節目の年を前に歴史を感じるセンバツ選考
来年の高校野球は、春は第90回、夏は第100回という、大きな節目の年を迎える。戦前の中等野球で東京代表になったのは、今は神奈川県の慶応(当時は慶応普通部と慶応商工)と早稲田実と日大三だけであった。昨年の秋季都大会の決勝戦は、早稲田実と日大三が名勝負を繰り広げ、早稲田実が野村大樹(関連記事)のサヨナラ弾で優勝した。この両校が、秋季都大会の決勝戦で対戦するのは、今回が初めてであった。
早稲田実はこの優勝でセンバツ出場を事実上決め、関東・東京の残り1枠は、日大三か慶応かで議論になった末、日大三がセンバツ出場を決めた。戦前から甲子園に出ている3校が、センバツ出場を巡り争ったことになる。
東京は1974年の夏の第56回大会から東西2代表になった。早稲田実は2000年までは東東京に属し、東東京代表として7回甲子園の土を踏んでいる。しかし早稲田実の甲子園出場時、日大三は西東京代表になっていない。つまり今回のセンバツでは、東京の高校野球を代表する早稲田実と日大三という2つの名門校が、史上初めて揃って[stadium]甲子園[/stadium]の土を踏む。これも高校野球100年の歴史において、画期的な出来事である。
早稲田実は怪物・清宮幸太郎(関連記事)や野村大樹だけでなく、チーム全体に力を付けている。日大三は、清宮から5三振を奪った投打の柱・櫻井周斗(関連記事)、巨漢の金成麗生を軸にチーム力が高く、センバツでの戦いも十分に期待できる。今年は王 貞治投手を擁し、早稲田実が東京勢として初めてセンバツで優勝して60年、決勝戦が日大桜丘・日大三の東京対決になった第44回のセンバツから45年になる。今年の東京勢は、何かやってくれそうな気がする。
またセンバツでの成績に関係なく、夏の西東京大会での早稲田実と日大三の対決は、全国的な関心を集めるだろう。この両校は、夏はどの段階で激突するのか。夏のシード校が決まる春季都大会で、枠組みのかなりの部分が分かるはずだ。
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1次予選の注目校
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高校ラストイヤーの清宮VS打倒清宮に燃える熱い1年
過去、幾多の名選手を輩出してきた東京の高校野球であるが、怪物・清宮幸太郎の高校最後の年となる今年は、例年にない熱気を帯びている。それは、打倒早実に燃える西東京だけでなく、東東京の各校にも刺激となり、東京の高校野球全体が盛り上がっている。
まず春季都大会では、関東大会に出場する上位2校とともに、夏のシード校になるベスト16の行方が注目される。春季大会で波乱を呼ぶ要因になるかもしれないのが、秋季都大会では4強は西東京勢が独占し、8強も東東京勢は、関東一と城西大城西の2校しかないということだ。
東東京勢に力がなかったわけではない。関東一は高橋晴、石橋康太の大型バッテリーに足の速い選手を揃え、帝京は攻守の要の岡崎心を欠きながらも、二松学舎大付を破った。城西大城西には好投手・後藤茂基がおり、東海大高輪台には投打の柱になる宮路悠良に、青木海斗、伊東翼といった大型打者が揃う。そうした中、パワーと走力のある永井敦士らを擁する二松学舎大付が秋は2回戦で敗れ、春はノーシードで登場することは、各校にとって脅威である。
秋は初戦で国士舘と熱戦を繰り広げた岩倉、サイド気味から力のある球を投げる佐山智務を擁する都立文京、近藤 海勢ら好投手が多い日本ウェルネス、秋は初戦で都立城東に9回サヨナラ負けしたものの、福田 拓海、藤下凌也という好投手のいる東亜学園などの東東京勢が、春はノーシードで登場するのも、夏の東東京大会の行方を読めなくさせている。
西東京勢は、早稲田実と日大三が抜けているのは間違いないが、夏の経験者が多く残り、秋は日大三に善戦した創価、それに永田 昌弘監督の復帰により、厳しい野球をするようになった国士舘、小柄なエース・小林龍太が引っ張る都立日野という秋の4強チーム、昨年夏の西東京代表の八王子など、力のあるチームが多く、早稲田実や日大三といえども、油断は禁物である。
秋は投手陣に故障者が出ながら、8強に進出した早大学院、松本 健吾、戸田懐生、小玉佳吾ら力のある投手が揃う東海大菅生なども、暴れる力を持っている。昨年の9月は雨が多く、練習試合をほとんどできないまま秋季大会に臨んだ学校が多かった。そのため、つまらないミスで敗れたチームも少なくない。
したがって、昨年秋の結果で、今年の高校野球の展望を見通すのは難しい。むしろ、秋はさほど注目されなかった選手が、力を付けて、春から夏にかけての東京の高校野球を盛り上げることを期待したい。
(文・大島 裕史)

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