2019年2月、神奈川県藤沢市に新たな中学野球チームが誕生した。そのチームが、ヤングROOTS(ヤングルーツ)だ。
元プロ野球選手の養父鐵氏が代表を務めるヤングROOTSは、何と元々はルーツ・ベースボールアカデミーという名の野球塾であったが、中学野球のチームとしてやって欲しいといった要望を多く受けて、今回チーム設立に至った。
今回は、代表の養父氏の経歴を踏まえながら、ヤングROOTS設立までの経緯、そしてチームの方針について語っていただいた。
波乱万丈の選手人生から得た経験を次の世代の選手たちに
ルーツの練習場
「野球を辞めた後は。不動産業をやっていました。不動産業も奥が深かったのですが、やっぱり自分でなければできないことやりたいと思うようになり、これまで経験を活かして野球のアカデミーやチームを作っていこうと思いました」
そう語るのは、ヤングROOTS代表の養父鐵氏だ。
2010年に野球塾である、ルーツ・ベースボールアカデミーを設立した養父氏の「ルーツ」は、波乱万丈に満ちている。
亜細亜大学を卒業、プロ入りを目指して日産自動車に入社した養父氏だが、NPBのドラフト指名が叶わずに台湾リーグのチームへと飛び込んだ。
台湾リーグでは、月間MVP3回、台湾シリーズMVPなど、各賞を総なめにして、1年後には念願のNPB球団の福岡ダイエーホークスへ入団を果たす。
だが腰を痛めた影響もあり、わずか1年で戦力外通告を受けてダイエーを退団。
それでも養父氏は選手としての活躍を諦めきれずに、メジャーリーグの舞台を目指して渡米。シカゴホワイトソックス3Aに入団するも、海外の地で悪戦苦闘を重ね、その後はベネズエラやメキシコなど世界5か国でプレーした。
ROOTSの指導者陣、左が代表の養父鐵氏
養父氏は、当時の心境を次のように振り返る。
「まだやれると思っていて、自信もあったので、不安も特にありませんでした。結果を出さなければクビになるので、その場その場でしっかり結果を残すことだけを考えていましたね」
引退後、不動産業を経てルーツ・ベースボールアカデミーを立ち上げた養父氏であるが、この「ルーツ」の名前には、養父氏ならではの思いが込められている。
「日本、アメリカ、台湾、メキシコ、ベネズエラでの野球のルーツをたどってきて、感じたことを子供たちに話して、成長に少しでもプラスになる事があれば思い、この名前にしました」
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練習メニューはトレーナーと相談して基礎体力のトレーニングが中心
トレーニングを行うヤングROOTSの選手たち
そんな養父氏の指導方針は、ルーツ・ベースボールアカデミーから一貫している。選手の体の成長を最優先に考え、体づくりや体力作りを目的としたメニューを組んでいることだ。
また、そのメニューも全て、チーム専属のトレーナーと相談した上で考えられたもので、選手たちを怪我から守り、将来への基礎を作り上げる体制が整っているのだ。
「やりすぎは駄目ですが、ある程度の基礎体力がないと怪我をしますし、体の成長も人によって変わってきます。できること、できないことの、見極めをして、体の準備ができてきてから投げさせていきたいと思っています」
専属のトレーナー置いているのも、体のことは体のスペシャリストに聞くべきだという養父氏の考えからだ。中学生くらいの年齢だと技術に走りがちになるが、そこにストップをかけて、体の基礎があっての技術であることをしっかりと伝えていく役割をトレーナーが担っているのだ。
ROOTSの選手たち
「僕もプロ野球を経験してるので、見れば少しは分かりますが、やっぱりトレーナーの方が確実に伝えてもらえるなと思うので、そこは分業制にしています」
養父氏の指導方法は、OBからもとても好評だ。ルーツ・ベースボールアカデミーのOBで、今春から神奈川県内の強豪校へ進学した選手に話を伺うと、ルーツ・ベースボールアカデミーで鍛えた基礎が、高校野球でのスタートダッシュに繋がったと語った。
「高校の練習は、まずトレーニングや基礎的技術練習から始まるのですが、基礎はここで作ってもらっていたので、ルーツででやったことが活かせているなと感じています。
ここでは、一人ひとり丁寧に教えてくれますし、悪いところはすぐ気づいて教えてくれるので、自分のレベルアップとしてはすごくいいところだと思います。機会があれば、まず見に来て欲しいなと思います」
(取材・栗崎 祐太朗)