八重山vs日本ウェルネス
八重山執念の同点劇、そして逆転勝ち
好投し、同点劇を引き出した八重山・砂川羅杏
「ウチも踏ん張ったのだけど、八重山さんの執念が見事でしたね。」敗れた日本ウェルネス沖縄五十嵐康朗監督は、勝者を褒め称えた。
「苦しかったけど、我慢して投げていれば必ず追いついてくれると信じて投げました。」と語った八重山のエース砂川羅杏。32年振りの決勝へ。そして悲願の初優勝へ。八重山の執念が見せた驚きと感動の逆転勝ちだった。
準々決勝で10対0という大差をつけるほどの横綱相撲を見せる沖縄日本ウェルネス沖縄。気が付けば春のベスト4の中で、唯一残ったのが沖縄日本ウェルネス沖縄だ。その力強い野球は、この日も健在だった。
1回裏、二つの四球と犠打で二死一・二塁として5番前泊奏汰(まえどまり・かなた)がセンター前へ放ち先制。この主将の檄がナインに伝導していく。春の大会リーディングヒッターの宮城塁が上手く合わせてレフト前へ運び1点追加。このプレッシャーに、八重山先発の大城和哉が耐えられない。二者連続に四球を与えてしまう。
見かねた八重山ベンチはエース砂川羅杏(らいあん)をマウンドへ送った。「苦しい場面でしたが、なんとか抑えようと。」二死から5打者が連続出塁する沖縄日本ウェルネス沖縄の猛攻。さすがのエースも満塁での登板はキツかった。比屋根柊斗(ひやね・しゅうと)に押し出し四球を与え4点目を献上。打席には興南戦で本塁打を放っている川平真也。もし一打を浴びれば、コールドゲームともなりかねない難しい場面だったが、砂川羅杏のボールが少しだけ勝った。高々と上がったものの、川平の打球はセンターのグラブに収まった。
沖縄日本ウェルネス沖縄の攻撃は続く。2回、一死一塁から4番コンズ七斗、前泊奏汰の連打で追加点。5対0とリードを広げた。
8回、日本ウェルネス沖縄に突如訪れた暗雲
追う八重山も4回、1番宮良忠利(みやら・ただとし)のタイムリーで1点を返すものの、日本ウェルネス沖縄先発の比屋根柊斗の前に5回、6回、7回と二塁を踏むことが出来ない。すると7回裏、日本ウェルネス沖縄は主砲コンズ七斗がフルスイング。逆風の中、グングン伸びた打球は左中間の一番深い外野のフェンスを越え、芝生の上を跳ねた。風が無ければ130〜140m級のホームランだったかも知れない。このダメ押しに見えた一打で、球場スタンドにいたマスコミの誰もが、日本ウェルネス沖縄の勝利を描いていただろう。
しかし。野球は最後まで分からない。
8回、6番亀川優がヒットで出塁。一死後砂川羅杏の安打と次打者の四球で満塁とチャンスを得た八重山。ここで日本ウェルネス沖縄ベンチは、比屋根柊斗を諦め東恩納音をマウンドへ送る。1番宮良忠利の2球目に牽制ボークで1点を返した八重山。東恩納音も宮良忠利を打ち取り二死と粘るが、2番内間敬太郎が主将の意地でレフト前へ。二者が生還し3点をボードに刻んだ八重山。流れを一気に引き寄せると9回にも2点を返し何と同点に追い付いた。
32年振りの決勝へ
タイブレークの延長10回。八重山は無死一・二塁から犠打で送る。二死となるが5番伊志嶺拓磨が三塁手を襲う強烈な打球。記録はエラーとなるが、三塁手を責められない当たりが八重山の執念を感じさせる。二者が生還してこの試合初のリードを奪うとその裏、砂川羅杏が日本ウェルネス沖縄玉城のタイムリー1本に抑えて勝利。
32年前に準優勝したとき以来となる決勝進出を果たしたのだった。
(文=當山雅通)