竹内 諒選手 (松阪)
寸評
今年の東海地区屈指左腕として注目を浴びていた左腕。最速148キロ。球場が出やすい津球場とはいえ、その速球の勢い、威力は本物という噂であった。その噂を聞きつけ、私は松阪まで足を運んだが、本来の出来ではなかった。甲子園に出場したが、やはり生で観た時の内容と変わりなかった。 (投球内容) 左スリークォーターから投じるストレートは常時135キロ前後で最速138キロ。左腕ということを差し引いてもプロ注目左腕として物足りない。抜群のコントロールがあるかといえば、そうではない。不調に陥り、それを引きずっているような投球であった。 春では140キロ台のストレートをコンスタントに出していた時と比べるとフォームのメカニズムに狂いが生じていたのだろう。どこに狂いを生じていたかは分からない。 変化球は90キロ前後のカーブ、110キロ前後のスライダー、110キロ前後のチェンジアップ。変化量が大きく、空振りを奪うことができており、球速が出なくても、安定したピッチングができていたのは、ストレートのスピードに頼らず、曲がりの大きいスライダーを軸に投球を組み立て、130キロ台でも両サイドへ投げ分けることが出来ているので、痛打を許さなかったのではないだろうか。不調ながらもピッチングを組み立てられるのは強みではある。 クイックは1.1秒台と素早く、牽制も鋭い。ただフィールディングの動きをみると、まだもっさりとしていて、特にベースカバーはフィールディングが上手い投手と比べると緩慢なところが見られる。 (投球フォーム) ワインドアップから始動し、右足を高々と上げていき、左足の膝を曲げて真っすぐ立つことが出来ている。一塁方向へ足を伸ばしていきながら、インステップ気味に踏み込む。沈み込みが小さく、ステップ幅が狭く、軸足も折り曲げをせず、推進していくため、下半身でため込んで、パワーを捻出するフォームではない。そのため上半身の筋力の強さに頼ったフォームになる。ただ彼は上半身で勝負出来るほどのパワーはなく、アンバランスさが否めない。 テークバックは内回りの回旋をしていき、しっかりと肘を上げることができている。開きは抑えられたフォームなので、出所は見難い投手であろう。気になったのは上半身の回旋が140キロ台の速球を投げる投手と比べて、遅い。そのため腕の振りが鈍く感じる。 前足に体重が乗らず、軸足の蹴り上げが出来ていないので、いわゆる「手投げ」の状態になってしまい、ストレートが走ってこない。調子云々ではなく、この課題を解消しないと活きたストレートを投げるのは難しそうだ。一番の問題は腕が振れていないこと。腕が振れていないのは上半身の回旋が140キロ台の速球を投げる左腕と比べると遅く、物足りなさを感じる。
更新日時:2012.08.21
将来の可能性
140キロの速球を投げられていた左腕が、130キロ前半しか投げられていないのは故障か、フォームのメカニズムが狂っているかの二択になるが、投球内容を見ると、フォームのメカニズムが狂っていたと考えられる。こういうメカニズムが狂っている投手は、レベルの高い環境に身を置くのはリスクがあり、よほど育成力のある球団ではなければ厳しいであろう。確かな実績・地力をつけてからプロ入りするのも遅くはない。次のステージでは自分のフォームを取り戻し、唸らせるようなピッチングを期待している。
更新日時:2012.08.21
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