作新学院vs尽誠学園
作新では江川卓以来の剛腕が登場!その名は今井達也!

今井達也(作新学院)
まさに衝撃デビューだ。
栃木大会で最速149キロを計測。21.2回を投げて33奪三振を記録するなど、剛腕右腕として甲子園に乗り込んだ今井達也。初舞台となる[stadium]甲子園[/stadium]で高校野球ファンを驚かせる快投を見せた。
立ち上がりから147,8キロのストレートを連発し、3番山地健斗に対しては、最速149キロのストレートでどん詰まりのショートゴロに打ち取って初回を無失点に切り抜けた今井は、2回以降、力みが抜けたのか、より破壊力のあるストレートを投げ込んでくる。2回裏、左打者のひざ元に147キロのストレートが決まったストレートは思わずプロの投手を見ているかのようだった。とても細身の体型なのに、なぜここまでの球速が出るのだろうか…。そして一死一、三塁のピンチを招いて、7番渡辺悠に対し、剛速球で空振り三振に奪う。その速球はついに自己最速の150キロを計測し、さらに観客をどよめかせると、8番松原圭亮には2ストライク2ボールと追い込んでから外角いっぱいに決まるストレートは151キロを計測。さらにボールとなったが、次のストレートで、最速151キロのストレートを連発し、三振に奪った。151キロのストレートを空振り三振に打ち取るのだから、騒がれないはずがない。
観客の興味は、これからもこれに近い速球を投げ込めるか、そして三振も奪えるかに集まった。
今井は細身ながらも、綺麗な右腕の回旋。大きな胸の張り、そして打者寄りでリリースすることができるフォームの土台の良さ。誰に似ているかと考えた時、NPBで通算62勝をあげた木佐貫洋(元北海道日本ハム)投手の若い時を思い出させる。木佐貫投手も長身で、さらにバネの強さを生かし、150キロ台のストレートと落差抜群のフォークで圧倒する投手であった。
今井は、木佐貫投手のようなフォークがあるわけではないが、130キロ近い縦スライダーはストライクゾーンからボールゾーンに一気に落ちるのである。さらにブレーキが利いた110キロ台後半のカーブ、135キロ前後のカットボールもコーナーへきっちりと投げ分ける。またストレートはひざ元へしっかりと集めることができる。ただ速いだけではない実戦派の一面を見せたのであった。
今井の投球を見て思ったのは、コントロールが悪い投手でもここまで良くなること。彼の1年前はリリースも安定しない。速いけどコントロールが悪いタイプだった。こういうタイプはなかなか制球力が改善しないことが多いのだが、ここまで劇的に変わるのか…と驚きを隠せない。今井だけではなく、今年の高校生投手は我々を驚かせるような成長を見せている投手が非常に多い。改めて自分の弱みを認めて努力する大事さを実感させられる。
作新学院に150キロ台を投げる投手が現れた。投球のインパクト、投手としてのスケールの大きさ含めて、同校の大先輩である江川卓以来の剛腕が現れたといっても過言ではない。このままいくと江川二世という呼び名もくるはず。今井本人はあくまで自分自身のピッチングを追求していってほしい。
9回まで13奪三振完封。実戦派な一面を見せながらも、2回表にはファンの心を動かすような、150キロ連発。スター誕生の瞬間である。ますます注目が集まることだろう。
敗れた尽誠学園。強力な作新学院打線を3失点に抑えた渡辺悠投手はなかなか実戦的な投手だった。最速は138キロを計測するというが、この日は常時125キロ~133キロとやや抑え目。だがテークバックがコンパクトで、さらに一瞬に腕を振り出していくので、見た目以上に打ち難い。さらに良い意味で荒れていて、捕手と構えたところと逆球になることが多く、逆にそれが良かったのか、作新学院打線にしては珍しく、迷いが見えるスイングがあった。115キロ前後のスライダーもうまく手元で曲がっており、淡々と打者を打ち取ることができていた。
そして今井から初安打を記録するなど、今井の140キロ台のストレートに全く振り負けせず、力強い打撃を見せた4番松井 永吉は、楽しみな左の強打者。どっしりとした構えには雰囲気を感じさせ、トップを作ってからインパクトまでロスのないスイングができており、何より太ももの太さが素晴らしく、これがパワーの源かと思った。大学・社会人に進んでも強打者として活躍できる素質を感じさせた。
また尽誠学園は守備が手堅く、ボールの食らいつきが良い。選抜準優勝の高松商を破っているだけにあり、とても骨のあるチームだった。
(文=河嶋宗一)
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