「昔に比べると部員があまり集まらないというのはよく聞いています」
1メートル近く雪が積もるなど豪雪地帯として知られるが、この冬は例年以上に寒さが増した富山県。県庁所在地・富山市は標高3000メートルを超える雄山をはじめとした立山連峰に、日本海と豊かな自然に囲まれた場所になっている。
そんな自然豊かな富山市に学校を構え、先日の大雪のときは、「学校が休校にせざるを得なかった」という富山南は、卒業生にアニメーション映画で監督を務める細田守氏がいる。創立40年を超える学校の野球部は2学年マネジャー含め14名で活動している。
全国の学校をみても人数は少ない富山南。それは前川部長も感じているところだ。
「伊藤監督からは『(人数が)集まらない』というお話をしているのを聞きます」
今年度より富山南に赴任した前川部長は以前から審判などで、野球に携わっていたが「(野球人口は)年々減っている感覚はあります」と過疎化とともに野球人口の低下を肌で実感している。実際に周りの状況を見ても、「県立校だと1学年でチームを組むのは難しい」というのが富山市内の現実だ。
富山南の場合は推薦で部員を集めることはできず、あくまで入試を合格して、野球部に進んできた選手だけでチームを作っているところ。同じ県立校でも推薦制度があるところや、複数のコースがある学校と比較してしまうと、富山南はどうしても人数が集まりにくいのが現状である。
限られた人数で県大会ベスト4を目指して日々奮闘しているが、学校から10キロほど離れた場所には富山北部がある。富山北部といえば、水橋との連合で富山県大会を勝ち上がり、北信越大会では敦賀気比と対戦。試合には0対5で敗れたが、北信越地区の21世紀枠の推薦校に選出。
1月29日に発表された出場32校には選ばれず、史上初の連合チームでの甲子園とはならなかったが、身近な学校が夢舞台まであと一歩と迫ったことは大きな刺激を受けていた。
「同じ県立校で、軟式出身者が多いので、知っている選手や元チームメイトもいるようなんです。だから余計に、私立相手でも取り組み方1つなんだということを感じたと思います」(前川部長)
■富山北部との試合を経て
そんな富山北部とは、秋季大会終了後に練習試合をする機会があったそうだ。
「2、3週間前くらいからお話を聞いていて、相手は北信越大会で敦賀気比さんと良い試合をしていたので、楽しみでした」(吉井航主将)
秋はピッチャーとして活躍した寺山晴希も「自分たちの力量を測るには、良い相手だった」ということでチーム全体のモチベーションは高いまま試合に入った。ただ相手は北信越大会出場チーム。「試合のポイントをわかっていて、ここぞの集中力は高かった」と谷川英太郎は語り、富山南は粘り切れずに大量失点を許す展開となったそうだ。
「試合はコールドの展開となってしまいました。ただ細かないミスから失点でしたので、そちらは今後の課題ですが、全然歯が立たないわけではないと感じましたし、富山北部さんの取り組み方や佇まいを間近で見られただけでも収穫です」(伊藤監督)
選手たちも同意見で、「同じ県立校でも結果を残しているので、そこに近づくためにもまずは道具の整理などをしっかりやろうとなりました」と吉井主将が語れば、寺山は「総合力、組織力は富山北部の方が高かった」とコメント。
谷川は「力の差はなかったですが、最後の詰めの甘さだと思います」とライバルとの差を分析した。
この冬は大雪や新型コロナウイルスの影響で、練習時間には制限がかけられた。その中でも、出来る範囲の練習を重ね続け「1つ1つ真面目にやれていたので、どれくらい力がついたかなと楽しみです」と前川部長は語る。
目標は大会ベスト4。秋は富山北部が富山市の高校野球を熱くさせたが、今後は富山南がライバルの背中を追い続け、高校野球を盛り上げるか注目したい。そしてそれが、未来の高校球児たちに何かを与えることに繋がることを願いたい。
(文=田中 裕毅)

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