智辯学園vs出雲
連覇を狙う智辯学園 エース・村上と2年生スラッガー・太田が個人技の高さを見せる

村上頌樹(智辯学園)
春夏連覇を狙う智辯学園が序盤に3点、中盤に1点、終盤に2点入れる理想的な展開で初戦を突破した。
まず注目したのは個人技の高さだ。3番太田 英毅(2年・二塁手)は1年生スラッガーとして注目された選抜では、バットの引きを含めた振幅の大きさがスムーズなスイングを阻害して評判ほどいいとは思わなかった。
しかしこの試合では始動とステップがゆったりして、ボールをキャッチャー寄りで捉える形ができていた。バットの引きもほとんど目立たず、力を入れるのはインパクトのときだけ。1回表は4球目の甘く高めに抜けたチェンジアップを捉えると、打球はセンターの頭を越える先制2ランとなって出雲バッテリーの度肝を抜いた。
キャッチャーの岡澤 智基(3年)は1回のイニング間にこの試合最速となる1.89秒という超高校級の二塁送球タイムを披露した。1回裏、出雲はツーアウトから3番打者が右前打で出塁すると4球目にピッチャーのけん制に誘い出され二塁で憤死しているが、岡澤の肩を見て早いスタートでなければ二塁を陥れることは不可能と思ったのではないか。岡澤が実際に二盗を阻止していないのに、その強肩にスポットライトが当たるシーンだった。ちなみに6回にも出雲は二盗を企図しているが、このときは岡澤が二塁に投げて走者を殺している。タイムは2秒ジャストで、これも超高校級と言っていい。
出雲は3回に1点取られたところで先発原 暁と一塁加藤 雅彦のポジションを交代させているが、これが智辯学園の6回の追加点につながったと思う。7番打者が四球で出塁すると、8、9、1番打者がバントを決め、8番岡澤と1番納 大地の打球が内野安打となった。この打球はいずれもプッシュして押し込んで投手と一塁の間に転がしたものだが、投手と一塁手を交代させていなければ普通のバントとして処理された可能性が高い。原のデキがそれほど悪く見えなかっただけに残念だった。
智辯学園の先発・村上 頌樹(3年)はさすがだった。リリースでしっかり押さえ込まれた最速144キロのストレートは低めに伸び、ボールの角度も素晴らしい。変化球は90キロ台のカーブ、110キロ台のスライダーとチェンジアップがあり、これをストレートと同じ腕の振りで投げられるというのが得難い長所である。3回に失点して完封こそ逃したが、ヒットが続く気配がまったくしなかった。
春夏連覇に向け順調なスタートを切ったと言っていいだろう。
(文=小関 順二)
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