試合レポート

中京大中京vs天理

2019.11.18

中京大中京が終盤に勝負強さ示し、4本塁打の天理にサヨナラ勝ちで決勝進出

中京大中京vs天理 | 高校野球ドットコム
中京大中京 2番・中嶌 優がサヨナラ打を放つ(9回ウラ)

 すさまじい試合、激しい点の取り合いの攻防。そして最後に、中京大中京が勝負への執念を見せてサヨナラ勝ちして見る者を唸らせた。

 天理は1年生で192cmという長身投手達君、中京大中京は背番号10の左腕松島君が先発。どちらも神宮球場初登板となった。

 天理は初回、四球の下林君をおいて2番山本君の三塁打と4番山地君の中前打などで2点を先取。その裏中京大中京は4番印出君の右前タイムリー打で1点を返すという、序盤から動きのある試合展開となった。2回も天理は河西君のソロ、中京大中京は村上君の中犠飛でそれぞれ1点ずつを取り合う。

 さらに天理は3回は河西君の左前適時打、4回は下林君の二塁打と盗塁に3番瀬君の中犠飛。そして5回には再び河西君の右翼へのソロでリードを広げていく。

 その裏中京大中京は2番中嶌君の左翼線二塁打などで2点を返すが、試合の流れとしては天理だった。

 6回から中京大中京は、今大会最速投手という評価を受けているエースナンバーをつけた高橋宏斗君を投入。高橋源一郎監督としては、「このままだったら、コールドゲームになってしまいそうだし、何とか流れを変えたいと思った」ということで連投となったが高橋君に託す形になった。ところが、天理打線の勢いは衰えず、一死後山元君が右前打すると、前の試合でも一発を放ってこの日は3番に上がっていた1年生の瀬君が高橋君の速球を狙いすまして左翼席に2ラン。ここまで、天理は0のイニングがない状態で毎回得点。さすがに、中京大中京の高橋監督も、「これは流れが来ていないなと思った」と負けを覚悟しかかっていたという。ところが、ベンチの選手たちは、そんな雰囲気をおくびにも出さずに、「大丈夫だ、まだ返していけるぞ!」という雰囲気を醸し出していたという。

 7回、中京大中京は代打杉浦君の四球から1点を返して食い下がっていくが、8対5の3点差で迎えた8回、中京大中京天理達君も疲れが出てきたのか制球の乱れに乗じて連続四球で無死一二塁。ここで、さすがに天理の中村良二監督も、「今日はピンチの場面で行くぞ。そのつもりで準備しておきなさい」と伝えておいたという吉岡君を投入。しかし、中京大中京打線はその吉岡君に杉浦君が中前打して満塁とし、西村君は左直で一死後、トリッキーな2番中嶌君が左中間へ二塁打して1点差とする。こうなってくると、中京大中京にはイケイケのムードになってきて、天理としては何とかこらえなくてはいけないという守りの姿勢になってしまう。そこに、印出君の当たり損ない気味の難打が出て、これが失策を誘ってついに中京大中京が逆転した。

 8回裏の逆転劇だけに、これで勝負ありかと思われた。ところが天理もとてつもない粘りを見せる。2者連続三振で万事休すかと思われたが、あと一人というところでこの日2本塁打と大当たりの河西君が、思い切りよくスイングして、打球は右翼スタンド中段に飛び込んだ。大会記録となる1試合3本塁打だ。これで土壇場の同点劇。タイブレークに突入していく可能性が高いと思われた。

 ところが、中京大中京はさらに勝負強かった。その裏一死から、7番桑垣君が左翼へ二塁打すると、二死となってから杉浦君が四球で二死一二塁。西村君の一打が失策を誘って満塁。そして、この試合ではラッキーボーイ的存在になっていた中嶌君が、右前へはじき返してこれがサヨナラ打となった。

 スコア的には乱戦気味になったものの、どちらも今の段階で持てる力を出し尽くした試合だったといっていいであろう。天理の中村良二監督は、「4本塁打で6失策。天理らしい負け方だったと思います。今度は、天理らしい勝ち方が出来るようにしたいです」と話していた。

 自らが主将として出場した際のセンバツで決勝の相手が天理で、そこで敗れていた中京大中京の高橋源一郎監督は、「やり難い相手というイメージを持たれていたかもしれませんけれども、何とか勝てました」とまずは安堵していた。そして、8回の逆転については、「打って取ったというよりは、四球も見極められたし、諦めないで辛抱していたところに、天理さんのミスも出たのでビッグイニングになった」と振り返った。松島君に関しては、「失点しながらも、その後をこらえていたので、何とか踏ん張って欲しいと思っていた」と、5回まで引っ張った理由を話した。高橋宏斗君に関しては、「連投だったけれども、いいボールは行っていた」と評価した。

 決勝進出を果たしたことについては、「夏(愛知大会ベスト4で)負けてチームがスタートした時から、生徒たちが『神宮制覇をしよう』ということを目標に掲げていたので、その気持ちを大事にしていこうと思った」と言うが、結果として公式戦17連勝で、最初の目標まであと一つというところまで来た。

 昭和に一時代を作ったタテ襟に「CHUKYO」のユニフォームに戻して、令和時代に再び「強い中京」を全国に強くアピールしている。

(文=手束 仁

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