秀岳館vsいなべ総合
秀岳館、相手応援に屈せず 怒涛の集中打!

木本 凌雅(秀岳館)
秀岳館が序盤に2点入れ、いなべ総合が4回に1点返し、2対1のまま終盤に突入するという緊迫したゲームになった。秀岳館の左腕・田浦 文丸(2年)はまとまったフォームと170センチの上背のため技巧派に見えるが、ストレート主体の小気味のいいピッチングを身上とし、ストレートは最速141キロを計測。
この力の投球の前にいなべ総合は3回までパーフェクトに抑えられ、ようやく初ヒットが出たのは4回裏。エラーで出塁の1番奥村 拓希(3年)を一塁に置き、3番神田 将嗣(3年)がライトに二塁打を放って奥村が生還した。このあと4番打者に死球を与えたところで田浦を降ろして二番手、中井 雄亮(3年)をマウンドに送るのだが、こちらは上背が186センチのどちらかというと技巧色の強い左腕。この中井のストレートとチェンジアップを主体にしたピッチングの前にいなべ総合はゼロ行進を続ける。
2対1の膠着状態を打ち破ったのは秀岳館だ。8回表、2番松尾 大河(3年)がセンター前にヒット、3番がエラーで生きて、一死一、二塁から、5番天本昂佑(3年)が初球スライダーをおっつけてライト前に運び待望の中押し点が入る。
秀岳館の攻勢は9回にも続く。四球とバントで1死二塁となって1番秀岳館原田拓実(3年)が3ボールから右中間の最深部に運ぶ三塁打を放って1点、さらに2番松尾が2ボールから三塁線を抜く二塁打を放って1点を追加し、2死後、九鬼がフルカウントから左中間に二塁打を放っていなべ総合を突き放した。
この怒濤の背景には、応援に対する反発があったのではないかと思う。実は7回からいなべ総合の攻撃のとき、タオルを振る応援を三塁側アルプスはもちろん、バックネット裏の一般ファンまで一緒になってやっていた。2日前の東邦vs八戸学院光星戦で話題になった「1対100」の公開処刑のような一方的な応援風景だ。
8回の初球を打った天本のタイムリー、9回の原田、松尾のファーストストライク打ちにはそういう応援に対する「怒り」のメッセージがあったと私は思っている。
プレーに注目すると、最近の高校生の自由闊達ぶりには驚かされる。いなべ総合のキャッチャー、渡邉雄太(3年)は座ったまま二塁に送球しイニング間で1.97秒を計測、2回には九鬼の二盗を阻止しようとやはり座ったまま二塁に送球し、私の目にはアウトに見えた。それほど微妙なタイミングだった。
6回には天本のセンターへ抜けようかという打球をいなべ総合の二塁手、神田が逆シングルで追いついて、一塁に投げられないとみるとショートの守田 良真(3年)にトスして無走者の4-6-3を敢行。惜しくもアウトを取れなかったが、数年前に帝京がやって以来、久々に[stadium]甲子園[/stadium]で見るプレーで嬉しかった。
(文=小関 順二)
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