11月に入り、新庄 剛志新監督の話題でもちきりだ。「ビッグボス」発言の新監督就任記者会見、SNSの発信、キャンプでの一挙手一投足がニュースとなり、改めて新庄新監督の人気の高さが伺える。
新庄新監督は現役時代、超一級品の脚力、肩、長打力と三拍子揃った選手だった。経歴を簡単に振り返る。
・西日本短大附出身
1989年 ドラフト5位で阪神タイガースに入団
1992年 11本塁打を放ちブレイク
2000年 28本塁打、85打点、打率.278とNPBキャリアハイ(打率はタイ)の成績を残す
2001年 MLB・ニューヨークメッツへ移籍
日本人初の4番を経験
2002年 サンフランシスコ・ジャイアンツへ移籍 初のワールドシリーズ出場
2003年 ニューヨーク・メッツに復帰 退団
2004年 日本球界復帰 北海道日本ハムに入団
オールスター初のホームスチールに成功
2006年 現役引退を決断
北海道日本ハムファイターズを日本一に導く
新庄新監督とともに22年から北海道日本ハムのユニフォームに袖を通す選手たちは、支配下9名・育成枠4名合わせて13名となる。
北海道日本ハムファイターズの指名選手について紹介しつつ、総括をしていきたい。
1位の達 孝太の魅力はなんといっても、194センチの長身でありながら、完成度の高い投球ができる大型右腕であることだ。
達投手は1年秋の近畿大会決勝戦で、大阪桐蔭相手に終盤まで好投を演じたことで注目を浴びるようになった。2年秋は、ほぼ完投勝利を収め、近畿大会ベスト8進出に貢献。センバツでは、140キロ後半の速球、120キロ後半のフォークを武器に、初戦から宮崎商、健大高崎と2試合連続完投。仙台育英戦も先発8回を投げ、全国レベルの打線相手に3勝して、評価を上げた。
最後の夏は奈良県大会準決勝で敗退したものの、将来性は抜群。北海道日本ハムの先発ローテーション候補として期待がかかる。北海道日本ハムには上沢 直之以外、高卒で安定して実績を残している先発投手はいない。新球場がスタートする23年以降には、達が先発ローテーション入りして、イニングを重ねることを期待したい。
2位の有薗 直輝は今年の指名された高校生ではトップとなる高校通算70本塁打を記録。185センチ97キロと大学生にも負けていない体格をした選手であり、打撃技術も春から改善する姿勢が見えた。
さらに三塁守備も軽快で、最速148キロの速球を投げ込む強肩も魅力的だ。今年の高校生ではトップクラスの才能、パワーがあり、今季、開花の兆しが見える野村 佑希、万波 中正と比較してもコンタクト力、守備力は大きく負けていない。丁寧な野球をする選手で、新体制の方針にマッチした選手ではないだろうか。1年目からファームで多くの試合出場機会を積んでいくことが期待される。
3位の水野 達稀は、丸亀城西時代から評判の内野手で、上背はなくてもパンチ力があり、打撃技術、守備技術、スピードをJR四国の社会人3年間で着実にレベルアップさせてきた。高卒選手が多い今年のドラフト指名選手の中では即戦力として期待され、中堅層を刺激させる選手にもなれそうだ。
4位の阪口 樂(さかぐち・うた=岐阜第一)は、2年夏の帝京大可児戦で特大本塁打を放って話題となった。最後の1年は打撃面でやや伸び悩みが見えたが、[stadium]岐阜第一グラウンド[/stadium]に足を運んだ時、シート打撃で放った衝撃のバックスクリーン弾は未だに忘れられない。フリー打撃でも力感のないスイングで鋭い打球を飛ばしていた。
左打者のレベルアップが急務でもある北海道日本ハムは、稲葉 篤紀GMも現場指導にも携わる方針。当たった時のリターンは大きい選手。大化けが期待できる。
5位以下の選手たちも、例年ならば、もっと上位で指名されてもおかしくない投手ばかりだ。
5位の畔柳 亨丞は、中学時代にU-15代表経験のある本格派右腕。中京大中京のエースとして臨んだ今年のセンバツでは、平均球速140キロ超えの速球を武器に2完封を成し遂げ、チームを4強に導いた。
6月の練習試合では最速152キロまで伸びたが、フォームを崩してしまい、最後の夏は150キロを出しながらも調子は最悪だった。現在はフォームの修正をしながら、レベルアップに励んでいる。馬力のある投手なので、ファームでも登板のチャンスが与えられるのではないか。
畔柳の指名で、同じ中背タイプの速球派投手は尻に火がついた状態。先輩との競争を勝ち抜き、リリーバータイプとしての活躍を期待したい。
6位の長谷川 威展(はせがわ・たけひろ)は、花咲徳栄時代はベンチ外だった。しかし金沢学院大の4年間で大きく成長した。左サイドから140キロ台の直球と、切れ味抜群のスライダーで翻弄する投球が持ち味で、左の中継ぎとして在籍投手との激しい競争を演じることになりそうだ。
7位の松浦 慶斗(大阪桐蔭)は最速150キロの速球と、スライダー、チェンジアップのコンビネーションで勝負するパワーピッチャーで、ポテンシャル自体はドラフト上位クラス。最後の夏は、剛速球こそ復活の兆しが見えたものの、コンビネーションのいい投球ができないまま夏を終えてしまった。
評価はやや下がり目となったが、これまで北海道日本ハムが指名してきた高卒左腕投手ではポテンシャルは上位に入るだけに、高卒3、4年目には一軍定着を狙っていきたい。
8位の北山 亘基(京都成章-京都産業大)は、この順位に残っていたのか?と思わせる好投手。関西六大学でも着実に実績を残し、完成度の高いフォームから繰り出す140キロ後半の速球と、変化球の精度の高さはドラフト上位クラスとひけをとらない。コンディションが整えば、競争に入っていける投手になる。
9位の上川畑 大悟(NTT東日本)は倉敷商時代から評判だった遊撃手。日本大時代は中日の京田 陽太と二遊間を組み、2016年の明治神宮大会に出場した。守備力は今でも北海道日本ハムの内野陣の中でも上位レベルに入る。バットコントロールもよく、内野手の競争が激しくなりそうだ。
育成選手もポテンシャルが高い選手の指名となった。
育成枠1位の福島 蓮(八戸西)は長身から角度のある速球と、鋭い変化球を武器とする大型右腕。センバツでは思うような投球ができなかったが、夏、そして夏以降も着実に進化している。
育成枠2位の速水 隆成(BC群馬)は、ようやくNPBの扉を切り開いた選手。桐生第一時代から評判の強打者だったが、BCリーグの群馬ダイヤモンドペガサス入りして以降、体重が20キロ以上増え、日本人離れした体格に成長した。
詰まってもスタンドインできるパワーは圧巻で、BCリーグでは、4年連続二桁本塁打、打率3割を達成している。来年で25歳と年齢的に後がないだけに、生き残るには1年目からファームで圧巻の打撃成績を残したいところだ。
育成枠3位の柳川 大晟(九州国際大附)は長身から繰り出す140キロ中盤の速球と、鋭く曲がるスライダー、フォークを投げ込む大型右腕だ。春季九州大会でのスカウト注目度はドラフト上位クラス。
夏で不調だったのが評価を下げる要因になったものの、ポテンシャル的には支配下になってもおかしくない。フォーム技術、体力などすべてが成熟すると、1位の達投手に引けを取らない投手になってもおかしくない。
育成枠4位の阿部 和広(平塚学園)は、入団テストでトップクラスの俊足アピールに成功し、プロの扉を切り開いた。
以上となる。
こうしてみると、既存選手とタイプが似た選手が多く、競争を促す方針ではないだろうか。特に高卒選手のポテンシャルの高さは12球団随一で、新体制のもとで多くの選手が花開き、黄金時代を築くことを願いたい。
うまくいけば、リターンが大きい黄金ドラフトとなる可能性がある。
(記事:河嶋 宗一)
花咲徳栄時代はベンチ外だったが、金沢学院大でメキメキと成長し、147キロ左腕へ成長。
最速153キロの力強いストレートと決め球のスプリットが得意球。110キロ台のカーブで緩急を上手く使うこともできる。プロでは先発、リリーフのどちらでも活躍が期待できそうだ。
守備力は今でも北海道日本ハムの内野陣の中でも上位レベルに入り、バットコントロールも優れている。
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