3月6日に開幕している第4回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)特別企画として、野球レポーター・豊島 わかなさん(元グラゼニ女子)が、「世界」をテーマに各国のエージェントやNPB・独立リーグのフロントなどに直撃インタビュー!
侍ジャパン日本代表はいよいよ準決勝でアメリカと対戦しますが、そのアメリカと二次ラウンドを戦い、惜しくも決勝トーナメント進出できなかったドミニカ共和国。今回は、2013年、第3回WBCで世界を制したドミニカ共和国の野球事情を徹底解剖。日本でドミニカのエージェントとして活躍するエドウィン・ドミンゲスさんに直撃取材しました。
エージェントの仕事はハードだけど、とてもやりがいのある仕事
豊島わかな(以下、豊):はじめまして、豊島 わかなです!よろしくお願いします!
エドウィンさん(以下、エ):よろしくお願いします。
豊:はじめに、エドウィンさんはなぜエージェントの仕事を始められたのですか?
エ:私自身ずっと野球ファンだったことが第一の理由です。きっかけになったのは、以前お世話になっていたトレーナーさんが、私の故郷で野球のアカデミーを始めるということで連絡をとってきてくれたことですね。
豊:なるほど!エドウィンさんはいつから野球をやられていたのですか?
エ:私は小さいころから大学までプレーしていました。
豊:選手としてプレーしていたんですね! エージェントを始めた時期を詳しく教えてください。
エ:大学卒業時ですね。そのとき、野球をやめましたが、トレーナーさんから連絡があったのはそのタイミングでした。ドミニカでは野球は一大産業で、みんながたくさん野球に関われる機会を持っています。みんなデービット・オルティスやイチローのようなスーパースターを目指すのですが、才能がないと気付く時期が訪れます。私の場合は、もう野球選手にはなれないんだと悟って、今度はプロの世界でスーパースターになることを夢見るプレーヤーたちの手伝いをしようと決意しました。
豊:プレーは諦めても、また別の方法で野球に携わることができているんですね!では、そのエージェントの仕事の面白さはどういうところに感じますか?
エ:選手たちをプロの世界に送り出して、彼らが力をつけて大きな選手になっていくのを見ていくのは嬉しいですね。私の仕事で最も重要なのは選手たちを成功に導くことです。これは本当に難しいことですが、楽しくてやりがいを感じています。
豊:面白い中にも苦労話があると思うんですが、大変なことなどはありますか?
エ:一番しんどいのは、24時間休みがないことです。日本とドミニカでは13時間時差があるので、先日には朝の4時に電話がかかってきて…と言うこともありました。多くの選手がプロを志して私のところに来てくれるのですが、やはりプロの枠には限りがあったり、私の時間にも限りがあったりで、全員の手助けをするというのは厳しいという面もあります。やる気があったり、性格が良かったり、野球の才能があるのにもかかわらず、チャンスに恵まれない選手はたくさんいるので、私はそういった素質のある、人柄のいい選手たちを見極めていくことが自分の仕事の中で重要なことだと思います。
[page_break:ドミニカにとって野球は貧困に打ち勝つことができるスポーツ]
ドミニカにとって野球は貧困に打ち勝つことができるスポーツ
豊:次にWBCの話題ですが、2013年にドミニカ代表が優勝した時の国民の反応はいかがでしたか?
エ:野球は国内で最も人気なスポーツということもあって、優勝したドミニカ代表がアメリカから帰ってきたとき、空港から中心部までパレードになって、本当にお祭り騒ぎでした。
WBCといえば、前回大会でアメリカを破った時が印象的ですね。世界の大国で、野球大国でもあるアメリカに、カリブの小国のドミニカが勝ったというのは、ドミニカにとって歴史的な出来事になりました。
豊:そうなんですね。ドミニカの野球人気の高さがよくわかります!では、ドミニカの野球の強さの秘訣とはなんでしょうか?
エ:3、4歳のころから野球を始める、そういった幼少期から野球に関わっているということがまず一つです。ドミニカでは伝統的に、赤ちゃんが生まれた時には野球のバットとグラブをプレゼントするというものがあります。定番で人気な出産祝いです。野球は楽しく、そして情熱を持っているからやっているというのも当然ありますが、野球に成功することで、貧困に打ち勝つことができるということはドミニカの野球少年にとって大きなモチベーションになります。メジャーリーグなどで活躍して稼ぐと、家族や友達を助けることができますからね。
豊:その話でいうと、日本でいう部活動のように、ドミニカでは学校教育と野球はどういう関係になっているんですか。
エ:ドミニカでの野球は他と違って、学校と野球は完全に区別されたものとして扱われます。学校には部活はなく、アカデミーでみんなプレーしています。5歳から12歳までは、趣味として、同じ年齢同士で遊び感覚で野球をプレーします。他の町のチームや、国外のチームと対戦したりするのはこちらのカテゴリーではあまりないです。が、12~18歳のカテゴリーでは、子供たちはプロになるための練習を始め、仕事としてプレーすることになります。なので基本的に、12歳のタイミングで、これからプロを目指して真剣に野球をやっていくのか、それとも趣味として続けていくのかを決める大きな分岐点になります。私自身もプロを目指すカテゴリーに所属していましたが、さっきも言ったように大学でプレーはやめました。
[page_break:ドミニカ野球の醍醐味は剛速球とホームラン]
ドミニカ野球の醍醐味は剛速球とホームラン
豊:次にドミニカ代表の選出方法について教えてください。
エ:基本的にメジャーのスーパースターを中心に選びます。日本やメキシコの選手も選んでいきますが、基本的にはメジャーになりますね。前回WBCでは前中日のナニータも選ばれていました。
豊:その中でも、今大会のドミニカ代表の中心メンバーはどの選手でしたか?
エ:ロビンソン・カノです。彼は前回大会でMVPになりましたが、やはりドミニカにとって重要な選手です。また、ハンリー・ラミレスや、投手は、サンフランシスコ・ジャイアンツでプレーしている、ジョニー・クエト。ヤンキースのデリン・ベタンセスも良い選手でしたね。
豊:残念ながら、二次ラウンドでの敗退となってしまったドミニカですが、日本代表で注目している選手はいますか?
エ:ベイスターズの主砲の筒香 嘉智ですね。とても魅力的な選手ですし、ドミニカのウィンターリーグにも参加していたこともあって、注目しています。
豊:今回は連覇はならなかったドミニカですが、次の大会に向けて改めて、ドミニカ野球の面白いところはどういう部分でしょうか?
エ:豪快なホームランと、豪速球です。
豊:やっぱりドミニカならではのパワーのあるプレーが魅力ですよね!ドミニカには、どうしてそういったパワーがある選手が多いんですか?
エ:大きい野球場で広々と練習しているからというのが一つで、次に小さい頃からジムに通って、プロテインを摂取しているからです。最後の理由としては、遺伝です(笑)
時には笑いを交えながら丁寧にドミニカ共和国の野球事情を教えてくれたエドウィンさん。ありがとうございました!今大会は決勝トーナメントまで勝ち残ることはできませんでしたが、トップ以外にU18など各カテゴリで、ドミニカ共和国代表のプレーを見るのを楽しみにしています!

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