昨今、自分のお気に入りのグラブに、好きな言葉を刺繍でいれて愛用するプレーヤーが増えてきました。グラブの刺繍の言葉には、選手一人ひとりどんな思いがあるのでしょうか?今回は「コトダマ」企画の特別編として、球児たちのグラブの刺繍にまつわるエピソードを取材しました。
第4回は48年ぶり2回目の出場を果たしたセンバツに続き、愛媛大会第1シードとして悲願の夏甲子園初出場を狙う帝京第五。今回は主力の5選手に練習用グラブ・試合用グラブをお持ち頂き、刺繍に託した想いをお聞きしました。
帝京第五の主力選手「グラブ刺繍」に託した想い
宮下 勝利(3年主将・遊撃手)
試合用グラブ「キセキ 勝利」
練習用グラブ「TEIKYO Katsutoshi」
「試合用グラブは今年作りました。『勝利』は自分の名前ですが、『キセキ』は小学校(大阪・東淀川ファイトキングス)の時、監督さんの車で試合に行く時に聞かされていたGReeeeNさんの歌のタイトルから、この歌を聴いているときは負けていなかったので入れました。練習用グラブに刺繍を入れたのは1年生の冬。学校を背負う思いからです。
試合用グラブにあえてカタカナで『キセキ』と入れたのいは『奇跡』や『軌跡』を試合で発揮したいから。1番から9番まで切れ目のない打線を武器に、一戦一戦必死に戦って甲子園に出て、甲子園で勝てるように頑張りたいです」
篠崎 康(3年・捕手)
試合用・練習用グラブともに「篠崎 康」
「僕はグラブに言葉を入れるのは好きではないんです。ただ、名前を入れることは自分のグラブという意識を持つためには必要だと思いますし、その名前に自分の想いを込めていると考えています。
春はセンバツでも四国大会でも思うような活躍ができなかったので、課題を克服し最大のパフォーマンスをしたいです」
小西 隆斗(3年・三塁手)
「感謝 小西隆斗」
「自分は自宅からの通学組なので、毎日送り迎えをしてもらっている親をはじめ、最後の夏へ向けていろいろな方への感謝を込めて最近入れました。思春期には親とのケンカが多くて感謝の想いを忘れていましたし、感謝の想いを持てばプレーも変わってくると思います。第1シードですが、見極めをしっかりする自分たちの野球をして昨秋県準優勝に終わったリベンジをしたいです」
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「想い」に加え「試合状況」を考えた刺繍も
藤井 清光(3年・中堅手)
「親孝行 Kiyomitsu」
「いつも僕は親に迷惑ばかりかけているので、野球で少しでも活躍して親孝行したいと思って、今年に入ってから刺繍を入れました。守りに行く前に見て、付けていくことがルーティンになっています。
それまでは今、練習用グラブで使っている1学年上の木村 仁さんから頂いたグラブを試合で使っていました。ここにはあえて刺繍を入れず、先輩の想いを引き継ぐ気持ちを持って使っています。
刺繍を見ると家族や応援して頂いている皆さんの想いを改めて感じるし、頑張らないといけないと思います。センバツでは悔いが残る試合をしてしまったので、最後の夏は悔いのない試合をして、高校野球生活を終えたいです」
佐藤 蒼介(3年・投手兼右翼手)
野手用試合グラブ「Don’t Think. Feel 佐藤蒼介」
投手用試合グラブ「冷静沈着 佐藤蒼介」
「センバツが決まった後に2つとも刺繍を入れました。野手用は日本語にすると『考えるな 感じろ』。考えて動いてもいいプレーはできない。守備位置も含めて状況を感じて動くことがいいプレーにつながると思ってこの言葉を入れています。
投手用の『冷静沈着』は自分は試合中にかッカしてしまう傾向があったので、(小林 昭則)監督さんからもアドバイスを頂いて、この言葉を入れました。刺繍を入れることで自分のグラブという意識も出るし、自分の欠点も見直せると思っています。夏はもう一度甲子園に行って、センバツのリベンジをしたいです」
それぞれの想いをグラブの刺繍に込め、その想いを凝縮して、過去の先輩たちが涙を呑んできた夏の初戴冠。そして春夏連続甲子園出場と「愛顔つなぐえひめ国体」初出場へ。帝京第五は7月17日(月・祝)・坊っちゃんスタジアムでその第一歩を記す。
