試合レポート

藤沢清流vs立花学園

2022.04.10

プロ注目185センチの大型左腕が攻めの投球 藤沢清流が初の4強入り決める

藤沢清流vs立花学園 | 高校野球ドットコム
藤沢清流先発・木島直哉

<春季神奈川県大会:藤沢清流4-3立花学園>◇準々決勝◇23日◇保土ヶ谷

 保土ヶ谷球場の2試合目は、藤沢清流立花学園を9回サヨナラ勝ちで下して、ベスト4進出。初となる4強入りを果たすことになったが、原動力になっているのはマウンドに登るエース・木島直哉投手(3年)の存在だろう。

 プロのスカウトも注目している185センチの大型左腕は、バランスよく1本足で立つと、傾斜を利用して真っすぐ捕手方向へ降りて打者へ向かっていく。トップを早めに作り、若干アーム気味になっているところから、着地同時に上半身を倒すようにして縦回転させて、左腕を振り下ろしていく。

 これは昔からの癖だという少し独特な投げ方だが、角度と威力のある真っすぐで、立花学園の各打者の懐を何度も突き、バットから鈍い音とともに力のない打球を打ち上げさせた。気持ちもぶつけるような強気な投球が木島の好投を支えた。

 この投球について指揮官の榎本監督も「冬場にかなり練習をしてきました」とオフシーズンにかけて磨いてきたところだったようだ。その成果をいかんなく発揮ことになるが、すべては2021年の秋季大会が始まりだ。

 横浜隼人との4回戦で登板した木島は、この時に右打者のインコースに対するイメージが変わってきたと話す。

「それまでは右打者への死球は怖かったです。ですが、そこに投げ切れないようだと相手打者は自分のことを怖いと思ってくれないと感じたんです。そこからはボール球になっても構わないから、インコースを突いて、決まればいいと考えられるようになって、自分のテンポでも投げられるようになってきました」

 この感覚をより自分のものにするため、さらにはピッチングのスタミナをつけるためにも、木島は新型コロナウイルスの影響で練習に制限がある中でも、50球もしくは100球で連投を行うなど、投げ込みの中で体力強化を敢行。横浜隼人との一戦でつかんだクロスファイヤーをマスターすると同時に、自身の課題でもあった連投できる体力を身に着けてきた。

 さらにこの春、2回戦・光明相模原で7回完投。さらに4回戦・相模原弥栄でも9回完投と1人で投げ切ったことで、よりスタミナが強化されたと自己分析している。

 同じ左腕で、右打者のインコースを突く投球が光る中日・大野雄大投手(京都外大西出身)が憧れだという木島。中学3年間は愛知で過ごし、ナゴヤドームにも足を運んで観戦したことがある。準決勝で桐蔭学園を破ると、関東大会が待っている。「目の前の打者に全力で投げ込めば、結果はついてくると思います」と先を見ることなく、1人1人抑えることを誓った。準決勝の好投も期待したい。

 試合は、初回に立花学園の4番・三浦颯太内野手のタイムリーで失点したが、4回に9番・石割崇外野手(3年)の一打で同点。さらに2番・島田亮汰内野手(3年)のライトへのタイムリーで勝ち越しにも成功した。

 5回は互いに1点ずつを奪い、3対2とリードをもらった木島は打たせて取る投球を見せていたが、9回に1死一、二塁から再び4番・三浦の一打で3対3の振り出し。延長戦も考えられたが、9回裏の藤沢清流は、2死二、三塁から代打起用の樫山航陽内野手(3年)のサヨナラ打で立花学園を下した。


最新機器で成長した最速136キロ右腕 大谷翔平流の練習法で伸びる真っすぐに

藤沢清流vs立花学園 | 高校野球ドットコム
立花学園先発・福岡大海

 藤沢清流の前にサヨナラ負けを喫した立花学園。惜しくも第1シードは逃したが、夏に繋がる大会となっただろう。

 そんな立花学園でも目立ったのはエース・福岡大海投手(3年)だ。
 最速136キロとのことだが、見ていると数字以上に球が来ているようにも見えた。その理由は回転数にある。

 立花学園は精密機器・ラプソードを導入していることでも有名だが、現在は2300回転を計測し、回転効率90%前半と伸びる真っすぐの要素を兼ね備えた数字が並んでいる。

 ただ、入学時は最速120キロほどで2000回転以下、そして回転効率も80%後半と決して突出した真っすぐではなかった。しかしそういった数字が出るからこそ「明確な形で練習することができた」と目的意識をもって練習に打ち込んだ。

 なかでも力を注いだのはトレーニング。入学時は60キロにも満たなかったが、ウエイトトレーニングで現在は65キロになった。体を大きくして出力を高めると、そこからパフォーマンスに繋げるべく、メディシンボールを活用してピッチングに生かせるように筋肉をほぐした。

 さらに、回転効率を改善するべく、プライオボールを活用した練習に取り組んだ。
 エンゼルス・大谷翔平投手(花巻東出身)も使用した、重さの違うサンドボールを使うことで指先を強化。小さな積み重ねで質を高めてきたことで、現在の伸びる真っすぐにたどり着いた。

 ただ現状には満足していない。「ストレートの切れを高めつつ、球速140キロ近く出せるようにトレーニングをしていきたい」と福岡は話しており、夏までにはさらに成長した姿を見せてくれそうだ。

 他にも野手では主将でもある高校通算12本塁打の中村大翔内野手(3年)など、力のある選手が多い。最新機器を積極的に活用して注目されている立花学園だが、今年の夏は例年以上に注目してほしい。

(取材=田中 裕毅

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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