降雨コールドを正しく理解している?ルールを知ると野球がもっと楽しくなる!
『タイブレークでも引き分けはあり得る』。そう実感した試合がありました。
一昨日(27日)に行われた社会人野球のJABA京都大会です。まずはこちらのランニングスコアをご覧ください。
試合は10回からタイブレーク方式。そのため、延長戦は無制限です。しかし11回裏にパナソニックが2点を返して追いついたところで、雨(夕立)の影響でグラウンドコンディションが悪くなり、約1時間中断した後に降雨コールドゲームとなりました。
この試合は予選リーグだったため、引き分けによる再試合はありませんが、準決勝以降の決勝トーナメントならば引き分け再試合となっているケースです。あらためて、タイブレークは100%決着がつくとは限らない。こういったケースもあり得ると実感しました。
トーナメントの高校野球でも、もちろん引き分け再試合になります。そのことは高校野球特別規則にも、≪タイブレーク開始後、降雨等でやむなく試合続行が不可能になった場合は 引き分けとし、翌日以降に改めて再試合を行う。≫と書かれています。
この試合は11回表に三菱自動車岡崎が2点を勝ち越した後、裏にパナソニックが2点を取って追いつき、なお0アウト一、三塁とサヨナラのチャンスでコールドとなりました。攻めるパナソニックにとっては残念な雨になったことでしょう。
ここであることに気づく方はさすがです!!
実はパナソニックが追いつく前(1対3か2対3)に降雨コールドになっていても引き分けだったんです。それは10回までのスコアで1対1というのが優先され、11回表が成立していないからというのが理由です。
2018年公認野球規則の(9)ページ【正式試合】の4にこう書かれています。※赤字はわかりやすいように付け足しています。
上記の下線部を見てください。
つまり2対3までなら10回までのスコアとなり、3対3の同点になった場合にはじめて11回表の2点が有効になって最終スコアは3対3となるわけです。今回のケースは延長ですので、ホームチームというべき後攻が勝ち越せばサヨナラゲームとなります。
どちらにしても今回は引き分けだったわけですが、11回のスコアが有効になることで個人成績が変わってくるのが大きな違いです。タイブレークでしたので、投手の自責点(防御率)はあまり影響がないですが、例えば11回表に打点を挙げた選手は3対3になった時点でその打点が有効になります。
社会人野球は個人賞(記録面では首位打者賞など)がありますので、個人記録も大事になってきます。
高校野球関係者や、ファンの間で記憶に新しいのは2016年夏の沖縄大会の小禄vs浦添商の試合でしょうか。
1点を追う浦添商が8回表に2点を取って逆転しましたが、8回裏の小禄の攻撃中に無得点の状態で降雨コールドゲームになり、7回までのスコアが有効になってリードされていたはずの小禄が勝利しました。
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これは上記に【正式試合】の4の、≪ホームチーム(後攻)がその裏に得点しないうちにコールドゲームとなるか≫の部分が適用されたことになります。
つまり先攻チームは試合成立後に勝ち越したとしても、裏の守りをちゃんと終わらせないと表にとった得点が有効にならないのです。もちろん、抗議をしてもルールなので結果は変わりません。このルールをちゃんと熟知して、守備に就いてください。
野球のルールは難しいです。でも奥深さも感じられるはずです。野球を「する、見る」を感覚だけしないで、ルールを熟知して「する、見る」をやりましょう!
参考 公認野球規則7.01(g)(4)[注]の①②
(4) 7.02(a)によりサスペンデッドゲームにならない限り、コールドゲームは球審が打ち切りを命じたときに終了し、その勝敗はその際の両チームの総得点により決定する。
【注】我が国では、正式試合となった後のある回の途中で球審がコールドゲームを宣告したとき、次に該当する場合は、サスペンデッドゲームとしないで、両チームが完了した最終均等回の総得点でその試合の勝敗を決することとする。
①ビジティングチームがその回の表で得点してホームチームの得点と等しくなったが、表の攻撃が終わらないうち、または裏の攻撃が始まらないうち、あるいは裏の攻撃が始まってもホームチームが得点しないうちにコールドゲームが宣告された場合。
②ビジティングチームがその回の表でリードを奪う得点を記録したが、表の攻撃が終わらないうち、または裏の攻撃が始まらないうち、あるいは裏の攻撃が始まってもホームチームが同点またはリードを奪い返す得点を記録しないうちにコールドゲームが宣告された場合。
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(文:松倉雄太)