2010年08月15日 阪神甲子園球場 

興南(沖縄)vs明徳義塾(高知)

2010年夏の大会 第92回全国高校野球選手権大会 2回戦


四国地区に突きつけられた大きな課題

岩元俊樹(明徳義塾)

歴然だった興南との実力差

<当然下馬評は興南有利が圧倒的であろうが、選手たちも「甲子園初戦」の堅さが取れたことで今度は試合序盤から練習の成果を発揮できるに違いないはず>

前回、明徳義塾本庄一に勝利した1回戦コラムの最後で筆者はこのような締めの言葉を書いたが、この試合における彼らと興南との実力差は練習の成果を発揮すれば埋められるような小さなものではなかった。

もっとも明徳義塾が何もしなかった、できなかったわけではない。「島袋対策はない。仕掛けたいがなかなかうまくはいかない」と馬淵史郎監督は試合前日に語っていたが、2回には先頭打者としてヒットで出た4番の北川 倫太郎(2年)に続き、先田弦貴(2年)がバスターエンドランを見事初球で決めてチャンスを拡大。
7番・杉原賢吾(1年)のタイムリーにつなげると、3回にも3番のシング・アンドリューがヒットエンドランを成功。さらに5回には北川、先田の連続2塁打で1点を返すなど、「ヒットエンドランをかけて決まる投手ではない」と表向きでは指揮官が三味線を弾く一方で、

通常より3mほどバッティングマシンの距離を近づけて十分打ち込みをおこなってきた成果を大舞台で披露するあたりは「さすが」と思わせるものがあった。

ただし「興南は勝ち方を知っている」と名将・馬淵監督も兜を脱いだように、相手の試合巧者ぶりは明徳義塾をはるかに上回っていた。
初回、「1点失った後の初球の入り方を間違った」(先発の前田 克樹(3年))を見逃さずタイムリーにした銘苅圭介(3年)。4回、「2ボールになったのでストライクを取りにいって打たれた」(杉原)伊禮伸也(3年)のホームラン。その裏、「いつもより1mファーストランナーをリードさせて、ストレートを投げる確率を増やした上で、『1・2・3でストレートを狙え』と指示した」(馬淵監督)代打・座覇政也(3年)を、魂を込めた143キロの高め直球で仕留めた島袋洋奨(3年)。

極めつけは9回、前の回に中継プレーミスを犯したレフト北川の捕球態勢が通常とは逆回りと見るや、躊躇なく2塁からホームへ還ってきた慶田城開(3年)。北川は「守備のミスで負けた。あのミスがなかったら2失点はなかった」と唇を噛んだが、それも全て後の祭りであった。



一致団結し、強い四国野球「新生」を

このように歴戦の知将・馬淵史郎が率い、かつ豊富な練習量で知られ、一昨年春には2勝をあげている明徳義塾ですら全く興南相手に通用しないまま、2回戦で全て甲子園を去ることになった四国勢。
直近3年間で春夏通じても、明徳義塾の他に一昨年夏の鳴門工(徳島)、昨春の今治西(愛媛)、昨夏の高知(高知)、西条(愛媛)が各1勝ずつをマークしたのみ、通算7勝20敗(春3勝8敗・夏4勝12敗)と明らかな低迷線を示すデータ以上に、全国トップとの大きな隔たりを改めて示した明徳義塾の完敗は、四国地区の高校野球関係者にとって極めて重く、ショッキングな1敗である。

これに対し「そもそも人口が少ないから選手層も薄い」、「パワーが違う」、「明徳義塾にはほとんど地元出身選手がいない」などなど低迷期に至った要因は山ほど出てくるだろう。
しかし、ならば小中学生の時期から高校野球での活躍を見通した育成強化をこれまで以上に推進し、伝統的な練習とこれまでとは異なるトレーニングを組み合わせて質とパワーを高めることに努め、明徳義塾に勝てるチームを作ればいいこと。明徳義塾を越えなければ全国で頂点を極めるチーム作りなど夢のまた夢であることは、今大会の内容と結果を見れば明らかであろう。

筆者も日ごろの取材から四国各県の指導者の皆さんが苦労して人間性も含めた選手育成を図っているのは重々承知しているし、それには最大限の敬意を払いたい。
が、宇和島東が敗れた際にも記したように、四国地区における高校野球の位置づけは単なるスポーツの枠を超えた伝統文化。この呪縛から絶対に逃げられない以上、全国で通じるチームを作り続けることは四国地区の高校野球界における宿命なのだ。

もうこれ以上四国勢が甲子園で負けの歴史を無為に重ねるのは沢山だ。我々もかつての「野球王国」の栄光にすがり、地域ハンデを隠れ蓑にして現状を誤魔化すのは辞めにして、まずはこの突きつけられた大きな課題を受け入れ、たとえ長く苦しい道であっても一致団結して強い四国野球「新生」を目指してしていこうではないか。



(文=寺下 友徳)
(写真=img01~10宮坂 由香
(撮影img11~14=鈴木 崇


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