逆転勝利を呼び込んだ初ベスト4の國學院久我山のゲームプラン
下川邊 隼人
<第94回選抜高校野球大会:國學院久我山4-2星稜>◇28日◇準々決勝◇甲子園
どちらも複数投手を擁し、後半戦勝負と踏んでいた試合。勝敗の分かれ目は國學院久我山(東京)のしぶとさ、粘り強さだった。
エースの成田陸投手(3年)は、130キロ前半の速球に、切れのあるスライダー、カーブを投げ、被安打7を許しながらも、要所を締める。4回表にエラーと星稜(石川)7番・津澤泰成外野手(3年)の適時打などで2点を先制されたが、ダメージを最小限に食い止めた。
5回裏、國學院久我山は反撃を開始する。先頭打者が四球で出塁し、1死二塁から1番・齋藤 誠賢外野手(3年)の適時打で1点を返す。ここで初安打を浴びた星稜先発の武内 涼太投手(2年)は降板した。
エースのマーガード真偉輝 キアン投手(3年)が登板。しかし2死から投手・マーガードの送球が後ろにそれる。ただこの後、星稜野手陣のカバーリングが遅れてしまった。二塁走者が生還し、同点に追いつく。さらに極めつけは4番・下川邊 隼人内野手(3年)が打った瞬間、本塁打と確信した2ランホームランで勝ち越しした。
國學院久我山は前半、押されている感もありながらも粘り強く戦えていたのは、試合前からのゲームプランにあった。尾崎直輝監督は振り返る。
「綺麗に打とうとせずに、詰まってもいいと。打席にいろんな球が来ていましたが、自分の狙った球を絞って結果を恐れずに行ってほしいと。ただ先発の武内くんは思った以上に球威と切れがあったんで、力負けしている感じがありましたが、粘り強く繋がって野球をやってくれました」
そして前半は思い切り戦って、後半に生かすことを選手たちに語りかけた。
「まず3回を思い切って戦い抜こう。そのなかで相手打者と対戦して感じたことをやり取りして、2巡目に入ろうと。3回で自分たちの思い切ったプレーをして、思い通りいかないことは多かったですが、一歩踏み出すことが大事なので、失敗を恐れずにやってくれたから中盤で捕まえられたと思います。四球でランナーが出ていたとはいえ、安打はなかったですが、気にしていないです。良い投手で簡単には打てないので、そこでどう戦うかが私たちですから」
初安打出たのは5回だったが、その5回で、逆転に成功した。継投リレーで踏ん張った成田陸投手(3年)、渡辺 建伸投手(3年)、松本 慎之介投手(3年)の3投手についても労った。
「継投に関しては、3人をどうつなぐかと思っていたし、それぞれが甲子園で調子がいいのでどう組み合わせるか。渡辺も変わってすぐにあの投球、松本もどんな状況でも準備したので頼もしいです。
順番は、調子のいいところから。成田は緊張していましたけど、立て直してくれました。
星稜は打線が素晴らしく、対応されていた。引っ張ってどこまで行けるかなと思いましたが、2点取られてからでも、守備と協力して無失点だったので良かったと思います。
追いついたら継投したいと思ったので、渡辺の調子が良かったのでスパッとですね。
昨日からずっと渡辺は良かった。成田の後に行くぞと伝えて吹っ切れていたので、第2先発くらいで準備してほしいといったので、すぐに決めました。
松本には悪かったんですが、判断が遅れてしまったので。苦しかったと思いますが、賢い投手なので、4ー2のスコアを理解して対戦できた。人間的な部分を評価して、行かせたいと思って腹くくりました」
ここまで堂々の戦いを見せ、初のベスト4入りを見せた國學院久我山。
尾崎監督はここまでの戦いぶりについて選手たちのクレバーさを称える。
「昨秋の都大会から始まって、あらゆる戦いをしてきた。冬にも『いろんな戦いをしたから、糧にして甲子園で戦おう』と言ってきた。本当に柔軟に対応するので頭が賢い。いい経験をさせてもらっている」
これまで國學院久我山が練習で培ってきた実力、思考力を存分に甲子園で発揮している。次は大阪桐蔭と対戦する。國學院久我山がさらに発展するためにはこれ以上ない相手である。
(記事:河嶋 宗一)