTSで野球を始めた。生まれつき何をするのも左利きで、5年生から本格的に投手を始めたという。

 中学では兄と同じ福知山ボーイズに所属。鶴岡一人記念大会の関西選抜にも選ばれ、岡西 佑弥内野手(智辯和歌山)、光弘 帆高内野手(履正社)、戸井 零士内野手(天理)、谷口 勇人外野手(大阪桐蔭)など、そうそうたるメンバーの中に名を連ねていた。

 当時の最速は127キロだったそうだが、「体は全然できていないけど、鍛えたら面白そう」と京都国際の小牧 憲継監督は将来性を高く評価していた。他にも甲子園優勝経験校など約30校から誘いの話はあったそうだが、「練習を見た時は凄く熱心だと思って、選手を思えるチームだと思いました」と京都国際への進学を決断。甲子園出場よりもプロ野球選手になることに魅力を感じていたことも京都国際進学の決め手となった。

 1年生の夏は甲子園が中止で独自大会になった影響もあり、レギュラーになったのは秋からだったが、「コロナがなかったら夏からメンバーに入れていたでしょうね」と小牧監督は語る。当時のエースだった入海 勇太と4番だった早 真之介(現ソフトバンク)を将来的には投打で上回る選手になると小牧監督は予感していた。

 秋から満を持して投打の主力選手になると、近畿大会4強入りに貢献。翌春のセンバツ初出場の立役者となった。

 初めての甲子園は延長10回の末に柴田(宮城)を下して初戦突破するも2回戦で東海大菅生(東京)に逆転サヨナラ負け。「一球の重みというところが甲子園では全て出てしまう」と大きな教訓を得る大会となった。

 甲子園から帰ってきてからは練習への意識が変わった。「それまでは自分のことを黙々とやるタイプでしたが、自分が練習から姿勢で引っ張っていこうと、先輩にも臆することなく言えるようになりました」と小牧監督も森下の成長について語っている。

 2年夏の甲子園はベスト4と躍進。「勝てば勝つほど力が付くんだなと思いました」と1勝を積み重ねるごとにチームの成長を実感していた。この大会では智辯学園(奈良)の前川 右京(現阪神)などプロに進む選手と対戦したが、「自分のコントロールで良いバッターでも抑えられることがわかったので、コントロールをもっと磨いたらプロでも勝負できるのかなと思いました」と自信を深める場にもなった。

[page_break:ラストイヤーは万全な状態ではなかった]

ラストイヤーは万全な状態ではなかった

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京都国際・森下瑠大

 夏の甲子園が終わって最上級生になると、プロ入りを本格的に意識するようになる。「甲子園よりもプロを引き合いに出したらなびく」(小牧監督)という森下に対して、秋の近畿大会初戦で履正社(大阪)との試合を控えた際には、「ほとんどの球団が見に来ているから、完封したら(ドラフトの順位が)一つ上がるぞ」と小牧監督が発破をかけたそうだ。その言葉に応えるようにして、森下は履正社の強力打線を完封。チームに3季連続甲子園出場をもたらした。

 冬場の調整も順調で、「正直、センバツ前の時点では、ほぼ打たれない状態ではありました」と小牧監督が話すほどの手応えを感じていた。しかし、開幕直前に新型コロナウイルスの集団感染により、無念の出場辞退。実力を全国の舞台で発揮することはできなかった。

 夏に向けて4月から再スタートを切ったが、その後に左肘を故障。思うように投げられない日々が続いた。「夏の大会に間に合うのかなという焦りはありました。まずは怪我を治すことだけを考えてやっていました」としばらくは治療に専念。夏の京都大会も前半は野手での出場となった。

 しかし、トラブルはこれに留まらなかった。初戦を突破した後の練習中に腰の痛みを覚えた。このことは大会期間中に語られなかったが、痛み止めを打っても効果がない状態だったという。

 その中でも準決勝と決勝ではマウンドに上がり、打っては3本塁打の大活躍。万全とは程遠い状態の中で、夏の甲子園出場の立役者となった。

 小牧監督は森下の回復が見込める大会6日目以降に初戦が行われることを望んでいたが、運悪く初戦が組まれたのは大会第1日の第3試合。相手は岩手代表の一関学院に決まった。

 「コントロールも全然つかなかったので、しんどいなと思っていました」と先発マウンドに上がったが、3回4失点と不本意な投球。4回からは右翼の守備に回った。チームは終盤に4点差を追いついたが、最終的には延長10回でサヨナラ負け。それでも森下は常に笑顔を見せていたのが印象的だった。

 「万全の状態で投げたかったのが本音ですけど、あの舞台に帰れたことは自分自身としても大きいことだったので、1試合でもできたのは良かったと思います」と甲子園を振り返った森下。勝敗以上に甲子園で試合ができたことに喜びを感じている様子だった。

 甲子園が終わってからは体の状態と相談しながら練習を続けている。仮に侍ジャパンU-18 代表に選出されていたとしても、活躍できる状態までは戻ってきているようだ。

 残念ながら高校生の間に日の丸を背負うことはできなかったが、トップチームの侍ジャパン入りが今後の目標だ。その第一歩として、プロの世界で活躍できるための体作りを現在は行っている。

 「1年間投げ抜く体力がプロに入ったら求められると思うので、今から準備していきたいです」と話す森下。高校入学時から志してきたプロ野球になるという目標を叶えるまであと少し。10月20日のドラフト会議でどのような評価が下されるだろうか。

(取材=馬場 遼

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