高知vs鳴門
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6回裏二死から大会第1号本塁打をレフトへ放ち三塁を回る4番・和田恋(高知)
乱戦の中で輝いた高知の「一等星」と「新星」
ホームとアウェイの入れ替わりこそあれど、2年連続同カードとなった秋季四国大会決勝戦。共に準決勝に続く先発となる鳴門・板東湧梧、高知・坂本優太の両2年生右腕が安定感を欠いたこともあり、両校が先発全員出塁をマークする乱戦模様になった。
その中で昨年のリベンジを果たし6年ぶり6回目となる秋の四国王者に立ったのは先発全員安打をマークした高知。中でも「一等星」と「新星」と称すべき2名は、ひときわ眩い輝きを放っていた。
「一等星」は4番・主将の重責を担う和田恋(サード・2年)だ。準決勝は今年の選抜大会直前から取り組んだ投手として自己最速143キロをマークした彼だが、決勝では5対6・1点ビハインドの6回二死から「力みすぎず自分のスイングを心がけることを考えて」初球の浮いたカットボールを狙い通りにライナーで左中間スタンドへ。今大会第1号・自身高校通算31号の同点アーチは、非凡なセンスとパワー、加えて「(前キャプテンの)法兼(駿・3年)さんのように率先して引っ張るキャラじゃないので、プレーで引っ張ることを考えている」自らのキャプテン像を体現する一打ともいえよう。
そして「新星」は7回から今大会初マウンドに立った1年生右腕・酒井祐弥である。高知中時代は3年次に2番の土居弘洋(ショート)、6番の上田隼也(センター)らと共に「第28回全日本少年軟式野球大会」にエース・4番として出場し、同中の3年ぶり2度目の全国制覇に貢献。ブルペンでは制球が全く定まらずも、いざマウンドに立つと「だんだん落ち着いてきた」勝負度胸と、中学時代と同じく最速138キロをマークしたストレートとスライダーで押しまくり、強打鳴門打線を3回無失点に抑えきった。
それどころか同点で迎えた8回裏二死二・三塁での初打席では1ボール2ストライクと追い込まれながらも「全部対応できるようにしていた」冷静な判断力で、外角高めのカーブを中前に落とす決勝2点タイムリー。「バッティングでやってくれそうな予感があった」島田達二監督の期待に応える殊勲打は、同時に「気持ちがつながっていた」今大会の高知野球を象徴するプレーでもあった。
こうして、圧倒的な打撃力で頂点に登りつめた2006年(平成18年)第37回大会以来6年ぶり3度目となる明治神宮大会出場も果たした高知。この日も2失策の守備を踏まえ「守備の強化をして1つずつ戦っていきたい」と和田恋も語るように当時のような快進撃は望むべくもない状況ではあるものの、2つの星に追随する星たちが更なる輝きを放つことが出来れば・・・。11月10日に対戦する関東王者・浦和学院(埼玉)を安穏とさせる試合展開には、きっとならないはずだ。
(文=寺下友徳)