肩がゆるいと感じたら
競技歴が長い、インナーとアウターのバランスが崩れているといったことでも肩のゆるみを感じることがある
野球選手の中には「肩がゆるい」「肩が抜けそうな感じがする」という悩みを持っている選手も少なくないでしょう。特に小さいときから野球をしている競技歴の長い選手であれば、投球動作の繰り返しによって肩関節の安定性に少しずつ変化が生じているということも考えられます。
肩関節は他の関節に比べて多方面にわたってスムーズに動かせる特徴を持ち、関節可動域の広い関節ですが、その分関節そのものの持つ固定力は他の関節に比べて弱いともいえます。肩の安定性を高めるためには腱板(いわゆるインナーマッスル)や関節唇といった軟部組織がありますが、これらがダイビングキャッチなどの大きな衝撃によって軟部組織が傷んだり、繰り返し行われる投球動作などによって関節の支持能力が低下してしまうと、肩のゆるみに加え、不安感や痛み、だるさ、何となく気持ち悪いといった不快感などを覚えるようになります。こうした状態はルーズショルダーと呼ばれています。
プレーに支障を及ぼすような状態であればなるべく早く医療機関を受診し、適切な治療・指導を受けるようにしましょう。関節周辺部の組織、特にインナーマッスルを鍛えて関節の支持能力を高めることは、ルーズショルダーの状態を改善させる効果が期待できます(参考ページ:正しくインナーマッスルを鍛える)。またインナーマッスルの機能が低下した状態で、アウターマッスルと呼ばれる大胸筋や広背筋、三角筋など大きな筋肉群を過度に鍛えてしまうと、さらに肩関節に大きな負担がかかってルーズショルダーの症状が進行してしまうことがあります。
体の外側にある大きな筋肉群をトレーニングするときには、適切な負荷、適切なエクササイズを選択することはもちろん、インナーマッスルを十分に鍛えて機能を回復させるようにしましょう。
中には脱臼経験があり、何度も繰り返している選手がいるかもしれません。脱臼は初回であれば手術をせずに固定と適切なリハビリテーションで改善することが見込めますが、何度も繰り返しているものについては、骨の位置が元に戻っても肩の軟部組織が正常に機能していないことが考えられます(関節唇やインナーマッスルの損傷など)。このようなケースはそのまま放置しておくとふとした動作で再脱臼するということを繰り返しやすくなります。何度も繰り返し脱臼をするときは、関節周辺部の組織を手術によって改善させることが必要となってくるでしょう。
文:西村 典子
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