直前!2012年ドラフト候補特集(高校生・投手編)
直前!2012年ドラフト候補特集(高校生・投手編)2012年10月02日
2012年ドラフトもあと1カ月となった。プロに指名されるにはプロ志望届を提出しなければならない。今回は提出した投手を軸に展望を述べていきたい。
NPBか?MLBか? 揺れる大谷翔平の進路

大谷翔平(花巻東)
今年の目玉・大谷翔平の進路次第で今年のドラフト戦略は大きく変わっていくだろう。現在はNPBのみならずMLB5球団が彼にアプローチ。中でもロサンゼルス・ドジャースが熱心で、18歳の少年の心中は大きく揺れ動いていることであろう。これについては本人の意思を尊重したいと思う。日本に留まるならば、ダルビッシュのようにポスティングでメジャーに行ける実績を目指すようにレベルアップを努め、アメリカに行くのならば、相当な覚悟を持ってやっていってほしい。
彼の投球の才能、野手の才能は文句なしなのだが、気になるのは、大事な場面で力を発揮出来ないところだ。大事な試合では勝てていないことが多い。技術を崩し、投球では制球が乱れ、球速も出ず、甘く入った所を打たれ、負け試合となった投球を常に見てきた。投手として不安視する見方もあり、野手として評価する声が多い。
ただ彼と練習試合した打者に大谷の印象を聞くと皆、絶賛である。速球、変化球のキレともに別格だった。グラウンドに立った時のオーラが半端ないなど。それだけポテンシャルが高く、多くのスカウトが魅了させるような逸材であることは間違いない。彼は類まれな才能を発揮できるメンタルが課題になりそうだ。
見通しが立ちやすい藤浪晋太郎

藤浪晋太郎(大阪桐蔭)
濱田達郎、森雄大、笠原大芽の大型左腕三羽ガラス
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▲左から濱田達郎(愛工大名電)、森雄大(東福岡)、笠原大芽(福岡工大城東)
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今年は3人の大型左腕がいる。愛工大名電の濱田 達郎、東福岡の森 雄大、福岡工大城東の笠原大芽の3人だ。濱田 達郎は3投手の中で実績はNO.1。選抜ベスト8、選手権出場を果たした。実力的にはドラフト1位級。神宮大会時の投球のプラスアルファをされていれば、高卒1年目から一軍の登板が期待出来た逸材だが、フォームを崩してしまった影響で、それが難しくなった。ただ元々のポテンシャルは素晴らしいものがあるので、3,4年を見据えてじっくり育てていきたい大器。若年層左腕が薄い球団は2位以内で確保したい。
東福岡の森 雄大はスカウト内では濱田以上と評される本格派左腕。小さなテークバックから振り下ろす140キロ台のストレート、鋭く落ちるカーブのコンビネーションで三振の山を築く。長身で、しかも出所が見難いフォームから140キロ台の速球を投げる素材は中々いない。各球団が外れ1位候補としてリストアップしており、当日はどの球団が交渉権を手にするか楽しみな逸材だ。
笠原 大芽は巨人の笠原将生の実弟。笠原は金 廣鉉(SKワイバーンズ)を思い出させるような躍動感溢れるフォームから140キロ台のストレート、曲がりの大きいカーブで勝負する本格派左腕。独特のフォームメカニズムで、球団の指導力によって大きく変わっていく投手だろう。上手く嵌れば奪三振率が高い左腕に変貌を遂げそうだ。
1年目ではなく、長期的展望で活躍出来る高卒投手を見極めろ!
最近は釜田 佳直、武田翔太の活躍に続き、歳内 宏明、西川 健太郎、戸田 隆矢が一軍登板を経験しているが、NPBも高卒でも期待の若手投手は優先して使う傾向があるように思える。
ただ1年目から一軍で活躍出来る高卒投手は例外と捉えるべきで、基本的には3、4年寝かせて、一軍で活躍出来る素材・土台を持った投手を見極めて指名するべきである。今回はタイプ別に選手を分けていく。

相内誠(千葉国際)
素材の良い本格派右腕
二階堂 誠治(女満別)…北海道唯一のプロ志望届提出選手。ダイナミックなフォームから投じる手元でぐっと伸びるストレートが素晴らしい。
相内 誠(千葉国際) しなやかな腕の振りから球質の良い直球、キレのあるフォークで勝負する本格派右腕。
金井 貴之(都立片倉) 都立に現れた快腕。上半身の筋力の強さを活かしたフォームから常時140キロ台。目指すは沢村拓一(巨人)
大高 光(日大鶴ヶ丘) 188センチの長身から振り下ろす角度ある直球が武器。将来性高い本格派右腕。
黒木 優太(橘学苑) 俺の投球を見てみろといわんばかりに力強い腕の振りから140キロ台の速球、キレのあるスライダー、フォークを武器にする。
椎名 潤(橘学苑) スピードでは黒木に及ばないが、素質は黒木以上。縦回転のオーバーハンドから投じる角度ある直球、カーブに高い将来性を感じる。
辻 空(岐阜城北) 最速144キロを誇る本格派右腕。東海地区屈指の好投手。
福田 真也(此花学院)…最速140キロ後半の速球を投げる右腕。投球術、細かな技術に課題を抱え、素材型右腕。
藤川 将(大手前高松) 荒削りながら最速147キロを計測する本格派右腕。
楊 家偉(福岡第一) 191センチの長身右腕。完成度はまだ低いが、じっくりと開花すれば楽しみな投手。
ここに上げた投手たちは当然ながら1年目から一軍は難しいが、じっくりと育てていって3,4年目で台頭が期待できるタイプ。彼らは即プロよりも大学経由からでも遅くはない投手。NPB側が4年間腰を据えて育てますよという気概を持って指名してほしい。

青山大紀(智弁学園)
高い野手センスを兼ね備えた右投手
青山 大紀(智弁学園)…投手としてよりも、広角に打ち分ける打撃、ベースランニング、フィールディングの巧さを評価されており、野手として手を上げる可能性あり。
鈴木 誠也(二松学舎大付)…身体能力の高さならば全国屈指。昨冬のロサンゼルス遠征で3本塁打。将来のスラッガー候補。
福山 純平(東大阪大柏原)…野球センス抜群な好投手。140キロ前後の速球、キレのある変化球を制球良く投げる。
田川 賢吾(高知中央)…この夏最速148キロを計測した本格派右腕。打者としても高い評価を受けている。
彼らはただ投手として素材が素晴らしいだけではなく、野手能力も高く、打者として潰しが効く。打者としての適性がある投手の方が指名しやすい。現代の野球は投手有利な時代になり、高校生投手の能力は格段に上がった。
それに反比例して、野手としての有能な素材は少なくなった。投手は9ポジションの中で最も野球センス、筋力、体力に優れ、ファームで漬け込んで3,4年目でブレイクと見据えている場合が多い。特に鈴木は右打ちの強打者候補生としてかなり期待が高い選手ではないだろうか。
左腕投手
佐藤 勇(光南)…140キロ前後の速球、右打者の膝に当たりそうになるスライダー、フォークを武器にする本格派左腕。
大塚 尚仁(九州学院)…U-18世界選手権では左のリリーフとして活躍。今年の高校生左腕では最も計算が立つ投手。
個人的には大塚はかなり面白い投手で、高校生左腕でリリーフが計算が立ち易いのは稀だが、まだ体格的には華奢なので、指名した球団はじっくりと体力強化を行い、1年間活躍出来る土台作りを行ってほしい。
(文=編集部 河嶋 宗一)