明徳義塾、実質「代木抜き」で高知に延長13回競り勝つ!
明徳義塾の先発・吉村優聖歩(左投左打・179センチ72キロ・熊本中央ボーイズ出身)
この試合、センバツで仙台育英(宮城)相手に1失点の奮闘を演じた明徳義塾の絶対エース・最速140キロ左腕の代木 大和(3年・左投左打・184センチ85キロ・川之江ボーイズ<愛媛>出身)の出番は数分のみ。ただ、職場はマウンドでなく12回表二死二塁からの代打。しかも申告敬遠でバットは一度も振らずに終わった。延長戦ではブルペンに入るなど代木自身の体調には問題はないものの、ことこの試合に限っての明徳義塾は実質「代木抜き」で戦ったと言ってよい。
それでも明徳義塾はフルメンバーで臨んだ高知相手に延長13回・タイブレークを制した。その第一要因は馬淵 史郎監督が「下級生の投手たちがよく頑張った」と評した2年生2投手である。
「監督さんから『腰が横回転なので腕の位置を下げてみろ』と言われて2月にサイドスローに変えた」先発左腕・吉村優聖歩(左投左打・179センチ72キロ・熊本中央ボーイズ<熊本>出身)は、球速こそベストに6キロ届かない最速129キロながら、エジプト人の父を持つ身体能力を活かした右打者内角へのクロスボールと、スライダー・スラ―ブ・スクリュー系チェンジアップを駆使し、9回3分の2・120球を投げて4安打・9奪三振・3四死球。失点も5回裏二死一塁から高知9番・田野岡 脩人(3年・遊撃手・右投左打・175センチ64キロ・高知市立潮江中出身)に右翼線適時二塁打を喫した1点のみに封じる。また、吉村を継いだ右サイド・矢野 勢也(右投右打・180センチ72キロ・球道ベースボールクラブ<フレッシュ・福岡>出身)も自己最速を更新する138キロストレートに、130キロのカットボールなどで要所を無失点で締めた。
一方、仙台育英戦で1安打に終わった打線にもテコ入れがなされた。スタメン4番には両親が剣道の日本チャンピオンを戴冠しているサラブレッド1年生・寺地 隆成(三塁手・右投左打・178センチ75キロ・明徳義塾中卒・城東ボーイズ<東京>出身)を起用。中学3年秋から明徳義塾中に転校する覚悟を持って臨んだ自身の結果は3打席2三振1死球1失策1走塁死とほろ苦い結果に終わったが、大抜擢は他選手にも大きな刺激を与えることになる。
7回途中から登板した高知・森木大智
センバツではスタメンを奪われた1番・池邉由伸(2年・二塁手・右投左打・170センチ62キロ・佐賀ヤング藤本ベースボールクラブ<佐賀>出身)は7回表同点適時打。同じくセンバツでは出番なしに終わった8番・井上航輝(2年・中堅手・右投右打・167センチ60キロ・河南リトルシニア<大阪>出身)は、一塁駆け抜け4秒12の脚力を活かした全力疾走で失策を誘い同点ホームイン。バント安打も記録し13回裏にはタイブレーク無死一・ 二塁から自らの前に飛んだ打球にあえて飛び込まず。前に落とした打球を素早くつかみ、冷静に三塁封殺して逆転サヨナラ負けのピンチを救っている。
そしてセンバツでは1番で4打数無安打に終わり、この試合では7番に打順を下げた山蔭一颯(3年・右翼手・右投左打・174センチ70キロ・東岡山ボーイズ<岡山>出身)は7回裏二死から3番手で登板した最速152キロ右腕・森木大智(3年・右投右打・184センチ87キロ・高知中出身)から2安打を放つと、13回表一死二・三塁からは前2打席同様に「まだ力むとボールが荒れる」森木の特性を逆利用し左翼へ逆らわず決勝左犠邪飛。最大のライバル・高知にインパクトを与えることに成功した。
試合後は「もう一度、高知とは決勝で戦いたい」と四国大会での再戦を誓った馬淵監督。実質「代木抜き」で全国レベルといってよい相手に競り勝ち、「代木込み」で秋春四国頂点を戴冠した先に明徳義塾が見据えるものは・・・。
夏の甲子園出場のみならず、練習からよりレベルの高い相手を想定できなかった自分たちの甘さをえぐりだされた「センバツの恥辱」を張らずことである。
(文=寺下 友徳)