前田悠伍以上の速球派…享栄の149キロ左腕は1年後、高校生No.1左腕を争える存在になるか
現在の高校2年生投手は来年のドラフト候補生ということになるが、すでに「大豊作」と言われている。
その筆頭が大阪桐蔭の前田悠伍投手。まるで社会人野球投手のように、投球術が突出している。今春の近畿大会でもアベレージで140キロ台も超えるようになり、大きくパワーアップを遂げた。
その前田に強烈な対抗心を燃やし、能力的には前田以上のスピードボールを投げる「同級生投手」がいる。それが享栄(愛知)の東松 快征投手だ。
速球、変化球の精度も大きく向上

享栄・東松 快征投手(2年)
今年の春季愛知県大会2回戦(名古屋戦)で最速149キロをマーク。実際、球速では前田を超えている。
東松は5日の愛知招待試合の天理戦に先発すると、5回1失点、5奪三振と好投して、自らの成長を証明してみせた。手元のスピードガンでは常時138キロ〜142キロで最速は145キロをマーク。勢いよく右足を上げてから強く踏み込んで、振り下ろすオーバーハンドで、直球には角度がつき、キレ型の前田の直球と違って威力は抜群だ。
変化球も非凡だ。東海中央ボーイズ時代から武器にしている110キロ台のカーブも縦変化し、その他120キロ台のチェンジアップ、115キロ前後のスライダー、130キロ前後のツーシームといずれも精度が高かった。直球だけではなく、スライダーで空振り三振を奪うシーンもあり、ただ速いだけの投手ではない。昨秋の投球とは、まるで別人に見えた。
昨年9月、享栄の雨天練習場での投球練習では、やや太めの体型から威力抜群の直球が目についた。それから約半年後、刈谷市営球場のマウンドに立つ東松は、顔も体型もシャープになっていた。東松は「そうなんです。確かに秋はぽっちゃりしていました(笑い)。トレーニングをしっかりやってきた成果が出たと思います」と胸を張る。
享栄の投手陣は体幹トレーニングを徹底的に行う。昨年、ドラフト5位でヤクルトに入団した竹山日向投手のトレーニングシーンを取材したが、機能的なトレーニングをしっかりと行っていた。投手に必要なトレーニングを継続的に行い、スピードアップを実現した。
前田はライバルだけど、リスペクトしている

享栄・東松 快征投手(2年)
竹山が在学中の時は積極的にキャッチボールをしたという。
「竹山さんの伸びのある直球に本当に憧れていて、どうすればそのストレートを投げられるのかを聞いていました」
キャッチボールでは伸びのある直球を投げることを意識した。
「球を待ち構える受け手のミットへ突き刺す。その受け手の頭上に伸びるようなストレートを投げたいと思って、ライナー性のキャッチボールを意識してきました」
また普段の投げ込みでも、同じことを意識した。冬の間でも、投げ込みを行い、多い時は250球に達した。投げる体力が備わっていった。
その結果が直球のレベルアップにつながり、コンスタントに140キロ台を投げ込むまでに成長した。
大阪桐蔭の前田ついて、意識する投手かと聞くと、
「かなり意識します。自分と比べたら断然、良い投手というのは分かっています。ゲームメイク能力、変化球の精度など尊敬する部分はたくさんあります」
それでも前田に勝てる武器はあるという。
「やはりストレートの速さ、強さという点と、緩急を使える投球は負けていないと思っています」
大藤監督は前田投手について「(前田)は超一流の野球センスを持った投手ですから、東松は全然及ばないところはあります」と現状を語りながらも、「色々未熟ながらも、149キロを出せる。馬力もありますし、来年はさらに球速を出せる可能性があります」と潜在能力の高さを評価する。
最後に意気込みを語った。
「(招待試合の天理戦で)自分の投球はできたのですが、1失点してしまい、まだ詰めの甘さがあると思います。課題を修正して、甲子園に出場して大阪桐蔭と対戦したいです」
その高い志を持ち続けたとき、1年後には、前田と高校生NO.1左腕の座を争う存在になる。
(取材:河嶋 宗一)