白樺学園vs国士舘
片山楽生

先発・新地智也(明徳義塾)
試合後、国士舘の永田昌弘監督は、「東京のチームは北海道のチームに勝てないですね」と残念そうに語った。昨年の大会も国士舘は、札幌大谷に敗れている。それだけに、北海道のチームに勝つことへの思いは強かった。しかし東京都大会が終わったのは11月10日。大会に向けての十分な切り替えができなかった面もある。
一方戸出直樹監督が「十勝から初めての神宮大会。意気込みを持っています」と語る白樺学園は、1週間前に上京、都大会の決勝戦もスタンドで観ていた。
白樺学園は片山楽生、国士舘は中西健登と、ともにエースが先発。序盤3回は得点が入らず投手戦の様相だった。特に国士舘は安打が1本もなかった。それでも4回表一死から3番・清水武蔵が国士舘の初安打となる内野安打で出塁すると、ヒット・エンド・ランで4番・黒澤孟朗が右前安打を放ち一、三塁。5番・齋藤光瑠の内野ゴロで清水が還るという、国士舘らしいそつのない攻撃で先取点を挙げた。
白樺学園その裏もすぐに反撃に出る。3番・宮浦柚基、4番・片山、5番・二ツ森学の3者連続安打でまず同点。6番・岩田拳弥も四球で満塁。8番・宍倉隆太の右前安打で逆転に成功する。それでも、後続は抑えたので、国士舘としては上々といったところだ。しかし白樺学園の下位打線は、粘り強い打撃をしたため、それでなくてもやや疲労がみえて、本来の調子ではない中西のスタミナを奪っていき、それが試合の後半に効いてくる。
国士舘は6回表に敵失で出塁した清水が、勝負強い齋藤の左前安打で還り、同点に追いつく。
勝負の分岐点となったのは7回裏の白樺学園の攻撃だった。白樺学園は代打の玉置健士郎がライトへ大きな打球を打つ。快晴の神宮球場はもともと外野手には守りにくい。しかも近年では日本青年館の高い建物の白い外壁により、余計見えづらくなっていると聞く。そうした事情もあるのか、国士舘の右翼手がこれを落球。国士舘の中西は前の回までに113球投げており、球威が落ちているところに、このミスが痛かった。
1番・川波瑛平の死球に2番・細谷脩有の三振で一死一、二塁。3番の宮浦を迎え、国士舘の右翼手はかなり前よりの守備位置につく。
「あそこは私の指示。次の1点を取られたら、負けと踏んでいました」と国士舘の永田監督は語る。しかし宮浦の打球は前進守備の右翼手の頭上を越えていく三塁打となり2人が生還。白樺学園が待望のリードを奪った。
9回表国士舘は5番・齋藤が三塁打を放ち1点を入れて追い上げたが、反撃及ばず4-3で白樺学園が競り勝った。
白樺学園としても苦しんだ試合であったが、片山の投球については、
「神宮球場の雰囲気の中でしっかり投げられたので100点満点です」と語った。硬さもあったものの、粘りをみせての勝利に手ごたえを感じたようだ。
逆に国士舘はエース・中西が白樺学園の粘りに、都大会の疲労も重なり、本来の投球ができなくなっていった。また本来中軸を打つべき主将の鎌田州真が打順を7番に下げても当たりが出ない。
「キャプテン病だと思います。これからの野球人生を考えると、たくましくなってほしい」と永田監督は語る。主将の責任の重さを感じて調子を落とす選手がいる。鎌田もその1人なのかもしれないが、実力のある選手だけに、どう乗り越えるかが、国士舘にとっても重要である。
(文=大島 裕史)