試合レポート

市立船橋vs東京学館船橋

2016.07.23

快進撃を続ける市立船橋を象徴する渕上泰樹の快投

 拓大紅陵千葉黎明と実力校を破ってきた市立船橋。春は東海大市原望洋にコールド負けしているので、それだけ見ると大したことないと思ってしまうだろう。しかし[stadium]QVC[/stadium]に登場した彼らは、強者として現れたのである。

 もともと機動力はある。守備力も良い。そして打撃力もある。しかしそれが長所として出なかったのは投手力に課題があり、多く失点してしまっては勝てる試合も勝てない。しかしこの夏、課題の投手力を見事に解消させることができている。その救世主が、背番号10を付ける右腕・渕上泰樹(2年)だ。

 1回表の投球内容を見た瞬間、将来的に145キロ~150キロを投げられる逸材だと感じた。小柄だが、非常にバネ、体幹、筋力的な強さを感じる投手で、立ち上がりから常時135キロ~140キロを計測。[stadium]QVCマリン[/stadium]のガンでも、最速142キロを計測しており、これほど力のあるストレートを投げる投手がいるとは全く予想できなかった。それでいて、コントロールも良い。120キロ前後のスライダー、110キロ前後のカーブを投げ分ける。

 セットポジションから始動して、左足を高々と上げていきながら、安定した重心移動、コンパクトなテークバックから、しっかりと縦の動きで腕が振れるフォームは、社会人時代の美馬学(東京ガス-東北楽天)を思い出させる投手だ。まだ肉体的にも成長の余地を感じさせる投手で、もっと高いレベルのトレーニング、食事トレーニングを導入していって、さらにビルドアップできれば…と思わせる投手だった。


 一方、東京学館船橋の先発・日暮寛太(3年)もかなりの好投手だ。下級生時代からマウンドを踏んでいる日暮。球威ある直球を投げ込む投手として評判だが、それぐすぐに理解できる。こちらも内回りの軌道をしたテークバックから捻じることなく、スムーズにリリースに入れる実戦的なフォームで、滑らかな体重移動ができることによって、力強い速球を投げ込む土台ができている。そのため球速は、常時130キロ後半~142キロとコンスタントに140キロを計時しており、ぐっと迫るようなストレートの質は本物で、将来的には145キロ~150キロも狙える投手で、さらに125キロ前後のスライダーのコンビネーション。ただ投球がやや単調なところがあり、コーナーへきっちりと投げ分ける投手ではなく、どちらかというと力で押す投手。

 市立船橋は高めへ浮く直球を逃さず、そのため初回から二死満塁のピンチを招き、6番草野里葵(2年)が2点適時打で市立船橋が先制すると、さらに3回裏には、一死二塁となって5番高橋我空(3年)の左前安打と東京学館船橋内野手の連携ミスで1点を追加し、3対0と点差を広げたのだ。

 5回表、内野ゴロの間に1点を返されたが、7回裏には再び草野が中犠飛を放ち、4対1と点差を広げた市立船橋。渕上は、終盤になっても、130キロ後半のストレートとキレのあるスライダーをコントロール良く投げ分け、ここまで当たりに当たっている東京学館船橋打線を1失点に抑え、見事に完投勝利。ベスト4進出を決めたのだ。この日、主力打者の当たりは少なかったが、守備力、選手たちのスイングを見ていても非常に鍛えられていて、これまでとは全く別のチームになっていた。しっかりと夏へ向けて力をピークにもっていく当たり、名門校として底力を実感させてくれた。

 次は市立習志野。お互い粘り強い試合運び、総合力が高いチーム。そして習志野の小林監督はかつて市立船橋で監督を務めていただけにいろいろと縁がある。見所のある準決勝になることは間違いない。

(文=河嶋 宗一

市立船橋vs東京学館船橋 | 高校野球ドットコム
注目記事
第98回全国高等学校野球選手権大会 特設ページ

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

関連記事

応援メッセージを投稿

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

RANKING

人気記事

2024.07.26

新潟産大附が歓喜の甲子園初出場!帝京長岡・プロ注目右腕攻略に成功【2024夏の甲子園】

2024.07.27

昨夏甲子園4強・神村学園が連覇かけ鹿児島決勝に挑む!樟南は21度目の甲子園狙う【全国実力校・27日の試合予定】

2024.07.26

名将の夏終わる...春日部共栄・本多監督の最後の夏はベスト4で敗れる【2024夏の甲子園】

2024.07.26

報徳学園が3点差をひっくり返す!サヨナラ勝ちで春夏連続甲子園に王手!【2024夏の甲子園】

2024.07.26

シード3校を撃破!ダークホース・岐阜城北、昨秋優勝の岐阜第一を下して決勝へ【24年夏・岐阜大会】

2024.07.25

まさかの7回コールドで敗戦...滋賀大会6連覇を目指した近江が準決勝で涙【2024夏の甲子園】

2024.07.24

享栄、愛工大名電を破った名古屋たちばなの快進撃は準々決勝で終わる...名門・中京大中京に屈する

2024.07.21

【中国地区ベスト8以上進出校 7・20】米子松蔭が4強、岡山、島根、山口では続々と8強に名乗り、岡山の創志学園は敗退【2024夏の甲子園】

2024.07.21

愛工大名電が今夏3度目のコールド勝ちでV4に前進!長野では甲子園出場37回の名門が敗退【東海・北信越実力校20日の試合結果】

2024.07.21

名将・門馬監督率いる創志学園が3回戦で完敗…2連覇狙う履正社は快勝【近畿・中国実力校20日の試合結果】

2024.06.30

明徳義塾・馬淵監督が閉校する母校のために記念試合を企画! 明徳フルメンバーが参加「いつかは母校の指導をしてみたかった」

2024.07.08

令和の高校野球の象徴?!SJBで都立江戸川は東東京大会の上位進出を狙う

2024.06.28

元高校球児が動作解析アプリ「ForceSense」をリリース! 自分とプロ選手との比較も可能に!「データの”可視化”だけでなく”活用”を」

2024.06.27

高知・土佐高校に大型サイド右腕現る! 186cm酒井晶央が35年ぶりに名門を聖地へ導く!

2024.06.28

最下位、優勝、チーム崩壊……波乱万丈のプロ野球人生を送った阪神V戦士「野球指導者となって伝えたいこと」