Match Report

高陽東vs近大福山

2019.09.30

高陽東が近大福山に快勝!

高陽東vs近大福山 | 高校野球ドットコム
スリークォーターで近大福山打線を抑えた高陽東エース石本

 28日の秋季広島県高等学校野球大会。呉二河球場での第二試合は、高陽東近大福山だ。高陽東は過去複数回の甲子園出場経験を持ち、現在の監督は元広島商の選手として甲子園の土を踏んだ沖元茂雄氏である。県立広島工の監督時代は宇佐美塁大などの大型選手を擁して甲子園にも出場している。

 打撃強化に一定の実績のある監督で、今年の夏は4回戦で好投手を擁する広島新庄から10点を奪い取る等、破壊力のある打線をもっているのを実証する乱打戦を見せつけた。対する近大福山は県下では中堅クラスの私立校。どちらが勝ってもおかしくない試合だ。

 高陽東は初回から、チャンスを作る。三つの四死球を選び二死満塁と攻め立てるが最後の一押しがなく無得点。しかし先攻を取り、先取点をとって試合を優位に運ぼうとする意志の強さを見せつけた攻撃だった。対する近大福山は左のアンダースロー、高瀬騎一郎(2年)が先発。打撃と機動力で得点を重ねてきた高陽東に対して、スライダーとシュートを巧みに使い分け、なおかつ左打者からすれば背中から来るようなリリースでタイミングを掴ませない。

 が、先制したのは高陽東だった。三回、一死から三番に入る吉田翔晴(2年)がライト線におっつけての二塁打を放つと、四番・間瀬場秋(2年)のショートゴロの間に三塁を陥れて二死三塁。左に強い高瀬に対して右の次打者・白井幹汰郎(2年)がレフト前に運んで吉田が生還。まずは高陽東が一点をモノにした。

反撃に出たい近大福山打線だが、この日マウンドに上がった高陽東のエースナンバー、サウスポーである石本純也(2年)の大きなカーブと低めに集まる速球になかなか突破口を掴ませない。石本はスリークォーターの投手。言葉だけならオーソドックスなイメージだが、右の引手をスムースに行わない変則的な投球フォーム。それに幻惑されたか近大福山打線は凡退を繰り返し五回まで苦しい展開が続いた。

 しかし高陽東もアンダースローの高瀬に手を焼く。小さく曲がるシュートと左打者からすれば、背中から外角にまで曲がるような大きなスライダーの二球種で高陽東打線をほんろう。特に左打者は全く手も足も出ないありさまだった。その空気を換えたのが四番の間瀬場だった。五回表二死無塁で左打席に立った間瀬場は初球を強振、引っ張った打球はやや根っこに当たった打球だったがこれが案外と伸び、ライトスタンドまで届く本塁打となった。これで2対0と有利な展開で五回までを終えた。

 グランド整備が終わって六回裏、今度は近大福山が反撃に出る。高陽東はここまで好投の石本が六回表に代打を出されて引っ込んでおりマウンドに上がっていたのは二番手の橋岡秀将(2年)。これがしゃんとしない。一死はとったが近大福山・四番の渡邉岳斗(2年)にヒットを打たれる。その後二死までは行ったがまだヨタヨタと頼りない投球をし、六番の大西賢作(2年)に四球を与えて二死一、二塁。リードをしているがそれでも緊張していたのだろう。七番の舘原祐明に初球を痛打され二塁打を許してしまい、走者一掃。一気に同点まで追いつかれてしまう。

 強打で鳴らす高陽東がここまで二点に抑えられ、うっぷんがたまり始めていたのだろう。そのストレスを解消させるときがついに来た。八回に一死から白井が二塁打を放つと、ここまで三打数無安打とまるでいいとこなしの信重流輝(2年)がセカンドへの内野安打で出塁し一死一、三塁。ここで打席に立つのは六番の田川航多(2年)。二回にはアウトになったものの果敢な本塁突入を見せ、この試合では二本の二塁打を放つなど期待できる打者だ。その田川がきっちりとセンターにフライを挙げ、三塁ランナーの白井が生還して3対2とリードする。

 九回表、近大福山はここまで好投の高瀬を降ろし、矢城一輝(2年)をマウンドに上げるがこれがひとつのきっかけだった。矢城は素直な本格派であり高陽東との相性は最悪に悪かった。一死から一番の多川悠太(2年)が四球で出ると次打者の主将宮本奏(2年)がセカンドへの内野安打。その後、吉田、間瀬場が単打でつなぎ、最後は扇の要の白井がセンターを超える三塁打を放ってこの回一挙四点を挙げ、試合を決めた。

 変則投手の投げ合いというめったにない試合だったが一発勝負の高校野球はこうした存在に手を焼く物輝くものである。まだ始まったばかりの新チーム。両チームとも自身のチームにある財産がどのようなものかを吟味していけば、よりよくなるに違いない。

(取材・写真=編集部

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