コロナ禍により、例年とは違う日常を送った2020年もまもなく終わりを迎える。プロ野球も観客動員数に制限をかけながらシーズンを過ごしたが、今秋のドラフトも例年とは違う形で開催された。
そこで中日から4位指名を受けた選手が今回紹介する倉敷工・福島 章太である。176センチ89キロの大きな体を目一杯使ったフォームからは147キロの速球に多彩な変化球が繰り出される。中日の将来を背負う左腕にここまでの道のりを語っていただいた。
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中日ドラ4の147キロ左腕の福島章太(倉敷工)の覚醒の始まりは「肘の手術」から【前編】
手術をして挑んだ最後の夏
中日から4位指名を受けた倉敷工・福島章太
5月20日に甲子園中止が決まり、チームメイトとともに甲子園の舞台に上がるチャンスを奪われた。この出来事は福島にとっても大きな影響があった。
「3年間甲子園を目指してきたので、中止が決まった瞬間は何も考えることが出来ませんでした」
その時、福島の心を支えたのは周りの方々だったという。
「誰にも八つ当たりが出来ない中で、家族は引き続きプロ野球選手になる夢を応援してくれましたし、1つ上の先輩からは『お前の目指す場所は甲子園だけじゃない』と連絡いただき力になりました。チームとしての目標は無くなりましたが、自分にはプロ野球選手になる夢があったので、それからは切り替えることが出来ました」
その後、各地で独自大会が開催されることが続々と決まり、岡山県も開催されることが決定。仲間たちとの集大成の夏に向かって、福島は調整を続け、迎えた初戦は岡山学芸館。奇しくも1年前の夏の大会で敗れた因縁の相手だ。
福島にとっては「学芸館を倒して甲子園」という言葉を胸に刻み、手術にリハビリなど乗り越えてきた。そのリベンジとなることに楽しみも感じながらマウンドに上がるが、結果は1対4で惜敗。7回まで無失点に抑える好投を見せてきたが、8回に勝ち越しを許しチームを勝利に導くことはできなかった。
この一戦を振り返り、「ベストにしようと調整はしましたが、そこまで持っていくことが出来なかった準備不足だったと思います」と反省の一言。悔しさを残したまま高校野球が終わったが、今年は違った。
8月にプロ野球合同練習会が開催されることが決まり、福島はそこに参加。2日間に分かれて開催され、初日のブルペンでは福岡ソフトバンクホークスに指名された履正社・内 星龍とともにピッチング。2日目には同期のスター選手たちを前にシート打撃に登板して結果を残した。
「甲子園に来た時は『仲間たちと一緒に来たかった』と思いましたが、レベルの高い投手から刺激をもらいました。ただ出せる実力を発揮しながら楽しんでできました」
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中日を代表する左腕へ
中日から4位指名を受けた倉敷工・福島章太
そして10月26日、福島は晴れて中日からドラフト4位指名を受けて夢であるプロ野球選手となった。「5、6位と思っていたので、想像以上に高い評価をしてもらったと思います」と少し驚きの指名となった。
ドラフト後、周りからのメッセージを受けてプロになった実感がわいてきたという福島。現在もグラウンドにきて練習するなど調整を続けているが、特に大事にしているのはキャッチボールだ。
「同じフォームで投げられるまで時間をかけてキャッチボールをしています。絶対に上半身に負担のかからないフォームにしたいので、下半身主導のフォームで投げるように意識しています」
そこで大事になるのは2つ。そのうちの1つが歩幅だ。
「自分は5.5歩です。それで反足分だけインステップです。どうしても小さいテイクバックなので、肘が上がり切るのが早くて、6歩だと連動性に欠けてしまうんです。ボールに力をきちんと伝えるためにも5.5歩にしています。それで開きを抑えるために反足だけインステップにしています」
そして歩幅とともに福島が重要視するのが体重移動だった。
「軸足にきちんと体重を乗せたいのでノーワインドですが、体重移動の時は軸足に8割、踏み出す足に2割くらいの割合で力を配分して、着地同時に地面をけるように前へ移動して体重移動をしています。その動きに合わせて、上半身がついてくるようにして、下半身主導のフォームを作っています」
来年からは念願のプロ野球選手としての第一歩を踏み出す。「全員が行ける世界ではないので、活躍するつもりです」と覚悟は十分できている。そんな福島に倉敷工の3年間について語ってもらった。
「後悔はありません。どんな時も一緒にできた仲間に感謝ですし、ここで出会えた指導者の方々には自分の誇りなので後悔はないです」
大野 雄大(京都外大西出身)に小笠原 慎之介(東海大相模出身)など左腕から様々なことを学びたいとコメントしていた福島。2度の怪我を乗り越えた男がプロの世界でどんな活躍を見せてくれるのだろうか。
(記事=田中 裕毅)