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【春季東京都大会総括】序盤から番狂わせ、激戦続きだった春の東京都大会を振り返る

2016.04.28

 関東一の優勝で幕が閉じた春季東京大会。今大会の特徴、活躍が光ったチームを振り返っていきたい。

都立城東、東亜学園などの健闘が光る

関根 智輝(都立城東)

 春季都大会は秋に続き関東一の優勝、二松学舎大付の準優勝で終わった。しかし秋は、この2校が他校を大きく引き離し、準々決勝、準決勝の6試合中5試合がコールドゲームであったが、今回は、準々決勝以降のコールドゲームはなかった。しかも今回は、準々決勝の3試合が、延長戦もしくは9回降雨引き分け再試合で、残り1試合も逆転の好試合だった。

 昨年の春季都大会の準々決勝は3試合がコールドゲームであったことを考えれば、今年は好試合が多く、中身が充実した大会であったといえる。大会を面白くした立役者は、都立城東東亜学園東海大菅生、東京八王子、岩倉などである。都立城東関根智輝は、秋とは別人のように成長し、創価関東一戦などで好投しただけでなく、本塁打も4本放った。東亜学園は、秋は4、5番手であった田原 芳紀がエースに成長。左の鈴木 裕太や長身の青木 大河ら好投手が多く、投手王国復活の兆しをみせる。

 東海大菅生は投打の中心である伊藤壮汰頼みのチームから、深澤祐太が4番に定着するなど、攻撃に厚みが出てきた。1次予選から勝ち上がった八王子は、際だった選手はいないものの、打線は上位下位切れ目がなく、打たせて取るタイプの早乙女大輝の好投が光った。岩倉は、1番伊勢 海星を中心とした打線に迫力があった。

名門校の明暗

大江 竜聖(二松学舎大附)

 

 そうした中で準優勝した二松学舎大付は、3回戦準決勝に登板した大江竜聖関連記事は本調子ではなかったが打線が奮起し、逆に4回戦準々決勝では打線が湿ったが、2年生の市川睦が好投した。しかし関東一との決勝戦で5失策をしては、勝ち目がなかった。センバツで、東邦藤嶋健人関連記事に手も足も出なかった関東一は、徹底して打撃の強化に取り組み、4番佐藤佑亮を中心に、上位下位の区別がない、長打力に足を兼ね備えた打線になった。投手陣も、エース・関東一河合海斗の出来は今一つであったが、左の佐藤奬真に、伸び盛りの高橋晴など多彩で、相手チームからすると、ターゲットを絞りにくいチーである。

 一方早稲田実清宮幸太郎関連記事は一段とグレードアップし、ただの怪物ではなく、桁外れの怪物になっている。やはり昨夏の甲子園で活躍した主将の金子銀佑の打撃のうまさは相変わらずだ。しかし、この2人以外の選手が活躍しないことには、勝ち進むのは厳しい。

 帝京は中軸の岡崎心を負傷で欠きながらも、打撃には迫力があった。しかし投手陣の起用法は、最後まで定まらなかった。日大三関東一との試合で、集中力を欠いたプレーで傷口を広げるなど、伝統校らしからぬプレーで敗退した。修徳国士舘は、選手個々に力はあるものの、一度崩れると脆さを露呈した。

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[page_break:都立勢の健闘]

都立勢の健闘

田舎 凌(都立昭和)

 

 8強に残ったのは都立城東だけだったが、大会を盛り上げた要素に、都立勢の健闘がある。大会最大の番狂わせは、都立昭和早稲田実破った試合だろう。身長165センチの田舎 凌投手が、緩い球を駆使して早稲田実打線を抑えるさまは、まさに柔よく剛を制すである。

 元祖都立の星である都立東大和は、帝京をあと一歩のところまで追い詰め試合レポート、都立の強豪として定着した都立日野は、二松学舎大付相手に善戦した。都立江戸川は、早大学院桜美林を破り、2年連続で夏のシード校になった。都大会初出場の東京日本ウェルネスが4回戦まで進み、夏のシード校になったことも、この大会のサプライズの一つであった。

 その一方で、秋4強東海大高輪台8強佼成学園は初戦で大敗。早大学院柴田迅都立小山台矢崎裕希明大中野川西雄大立教池袋小幡圭輔とった好投手も、本領を発揮することなく敗れた。実戦から遠ざかっている春先に、コンディションを合わせるのは難しい。春季大会で納得のいくプレーができなかった選手も、夏には本来の力を出してほしい。

 春季都大会が終わり、夏のシード校が決まった。東東京は、関東一と二松学舎大付がリードしているものの、全体的にレベルが高く、昨年準優勝日大豊山や、伝統校の堀越など、ノーシードにも実力のある学校がいる。

 一方西東京は、早稲田実日大鶴ヶ丘国士舘佼成学園など、強豪校が相次いでノーシードになり、東海大菅生が第1シードでややリードしているとはいえ、本命不在の大混戦の様相を呈している。

 昨年の春季大会の準々決勝で18対11の7回コールドという大乱戦をした関東一早稲田実は、夏には見事にチームを立て直し、甲子園ではともに準決勝に進んだ。夏の大会まで2カ月余りしかないが、日常の小さな積み重ねが、大きな変化につながる。春季大会の自信と反省を生かして、夏に臨んでほしい。

(文・大島 裕史


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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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