7月27日、甲子園出場を懸けて創成館との決勝戦に臨む長崎の長崎海星。背番号1を背負い、ここまでチームを引っ張ってきたのは、ドラフト候補にも名前が上がる宮原明弥投手(3年)だ。
最速146キロの球威のある直球に、カットボールやスライダー、スローカーブと多彩な変化球を操る宮原は、下級生時から投手陣の一角としてマウンドに登り、昨夏も2年生ながら登板を経験。今大会でもここまで2試合に登板し、未だ無失点と抜群の安定感で決勝進出に貢献している。
そんな宮原はこの夏、3歳年上の兄の無念も背負い、マウンドに立っている。
大会直前に怪我でレギュラー落ちした兄の存在
宮原明弥(海星)
離島の対馬で生まれた宮原。実は生後間もなく心臓病を患ったといい、1歳の時には大手術を行った。完治したのは中学生の時で、小学校時代もプレーには大きな影響は無かったというが、両親の献身的なサポートに支えられ野球を続けることができた。
そして長崎市立小島中学時代には、長崎県選抜に選ばれ全国大会を経験する。進路選択の際には多くの学校から誘いを受けたが、迷うことなく海星高校を選んだといい、そこには3歳年上の兄・真弥(まなや)さんの存在があった。
「2019年に海星高校が甲子園に出場した時、兄は怪我でプレーすることが出来ませんでした。(兄の分まで)自分が甲子園でプレーするんだという思いを持って、海星高校に入学することを決めました」
兄の真弥さんは当時チームのレギュラーだったが、夏の選手権長崎大会が開幕する1週間前に突然の腰の痛みに襲われ、大会直前でスタメン落ち。チームは見事甲子園出場を掴んだが、最後は満足にプレーできずに引退となった。
甲子園に立てなかった兄の分まで。
その思いは、成長を続けるための大きな原動力にもなった。
「元々はもっと太っていて、体重は一番重い時で97キロありました。ですが地道にトレーニングを続け、特に2年生の冬では8キロくらい体重を落とすことができました。走り込みなどで体を絞り、また体幹や下半身強化などのトレーニングも多くやったことで、ボールの威力が落ちずにキレが増しました。
キツいトレーニングでも、兄の分までやるんだと思って乗り越えることができました」
中学3年時から掲げた甲子園出場まで、あと1勝と迫った。
宮原は、自分の持ち味をしっかりと出して長崎の夏を制することを誓う。
「真っ直ぐに自信があるので、相手バッターをねじ伏せる、そんなピッチングをしていきたいと思います」
第104回全国高等学校野球選手権長崎大会の決勝は、ビッグNスタジアムで10時にプレイボール。兄弟愛を成長につなげた右腕の投球に注目だ。