2010年08月12日 阪神甲子園球場 

履正社(大阪)vs天理(奈良)

2010年夏の大会 第92回全国高校野球選手権大会 2回戦


平良寛太(履正社)

競争力の差

 完勝といっていい。完敗といっていい。

 近畿勢同士の対決となった履正社天理。まさに、そんな試合だった。

 この試合を二つの側面から見ていた。

ひとつめ。県大会を猛打で勝ち上がって来た天理の力は本物なのか。数字が示すとおりの強さを全国大会で見せることができるのかどうか。

ふたつめ。履正社は本当に″試合巧者″なのか。

相反するチーム同士がカチ合えば、その答えが出てくるはずだ。この試合にはそんな側面があったのだ。

結果、4-1で履正社が勝った。そのスコアが示すように、後者が正解だった。

だが、実は、4点取った履正社は、適時打でもぎ取ったのはたったの1点しかない。天理も1点。安打数で履正社が上回ったのは確かだが、両者の間にあった力の差はそう大きいものではなかった。それでも、履正社の完勝といえる試合だった。

 両者を分けたものは何か。 簡単に言えば、履正社は試合に勝つ術を知っていたということだ。試合の勝ちパターンをいくつも持っていた。一方、天理は一つしかなかった。打って勝つ方法しかなかったのだ。ましてや、県大会で大車輪の活躍を見せたエースの沼田が胸に打球を受けて本調子から程遠い様子では、勝ち方を模索するのが苦しい。

履正社天理・沼田を研究していた。「変化球は外に行くことが多い」と、それを狙い打った。3点目のホームを踏んだ主将の江原は言う。

「変化球を狙いに行きました。甘いところに来るのは変化球で外が多かったですから。みんながそれぞれ意識してバッターボークスに立っていたと思います」

履正社の打者は、ただ、沼田と対戦していたわけではなかったのだ。「全員で攻撃するのが僕たちの野球なので」と江原は胸を張る。

適時打で点を取った以外の得点シーンにしても、2点目は海部が外の高めを外野フライにした。3点目も同じく犠飛で、4点目は偽装盗塁だ。1、3塁から一塁走者が挟まれ、三塁走者が突っ込む見事な走塁だった。

天理にもチャンスがなかったわけではない。6回には1死・2、3塁。7回には1死・三塁の好機を作っていた。しかも、その時、履正社は前進守備だった。いわば、内野ゴロさえ打てば、1点と言う状況だったのである。

 しかし、6回には内野が、7回には、坂倉が三振に倒れた。

天理・森川監督は「あそこで1点でも取って終盤を迎えるのとではだいぶ違った。ゴロを打てばいいというのは選手も分かっていたでしょうけど、点が取れない焦りがあったのかもしれません」と、唇をかんだ。

点が取れる最善の方法を実行したのが履正社で、それができなかったのが天理だったのだ。

とはいえ、なぜ、両者にそこまでの差があったのだろう。

そこはやはり、奈良と大阪の違いと言わざるを得ない。

奈良大会には、沼田をそこまで研究してくるチームはなかった。「打倒天理」、「対沼田」を掲げるチームはあっても、具体的に、どのように沼田を打つかを実践してきたチームはなかった。正面から天理とぶつかり無残に散ったチームばかりだったのだ。天理が県大会、一度もリードを許したことがなかったのが、何よりのいい証拠だ。

一方で、履正社は府大会8試合を戦った。格下もいたのだが、多くの試合を経験する中で、必要なプレーと不必要なプレーの取捨選択ができていた。どうやって得点を取るのか、どこで点を防ぐのかの、パターンをいくつも持っていて、常に冷静だった。180校も超える学校がある中で、そこで勝ち抜いていくための戦い方を知っていたのだ。要するに、大阪で揉まれていたのだ。

 予選大会中に、競争力がどれだけあったか、それが大きな差だった。

 奈良と大阪の高校野球のレベルを比較することはできない。だから、今回の結果だけで奈良のレベルが低くて、大阪が高いとは言い切れない。ただ……、競争力には大きな違いがあった。

大阪で揉まれた履正社―――。

やはり、試合巧者だった。

(文=氏原 英明


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応援メッセージ (2)

ホームスチールを許すなんて、、奈良太郎 2010.08.15
昔天理もスクイズ2といって
確か甲子園でも決めたトリックプレーがありました
しかし
ホームスチールを許すなんて、、
2流も良いところです。
挟殺プレー山 2010.08.14
一塁ランナーがわざと飛び出している間に3塁ランナーがホームを陥れるプレーは、履正社の岡田監督の恩師である東洋大姫路の梅谷監督が得意としていたトリックプレーですね。甲子園でも二十数年前に一度決めたことがあったのではないでしょうか。

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